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Taste Sweet

作者: mamacros
掲載日:2012/04/19

Taste Sweet


ふわふわした想いを掴まえて、ぎゅっと抱き締めたら、心の中にふわり、愛が溢れた。


「愛してる、なんて、簡単には届けられないから……」

「え?」

「……だから私、伝えたいって思ったこと、大切にするよ。」

「どうしちゃったの、叶音?」

「コイスルオトメに優しい言葉なんて必要ないさ」

「雄音!!」

「何しに来たのよっ!?」

「ほら、忘れんぼさんにお届け物だ。」

「あっ!!」


エプロンと三角巾のセット。

そうだ、今日は調理実習だった。


「後で何か購買でおごり、な?」

「……ありがと」


なんだか悔しくて、ふて腐れてしまう。


「雄音先輩──っ!!」

「お、奈々」

「叶音先輩もっ!!」

「私はおまけかいっ!!」


奈々ちゃんが雄音に抱きつく。

見た目だけは良い雄音がリア充になったら、私はもしかしたらすっごく嫉妬されるのかもしれないと、中学になって双子であることを自覚した時は思ってた。

でも、奈々ちゃんは違った。


「違いますよ!!」


すっごくすっごく純粋で、ピュアな女の子なのだ。今じゃ私の恋愛相談相手……、あ、


「なんで叶音はいきなり赤くなるんだよ……。」

「成之先輩のこと考えてるんですか?」

「なななっ、奈々ちゃん!!」

「叶音、置いてくよ──っ!!」

「いっ、今行く!じゃあね!!」

「おごり!!忘れるなよ!!」

「分かったわよっ!!」

「……叶音先輩の恋、叶うといいですね」

「ま、どっちでもいいけどな」


☆☆☆


「……いい匂いしてきた!!」

「本当だ──!!」

「……。」


片付けに入って、味の注意をしなくてよくなった途端、


『クッキー焼くのか!!……俺にも持ってきてくれるか?』


にっこり笑って、いとも簡単に言う成之先輩のイメージが戻ってくる。

上手く出来るかな、美味しいって言って貰えるかな、なんて、思考がぐるぐる頭を巡る。


「ほーら、叶音、ちゃんとやって──」

「ゆうちゃん!!」


驚いて落っことしそうになった、私が洗っていたお皿を、楢羽はいとも簡単にさらっていった。


「愛に溺れてないでくださいね──?」

「……っ!!〃〃」

「あらあら真っ赤になっちゃってまーあー!!」

「もう楢羽ってば!!」


そこでタイミングよく、オーブンが電子音を立てた。


「あ、私見てくるよ!!」

「あ──、叶音逃げたぁ」

「だね」


周囲の女子まで、ころころと笑い声を上げる。

何故かその声がウザくなくて心地良いから、怒るに怒れない。


カチ。

オーブンレンジを開ければ、そこにはプレーンとココアのクッキー。

星とハートの形のものは私が作ったやつ。

花と音符の形のものは楢羽が作ったやつ。

……どっちも想い人へのものだ。


「袋くらい持ってきてるんだよね、叶音?」

「あっあっ、当たり前だよっ楢羽!!」

「ん!……これ美味しい!!」「あぁもう何勝手に食べてるのっ、みんな〜!!」


☆☆☆


成之先輩は、今日も、部活だろうか。

先輩と知り合ったのは、ええと……そうだ、階段だ。


「君、鳴海中の子?ここ目指してるの?」


高校受験に悩んで、手当たり次第に高校を見に行っていたとき、ここで先輩は、そう声をかけてくれた。


「はっ、はいっ!!」


緊張して返答すれば、


「頑張ってね!応援してるから!!」


そう、返してくれた。

その一言で、──たった一言だったけど、

私はこの学校に来れたんだ。


☆☆☆


「成之先輩っ!!」

「お、叶音ちゃん!!」

「クッキー……焼いたんです。貰ってくれますか?」

「うん。有難く頂くよ。」

「やったあっ!!」

「叶音ちゃんの自信作?」

「自信作って言うほどの出来じゃないんですけど……でも、頑張って作ったから」

「……ん、おいひい」

「良かった……!!」

「んで?」

「へっ?」

「まだ他に言いたいことがあるんじゃないの?叶音ちゃんさっきから、顔が真っ赤だよ?」

「っ!!!!……えっと…えと…えと……!!」

「うん?」

「成之先輩のことが、好きです……!!」


あぁもう私ったら、何言ってるんだろ。

成之先輩のこと、直視なんて出来ない。

でも、分かるよ。

分かっちゃうんだよ。

先輩、驚いてる──……。

あぁ、もうダメかも。

そう思った瞬間、体は勝手に動き出した。


「ごめんなさいっ、あっあっあたしっ、何言ってるんだろ!!」

「ちょっ、叶音ちゃん、」

「ごめんなさい、さようなら!!」


勝手に、走り出そうとして──、


「待てよ、叶音」


呼吸が、止まった。

……気がした。


振り返ったら、


「俺も、叶音のこと、好きだ」


真っ赤になった、成之先輩がいて、


「……え……?」


引っ張られて、振り向かされた。

それって、これって、


両想いってこと!?


「俺の隣に……いてくれるか?」

「は……はいっ!!」


気を抜いたら一瞬で抱き締められて、成之先輩の腕の中で、私は、

あぁ、幸せってこういうものなのかな、って、

心臓のどきどきが抑えられないまま、思った──。


☆☆☆


「はいリア充一丁あがりー」

「これで叶音先輩もリア充ですね!!」

「なんかつまんないけどな」


雄音と奈々の間に笑いが起きる。

こんな瞬間が、たまらなく幸せで。


(こういう時間を、あいつも成之先輩と共有出来るのか。)


それはそれで、悪くないのかもしれない、とも思うんだ。


☆☆☆


愛は続く。──永遠に。


世界はそれを知っているから、この甘くてほろ苦い、幸せな時間を、変化のある日常を、私達にプレゼントして、残していってくれるのかもしれない──。

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