女吸血鬼と運命のコイン
薄暗いビルの最上階。そこは、夜の世界の熱気が漂う、秘密の闇カジノだった。窓のガラスに貼られた黒いフィルムは、外の世界との境界線を曖昧にし、赤と金の光が不気味に室内を照らす。
「フルベット」テーブルの中央に積まれたチップの山が、まるで血の塊のように見えた。
それは現金でも暗号資産でもない。
「血レート」———今この卓でしか通用しない、生きてる人間の残り寿命を数値化した通貨だ。
漆黒のドレスに身を包み、髪は夜空のように暗い。彼女は、このカジノでも有名な存在、九条 緋夜。140年の時を超え、美しさと強さを兼ね備えた吸血鬼だ。
緋夜は最後のカードをめくる。その指先は、闇に光る宝石のように優雅で、まるで呪文を唱えるかのようにカードを操る。
「7...」
これでストレートフラッシュが完成する。向かいの男——黒のタキシードに身を包んだ50代の闇金融業者は、顔を歪めて笑った。
「悪いな、嬢ちゃん。俺のはフォーカードだ」
緋夜は静かに息を吐いた。長い睫毛が一度だけ揺れる。「……そう」彼女は自分の手札をテーブルに広げた。
「……あ?」男の声が裏返った瞬間、緋夜はゆっくりと首を傾げた。
「フォーカードは確かに強いわ。でもね」
彼女の瞳が、暗闇の中で朱に染まる。
「この卓のルールでは、ストレートフラッシュより上は……『生きてる血』しか認めないの」緋夜は席を立った。
ドレスの裾が床を滑る音だけが響く。「あなたの残り寿命は、あと7年と4ヶ月。レートにすると……約42万血ポイントね」男は椅子から転げ落ちそうになりながら叫んだ。「待て! まだ終わってねぇ! リベンジだ!」
緋夜は振り返らず、ただ小さく呟いた。「次に賭けるものが残ってるなら、聞いてあげる」その言葉を最後に、彼女は闇の中へ消えた。
カジノに残ったのは、黒澤の叫び声だけだった。
テーブルのディーラーは、次のゲームを始めようとカードを切る。
「次卓、九条緋夜 vs 黒澤 鴉。賭け条件:敗者は全血採取権を失う。開始時刻、午前3時17分——」
階段を下りながら、緋夜は小さく舌打ちした。階段を下りていく緋夜の足音が響く。
「……また面倒な相手を呼んじゃったわね、慎司」
階段の下で煙草をくわえていた橘慎司が、気怠そうに肩を竦めた。「俺のせいにするなよ。
お前が『面白そう』って言ったんだろ」
緋夜は一瞬、彼を見つめる。その鋭い眼差しは、過去を知る者の信頼を映し出す。
緋夜は一瞬だけ笑った。牙が光る。
「血は高い。だけど、命はもっと高い。ゲームだとフルベットしてしまう。悲しいものね」
「お前の魅力に惹かれて、フルベットしたくなるんだよ」
慎司は笑みを返した。この男こそ、彼女の頼れる仲間だ。
カジノの奥深くで、新たなドラマが幕を開ける。血と運命のゲームが始まる—。
皆さまお久しぶりです。初めての方はこんにちわ。わたくし、この度、ドスコイ鐘天使はなろうに復帰しました! イェイ! 祝! 作品よかったでとか、緋夜と結婚したいとか素敵な憧れをもっていただけたら幸いです。2016年もよろしくお願いいたします。




