勇者になれなかった男
ある日、突如、異世界に召喚された。
僕は生まれつき耳が聞こえない。
だから状況をすぐに飲み込めなかった、
けれど、神官っぽいお姉さんが文字を書いてくれたので、意思疎通ができた。
そのお姉さんに僕は一目惚れした。
緊張しながら説明を聞いてみた。
今、魔王が暴れて世界の危機に堕ちている事。
強大な魔王を討ち取れるのは勇者だけである事。
それらを知った僕は喜んで勇者になる事を選んだ。
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結論から言おう。
勇者としての旅路、めちゃくちゃしんどい。
都市の外に出れば、朝夜問わず敵に襲われるし。
都市に戻れば、変な人に見られるし。
今は強い騎士に守られているが、一人でも戦えるようになりたい。
そんな思いが強くなって、訓練を真面目に取り組んだ。
戦い方を覚えて、立ち回りを覚えた。
それでも対人戦には勝てない。
指導官に諦めたような目で見られた。
僕に戦いの才能は無いかもしれない。
それでも勇者になる事を諦めきれず、毎日剣を振るい続けた。
全ては魔王を倒して、一目惚れした神官のお姉さんと結婚する為に。
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変わり映えしない日々がしばらく続いた。
商店が並び立つ大通りに歩いても、人々に無視されるようになった。
承認欲求に刺激されて、怒りが湧いた。
けれど、暴力に頼っては駄目だ。
6秒待ってから冷静に立ち回った。
そうだ、酒場に行こう。
ふと、僕は思った。
<旅人の酒場>。
僕がお世話になっているあそこならば、何故無視されるようになったか、調べる事ができる。
早速、酒場に向かった。
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色んな人に聞き回った結果。
『国王が別の勇者を召喚した。その人がとても優れた才能を持ち、イケメンなので、国外問わず、高い人気を集めている』
という事が分かった。
僕の承認欲求が荒ぶった。
こうなったら、僕も世界最強になって賞賛を集めてやる!
そう決めた。
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そうして10年が流れた。
鍛えまくった僕は魔王城に向かった、
そこは平和になった魔大陸があった。
僕はやる気が消えて家に帰った。
そして、僕は遊びすぎてあっさり死んだ。