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火のそばで
翌日、司令室で蓮が任務報告を終えると、上官は珍しく柔らかい表情を見せた。
「よくやった。全員無事で何よりだ」
短い言葉だったが、紅葉の胸にじんわりと温かさが広がった。
報告を終えた後、紫苑が横で小さく囁く。
「……あなたの動き、悪くなかったですわ」
猫柳はすかさず「悪くなかったじゃなくて、かなり良かっただろ」と茶化す。
紅葉はフフフと思わず顔を緩める。
その日の夕暮れ、拠点の食堂では珍しく豪華な食事が並んでいた。
焼きたてのパン、温かなスープ、香ばしい肉の香り。
「本日の任務成功祝いだってさ」猫柳が皿を抱えながら笑う。
結芽が隣に座り、小声で「また一緒に……訓練してくれますか?」と聞く。
「もちろん」紅葉は迷いなく答えた。
食後、仲間たちは中庭の焚き火を囲んでいた。
紫苑は紅茶を手に、猫柳は火ばさみで薪を突き、結芽は小さなお守りを撫でている。
エリカは炎をじっと見つめたまま、唐突に口を開いた。
「次は……もっと大きい波が来る」
その声に、焚き火のはぜる音だけが答えた。
紅葉は炎を見つめながら、大剣の柄を静かに握りしめた。
(守る……何が来ても)