幕間 星影の囁き
漆黒の宇宙に、無数の光点が瞬いていた。
その中央に浮かぶ巨大な円卓。椅子は七つ——すべての席に、異形の影が腰を下ろしている。
中央奥、銀白の双剣を膝に置き、鋭い眼光で全員を見渡す男。
星辰七将総司令・シリウス。
その声は低く、宇宙の闇を裂くように響く。
「時は来た。我らの光で、この地上を覆う“樹”を焼き払う」
右隣の席から、二つの声が重なるように響いた。
「白が言う。根を絶たねば樹はまた芽吹く」
「黒も同意する。今回は確実に、だ」
その声は互いに似ていながら、微妙に響きが異なる。不協和音のような妙な心地悪さが場を支配する。
その斜め向かい、仄青く輝く氷の剣を指先で弄ぶ女——ベガが鼻で笑った。
「ユグドラシル……そんなもの、凍らせて粉々にすればいいだけ」
壁際の巨漢アークトゥルスが、低く唸る。
「その前に……邪魔する小枝を踏み潰す必要がある」
「小枝?」
赤髪を揺らすカペラが笑い、手元の火花を弄んだ。
「学園のガキ共のことだろ? あれ、燃やしていい?」
淡く光る紋様を纏った老人**カノープス(白)**が静かに首を振る。
「燃やすのは簡単だが……あの中に、“開花者”がいる」
「黒も聞いた。その名は……紅葉」
シリウスがわずかに目を細めた。
「紅葉、か……。我らが手を下すまでもない。だが——」
双剣を一閃、円卓の中央に突き立てる。
「彼女の成長は、ユグドラシルの成長と同義。芽吹く前に摘み取る」
奥の席から、ゆっくりとした声が響く。
それは炎に包まれた巨躯、ベテルギウス。
「……摘み取るなら……派手にやれ……。燃え残る枝も……灰になるまでな」
その瞬間、天井に浮かぶ虚空の星図が赤く染まり、一つの星がゆっくりと黒く塗り潰されていった。
シリウスが立ち上がり、冷たく告げる。
「次は、この星を堕とす」