第6話 異世界と死
加冶屋のオヤジから、ケリティカ山にウェーガンの情報があるということを知った俺は、ララとその他の冒険者達と共に、ケリティカ山へ行く事になったのだ。
「それでは、私は酒場の仕事もあるので、残るとしよう。」
「ごめんね〜、また留守にしちゃって。」
「なーに、問題無いさ。
でも、気おつけて行ってくるんだよ。」
「解ってまーす!」
ララとマスターの微笑ましい会話が終わった後、マスターにひとまずの別れを告げ、俺達はケリティカ山へ出発した。
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出発する前日、俺はララの部屋に居た。そして、ベットに腰をかけているララに、ケリティカ山について詳しい事を聞いた。
「ケリティカ山っていうのはね、未開拓の場所が多いからまだ沢山の魔石が取れるんだよ。」
「未開拓の場所が多いって事は、まだ未発見の魔物とかもいるって事か?」
「そうそう。だから危険度も高いんだよねー。」
ララが危険と言う理由はそういう事か。しかし、あの狼を武器も使わず一蹴りで倒したララが苦戦する場面を想像できない。
ララがあの場面で本気を一切出していない事は明白だった。憶測だが、本気を出せば危険度Aが相手でも勝てるのではないか?
「ちなみに、ケリティカ山の危険度はどれ位何だ。」
「今判明してるだけでもB以上は確実らしいよ。」
「結構厳しいな。でも、俺達に着いてくる冒険者達は、みんなベテランなんだろ?」
「それでも、危険な物は危険だよ。どんなベテラン冒険者でも、死ぬ時は一瞬だし。」
陽気なララが暗い雰囲気になるのを見て、当たり前な事を理解した。ここは異世界だ。異世界に実際に居るという事は、決して楽しい事ばかり起きる訳ではないのだ。
魔物が日常のように存在し、それを倒す冒険者や騎士団が存在する。恐らく勇者も存在する。
RPGでは、最後に勇者が魔王を倒してハッピーエンドになるだろう。しかし、もしもそれが現実となった場合、ゲームの様にはいかない。実際、幾ら倒してもキリがない魔物達と戦い続けて、死人がでない訳無いだろう。俺が元居た世界では想像も出来ない程、多くの人が死んでいるんだろう。
そんな事を今、初めて理解した。
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そんな事が昨日あった訳だ。
まだ異世界に来て数日しか経っていないが、この世界が危険な物である事が、少しだけ理解した気がする。
「足手まといにはならないようにするよ。」
「へ?」
俺が邪魔になって誰かが死んだら、俺は自分の事を恨むと思う。自分の所為で人が死ぬんだ。何も思わない訳ないだろ。
もしもこのメンバーでも危険な魔物が出てきた場合、俺は直ぐに隠れる事を最優先にすべきだ。戦闘の邪魔はしない。そう決心した。
ケリティカ山への道のりは、半分を切った所で、陽が落ちてきた。陽が落ちた状態で進むのは危険らしく、今日はここでテントを張る事になった。
「よぉし!今日はここまでだ。飯食って寝て明日に備えるぞ!」
一緒に着いてきた男が、そう言った。数年前にはパーティーのリーダーをしていたらしい。
「んじゃ、メインは俺が作るわ。」
そう言ったのは、盗賊の冒険者だった。手先が器用らしく、戦闘よりも武器の手入れや、アイテム収集、料理などを得意としているらしい。
他にも、戦士が2人に、剣士が2人、銃士が1人、回復役が1人、魔術師2人と、安定したパーティーだった。
その後、食事を終えると。1時間置きに見張りを交代する順番、テントの中で寝る場所(いらない気がする)を決め、俺達は明日に備えテントに敷いた布団で寝た。