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08・屈辱の敗北

「どうした?魔族に二言はなかったはずだな。それでは啖呵を切った責任をとってもらおう。私も討伐の手間が省けて助かる。豚の餌になるか、ゴメンなさいと詫びながら腹を掻っ捌くか、オマエの好きな方を選ばせてやる。」若者が冷徹に言い放つ。


「くおおおおおぉ、、、貴様には血も涙のないのかあーーーー!!」


「オマエのような、ゴミクズ魔族にかける情けなどない!」


「ええい!もうよい!こうなればヤケだ!魔界最強のスーパーエリート、美しき上級魔族の散り際、とくと見るが良い!しかし、余はな、決して貴様たちに負けたのではないぞ!金のない貧しさに負けたのでもない!いや、世知辛い世間に負けてしまった、枯れススキなのだ。


思えば余は、終始不幸な女でしかなかった。余の魔生はやることなすこと上手くいかぬどころか、全てが裏目に出るような、まさに恨めしい魔生であった。。。信頼できる仲間も、仲の良い友達もなく、そして青春も、、、、、ああ、、魔王様、先立つ不幸をお許しくだされ!」


「貴様、すまぬが介錯を頼む。貴様の剣を貸してくれ」


「それはいいが、きちんと、詫びながら逝け。ごめんなさい、私が悪かったんですぅ!と叫びながら、勢いよく一文字に掻っ捌くのだぞ!」


「貴様!貴様には武士の情けというものはないのか!!!」


「魔族にかける情けなど、ゼロコンマ1ミリ秒も持ち合わせていない」


「くぬう!!!!!これが余の最後か!まさかこのような辱めを受けながら、公衆の面前でなぶられて死ぬ羽目になろうとはーーー!!!誠に残念無念ちんねんさんであったわ!」


「クッ、、さらば!!余の青春の日々よ!!!!」

女が剣を脇腹に突き立てた。



「グッ、、、グオあああぁ、、、」


全身がキリキリと軋む。顔面と首筋とが体からちぎれそうな苦痛に、息ができないどころか、肩肘と二の腕を起点に、上半身が捩じ切られるような激しい痛みと苦痛がこだまする。女は朦朧とする意識の中で、この刹那の闇に堕ちていった。





「先生は甘すぎます。このようなポンコツの魔族の女の、一体どこがいいのですか」


「フッ、お前ももう許してやれ」


「そうじゃ、あやつはお前と同様、貴重な戦力、人材なのじゃからな」


「私にはどうしても分かりません。」


「じきに分かる、、、じきにな、、、フォッ」



「御老公」影が囁く。


「気がついたようじゃのう」


「はっ、、、ジジィ!、、貴様、、、、なぜここにいる、天国には貴様のようなおいぼれの顔など必要ないわ!」


「残念ながら、ここは天国ではないのじゃ。かと言って地獄でもないがな」


「なにを言っている?確か、余は腹を掻っ捌いて死んだはずでは、、、、」


「ごめんなさい、私が悪かったですぅ、、と言い忘れてな」若者があざけりなら追い討ちをかける。


「貴様ァァ、、、! 死んでなお、余をなぶり尽くそうとするのか!このドSめ!」


「オマエ、周りをよく見てみろ」


そう言われて女は、景色がまるで変わってないことに気がついた。

「余は一体、、、、もしや、、まだ、余は生きておるのか!?」


屈辱にまみれ、若者の嘲りを受けながら剣を突き立てたところまでは、なんとか覚えている。しかしその瞬間、切腹とは違う苦痛が全身を襲った違和感に疑問を感じながら、落ちたような気がしていたが、、、。


「あ、あの技は!?」


「知っているのか、影よ?」


「あれはこの世界のものではなく、異世界の格闘技でござる。ダンディー殿が以前いらした世界の殺人術の一つかと。」


「その名を特殊必殺秘技チキンウィング・フェイスロック!間接技と締め技の両方を併せ持ち、片方の腕で相手の腕をロックして身動きが取れないようにかつ、上半身を絞り上げ、もう片方の腕で相手の顔を押さえつけながら逆方向に捻りあげ、同時に頸動脈を締め上げつつ、悶絶するまで追い込んでいくという恐ろしい拷問技でござる!」




女がまさに脇腹に剣を突き立てたその刹那、神技とも呼べるダンディの特殊スキルが発動し、電光石火の早技が剣を奪い取り、そのまま女をガッツリと完璧に締め上げ、すんでのところで自害が回避されたのだ。


「嬢ちゃん、よくやったぜ。もうこのまま、眠っちまいな」女は、男がその時に優しくつぶやいた囁き声を一瞬思い出した。


女は全身に走る激痛に苦悶の表情を浮かべつつ、どこか安らかな安堵にえも言われぬ幸福感を感じながら眠りについてことを思い出した。


「き、貴様が余を、余を、、、、、、助けたと申すのか、、、?」


「お前さんは死ぬにはまだ早い。それに嬢ちゃんみたいに可愛い女は、死なせるには惜しいからな」



「先生!!!!先生は私というものがありながら、まだそんなポンコツのことを、、、」



「くっ、くうう、、、、貴様というやつは、、、、どこまでも、、、、」



「お主も諦めが悪いのう、、、、いい加減認めたらどうじゃ、己の魂と握手してみてはどうかと言っておるのじゃ」



「余、余はどうすれば、、、」


「オマエは食い逃げしようとした犯罪者だ。何が上級魔族だ、貴族だ姫だの、オマエなど魔族の風上にもおけんゴミクズだ。その結果、犯罪を犯して死刑になったようなものだからな」

若者は冷徹に追い打ちをかけた。



「おのれ、ドSめが、、、貴様、どこまでも、、、どこまでも余をなぶり尽くしおって、、、、」


「悔しかったら、自分で運命を変えてみろ!オマエに先生はやらん!!」


「余は、余は、、、、、、余にはもう、、、何もないのか、、、、?、、、カネも、、家来も、、住む場所も、、、帰る場所も、、、そして青春の日々も、、、、、、クゥッ!!」


「あるぜ」

男がさらりと呟く。


「なんだと!?」


「フォッ、影よ!あれを。あれをここに持て」


「こ、、、これはなんなのだ?」


「言ったであろう、まだ儀式は済んでおらん。今のお主はひとりぼっちの淋しい子犬じゃ。もういいのではないか、そろそろぼっちを卒業してものう、、、、。」


「これはな、お主がこのBARで働くために必要な儀式じゃ。名付けて第一級契約魔法、雇用契約書!!!これに同意してサインをすれば、晴れてお主に素晴らしい魔法がかかり、明日からこのBARが、お主の心の拠り所となるのじゃ!」


「いや、何度も言うが、余はBARなんぞで働くつもりは、、、、」


「ハブぅッ、おゴォッ!、、、、ゴエっ、、、!!!」


容赦ない若者のラッシュが女を連打した。


「どうもオマエはわかっていないようだな?オマエにはもう選択権などないのだ。敗者は勝者の奴隷として、命を長らえるには下僕として全身全霊、ご主人様に奉仕するしかないのだ!それが弱肉強食とか言っているオマエたちのルールではないのか!!」


「グッ、、うぬぅ、、、、貴様と言うやつは、、、、!!」


「オマエには、御老公や先生の情けが分からないのか!?魔族には愛という概念がないのか?オマエたちこそ破壊と暴力しか知らない野蛮な下等生物ではないのか!?


そんなくだらない、生きるか死ぬかしかない人生など、生まれる価値も生きる価値もない!今すぐ死んで世界に詫びてこい!それでも死にたいのなら、私がオマエを今すぐみじん切りにして豚の餌にしてやる!


ただもし生きたいのであれば、もう一度だけ最初で最後のチャンスをやろうと先生たちは仰っているのだ!素直に、心を裸にしてみろ!このポンコツめ!」


「う、うう、、、、貴様、、、、しかし、、なぜか余は貴様に言い返せぬ、、、、うぅ、、ジジィ!この書にはなんと書いてあるのだ?」

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