第18話
下半身を切り離され、瀕死の状態でありながら、ララが魔力を身体に戻した瞬間を見計らい、飛びかかって来た。
(ヤバ!!)
一度外に放出した魔力を自らの身体に戻す場合、再び時間がかかる。そのため、イキナリ飛びかかって来た敵には魔力の放出が間に合わない。
魔力が無いなら剣を出せばいいと思うかもしれないが、実はララの持つ武器は魔力を使いその場で作り出す物で、魔力が切れた時や、魔力の放出が間に合わない場合には、剣を作り出すことができない。
その剣を作り出すことができない状況が今である。
「ただでは死ねねえよ!!」
ララによって失った下半身が何故再生しないのか、そんな事はもう考えず、ただ単に死に物狂いで飛びかかってくる男。男の頭にはもう、『ララを殺す』ということしか無いのだ。
男は、自分の右腕の肘を後方に下げ、勢いつけた拳をララに向けて放つ。直撃すれば即死、反応しきれなかったララは避ける事もできない。
絶体絶命のこの状況で、ララは死を覚悟するしかない。
その時だった。ララに向かって死に物狂いで飛びかかって来た男の胴体に、どこからか数本のナイフが投げられ、男の身体に突き刺さる。そのナイフは、突き刺さったタイミングと0.1秒のズレも無く、爆発を起こす。
「グハッ!!
その爆発により、男はララに触れる寸前で横に吹き飛ばされ、ララが攻撃を受けることは無かった。
「この爆発は・・・」
疑問に思ったララが、ナイフが飛んできた方向へと目をやると、そこに居たのは見覚えのある人物だった。
「無事か、ララちゃん⁉︎」
「間一髪だったな」
リーダーとジャラックだった。2人は、ララが無事なことを確認すると、安心したような雰囲気を醸し出していた。まるで、先程ララに降りかかっていた危機が、自分達に降りかかっていたようだ。
「しっかし、コイツの切り傷って、ララちゃんがやっちまったのか?」
「へ・・・そうだけど・・・」
「マジかよ、流石は《螺旋の騎士》だな」
「え⁉︎」
リーダーの言葉、ララの事を《螺旋の騎士》と言ったことに、ララは戸惑いを隠しきれず、口から声が溢れた。
「私が《螺旋の騎士》だって知ってたの⁉︎」
「当然だろ。知らないのか?」
「ララちゃんの居るあのギルド、《螺旋の騎士》が居るギルドとして有名だぜ」
「初耳だよ‼︎」
ララの質問に対して、リーダーとジャラックが答えた。どうやらララは、自分が《螺旋の騎士》の1人であることが知られていることを知らなかったようだ。
「俺とジャラックを含めて全員がそのことしってるよ。
ウェーガンは知らなかったっぽいけど・・・。でもララちゃんは俺達が正体知ってるって知らなかったようだから、ララちゃんが自分を残して他の奴ら探してこいって言った時も、俺達に自分の正体バラさないためなんだろって思ってな。だから、普通ならこんな所に女の子1人残さないところを、ララちゃんの心情察して先に行ったって訳だ」
「俺は乗り気じゃなかったけどな」
ララの心にある悩みの雲を払うかの様に、丁寧に説明をするリーダー。そして、それに付け加えるジャラック。
「ありゃりゃ〜、バレてたのかあ〜。バレないようにしていたのが馬鹿みたいだよ」
「まあまあ、とてつもない実力を隠したいってのはわかるから、良いんじゃないの?
実際、こんな化け物倒した訳だし」
リーダーは、先程の爆発で身体の一部が焦げ、ピクリとも動かなくなった地獄族の男を見ながら、ララを評価する。
男の身体は一切再生しておらず、爆発によってできた
燃焼傷が生々しく残っていて、男の目からは生気が消えていた。
「もう再生してないし、やっと倒せたんだね」
「ああ、これもララちゃんが頑張ってくれたおかげだな」
「そう言えば、他の人達は見つかった?」
「「・・・」」
リーダーとジャラックの2人が黙った。そして、ララは察した。そして誰とも会うことができなかったのだと思った。
「知っての通り、ジャラックは盗賊の職業だ。だから、索敵のスキルが人一倍高い。しかし、それで幾ら捜しても、人はほとんど見つからなかった。
「恐らく死んだか、索敵の届かない所に居るんだろう」
2人の説明によって、他のメンバーが生きてる可能性がとても低いことを理解した。しかしララは、2人の説明を理解する前に、ある言葉が引っかかった。
「ほとんど・・・誰か見つかったってこと?」
「・・・まあな。後ろに居るだろう」
リーダーはそう言って、親指を立てて自分の背後を指す。そこに立っていたのは、雪の様に白い髪をして、それを隠す様にフードを被った少女と、その少女に抱き抱えられているマスコットの様なニワトリだった。
リリィとウェーガンである。
「あ!ニワトリ君・・・と、どちら様?」
「この子は、そこに倒れている地獄族の奴に追われていたリリィちゃんだ。洞窟の小部屋に隠れていたところを、ウェーガンと出会ったらしい」
「あれ、この人が地獄族だって知ってたの?」
「それもこの子から聞いた。ついでに、地獄族が『獄化』という名の魔法を使うこともな」
リーダーとジャラック、そしてウェーガンはララの元へ向かっている道中、リリィから地獄族のことについて色々と教えてもらっていた。そのため、すぐに再生する男のことも理解していた。
「あの再生能力は異常だと思ったが、地獄族なら説明がつくし、とりあえず信じている」
「へぇ〜。ん?何でその子は追われてたの?」
「それが俺達も教えてもらってないんだよ。事情とかがあるのかもしれないが」
この場において、ウェーガン以外はリリィをわずかながら不審に思っていた。ウェーガンは、黒服に言われた新しい仲間をリリィだと思っているため、疑問はあっても不審は無かった。
「まあ、この話しはひとまず終わりにしようぜ。
例の場所、行くんだろ?」
「ああ。ここまで来て他の奴らの死を無駄にはしたくないしな」
「へ?まだどこかに行くの?」
リーダーとジャラックの会話に、ララは自分の持った疑問を投げかける。
「この先、この洞窟には地獄族の奴が居たことで魔物が居ない。そのため、このまま奥に行く!」
リーダーの言葉に、ララは反対しなかった。何故なら、リーダーと同じ考えだったからだ。ここまで来て撤退すれば仲間の命を無駄にするのではないか、そう思っていた。
こうして彼らは、敵の居ない洞窟を進んで行った。




