#3『登校前の出来事』
朝食を食べていた午前6時48分。
「……あ、のんさんおはよー……」
眠そうな声でリンリンがそう言った。
私とリンリンは一緒に暮らしている。
理由は……まぁ、いつか話すとして……
「リンリン、早くしないと遅刻するよ?」
「うぅ……なんで朝ってこんなにも辛いんだろ……ずっと夜みたいに気分がスッキリしてたらいいのに……」
「無駄口叩いてる暇があったら、早くしようよ……ん?」
私は、今テレビで流れている“ニュース”に目が釘付けになった。
「どうかしたの?」
「……“また”『赤月赤目』の被害者が出たんだって。えっと……今回は[フリーターの男性(26歳)]で、“ストーカーの前科”があるんだってさ。」
『赤月赤目』とは、私達の住んでいる街にあるいわゆる都市伝説だ。
えっと……内容は確か……
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月の出る晩、ある男が夜道を歩いていると、前方から髪の長い女が歩いてくる。
男はそのまま通り過ぎようとした。
だが、すれ違いざまに女が何かを呟いたような気がして、男は立ち止まり、振り返って“しまった”。
すっ…………と、男の顔から血の気が引いていった。
それもそのはず。
なぜなら、目の前に真っ赤な目をした女の顔が迫っていたからである。
その手には包丁が握られていて、今にも振り下ろされそうだった。
……1つ、男には解らないことがあった。
それは、なぜ女が“涙を流しているのか”である。
だが、その答えを出すまでの時間はもう残ってはいなかった。
「…………ごめんなさい。」
女は懺悔のようにそう呟くとそのまま手にしていた包丁を振り下ろした。
翌朝、滅多刺しにされた男の遺体が見つかった。
……その日から“夜道を歩いているときに真っ赤な目をした女に出遭うと滅多刺しにされてしまう”という内容の噂が流れるようになった。
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……こんな感じだったはず。
でもまぁ、クラスメートから聞いた話だからあんまり信憑性がないけど。
「でもさぁ、『赤月赤目』の都市伝説と今この辺りで起きてる事件って被害者の遺体の状態が“全く同じ”なんでしょ?模倣犯……なんて可能性も0じゃないはずだよ……?」
と、私の心情を読み取ったリンリンがそう言った。
「……リンリンってさ、テストの点数は悪いくせに割と難しい言葉とか知ってるよね。」
「いくらなんでもそれはヒドすぎるよぉ〜……。」
「あはは……冗談だって。私だって本気で思ってるわけないじゃん。」
……実際は3%くらい本気で思ってたけどね。
などと考えていたが、リンリンは何も言わなかった。
「ほら、準備出来たんだから早く学校に行こうよ。今日は“転入生”が来るんだから。」
「そうだね!」