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07・儀式へのカウントダウン

「ヌゥッ!! 貴様、よくも余の美しい顔に肘鉄を喰らわしてくれたな!危うく鼻血が出て、思わず鏡を見るのをためらうほどに、無様になるところであったわ!」


「 オマエこそ見た目に反して、案外頑丈ではないか。さすが魔族といったところか」


「今のは乙女モードに浸っているところに、予想外の完全なる不意打ちを喰らってしまっただけだ。余が本気を出せば簡単には殺られん!最上級の魔族の力を舐めるな!」


「ふっ、イキがるのも今のうちだ、小悪魔め!その青いケツを公衆の面前に晒しておいて何が乙女だ!お前のケツなど、このBARを美しく飾る、開店祝いの胡蝶蘭の足元にも及ばぬ!」


「き、き、、、貴様ああああーーーー!!!!!、、、おのれえ、あのような身の毛もよだつ、全くもって奇妙で、、、、げ、下品な技を使いおって!!!余の青春の1ページに傷をつけた貴様だけは、絶対に許さぬ!!!」


その刹那、シュバッ!!!と、突然黒い壁が二人の間を遮った。


「双方とも剣を収めるでござる。冷静になるでござる。」


「影、、、、、、」

若者がつぶやく。


「うぬう、、、此奴、隙がない、、、、」

女も迂闊に動けない。しばしの間、こう着状態が続くかに思われた。


「まあ、座れ」男がつぶやいた。


「はい、先生」

若者は素直に従う。


「お前さんもだ」

女はバツが悪そうに、カウンターの椅子に腰を下ろす。


「お主の儀式はまだ済んでおらぬ」


「ジジィ?なんだそれは?」


「お主がこのBARで働くために必要なものじゃ」


「たわけ!余にはもっと重要なミッションがあると言ったであろう!」


「嬢ちゃん、それは本音か?」


「うっ、そ、それは、、、、、」


「おや、お主、今度は否定しないのじゃな、、、、フォッ」


「たわけ!くっ、どうも今夜は調子が出ぬ。このままでは、貴様らの呪詛攻撃にたぶらかされてしまいそうだ。しかも4体1とは、さすがの余も分が悪かろう。今日のところは見逃してやろう、命拾いしたことに感謝するがよい」


「下等生物どもよ、さらばだ! グッバイ、、、、我が青春の日々よ!」


「待て」

若者が立ち去ろうとする女の肩をつかんで言った。


「代金をおいていけ」


「なんだと!?」


「オマエの飲んだそのカクテルの代金だ」


「いや、それは俺の奢りだ」

男が言った。


「先生、甘やかしてはいけません。癖になったらどうするのですか?こういう輩は、きちんと躾をしておかないと、いつもツケ払いとかで、赤字の温床になります」


「フッ、なんだそんなことか、おうとも、言われずとも耳を揃えて払ってやるわ。上級魔族の財力を舐めるなよ。この程度の端金など屁でもないわ」


「いいのか、嬢ちゃん」


「魔族に二言はない!恥を知れ!たとえこの身がどうなろうと、一度言ったことは断じて撤回などせぬ!それができぬようなクズは、豚の餌になって当然だ!潔く詫びて腹を掻っ捌いて死ぬべきであろう!それが騎士道というものであろう!」


「下等生物どもよ、しばし待っておれ!今、余の従者をここへ呼んでくれよう、」女は胸にぶら下げている水晶のペンダントに向かって命令を発した。


「ヘイ!カモン!」


返事がない。。。。


「どうした、、余の声が聞こえぬのか?、、、カモン!!!!」


「タツオさん、、、、もしもし???、、、、、、、」


沈黙が続いた。


「おかしい、なぜだ、、、余のコールには3秒以内に出るはずなのだが、、、」



「オマエ、、、カネはどうした?」

若者が悟りを開いた大仏のように、冷徹な視線を注ぐ。


「い、いや、、、あれっ、、、、」


「オマエ、、まさか無銭飲食。。。」

若者が冷ややかに、追い打ちをかける。



「た、たわけ、、、、、余がそのようなことを、、、」


「オマエ、魔族に二言はないと言ったな。。。?」

若者の声にドスがこもる。


「えっ、いえ、そのう、、、」

女はしどろもどろになりつつ、入り口近くのカウンターに並べられた品々に気がついた。


「えっ?あれは、、、?えっ、、、もしや、、、ま、まさか、、、?!」


そこにはよく見覚えのある宝飾品が、所狭しと並べられていた。


「あれは、、サイクロプスの黄金の棍棒、、、、それに、ミノタウロスの銀の斧、、、、それに、、、メデューサのダイヤモンドの首飾り、、、それに、それに、、、、」


女の額にジワリと、嫌な汗が滲み出ている。


「どうした、顔が青いぞ。気分でも悪くなったか?」

若者が言い放った。



「あのう、、、この宝飾品とか、武器とか、なんとか諸々、、は、、一体、、、、」



「ここに来る途中で、魔族どもがたむろしていたから、いつものように発見次第即討伐してやっただけだ。」


「えっ、あの小隊をか? まさか貴様一人でっって、、、、いや、あの腕利きたち、結構いい感じに強いんだが、、、」


「言っただろう、魔族は発見次第即討伐だと。束になってかかってこようが、その場で殲滅対象だ。肉片のかけらも残さん。」


「え、、っと、では、この宝飾品などの数々は、、、、全滅ってことは、もしや魔界と人間界を繋ぐゲートキーパーまで、、、いや、それでは余が魔界に帰れなくなってしまうではないか、、、」うっすらと青ざめていく女の額に、嫌な脂汗が滲み出る。


「そいつらが持っていた、金目のものを剥ぎ取ってきた。」


「いつもすまねえな」カウンターの向こうで男が礼を言う。


「いえ、先生、当然のことですから気になさらないでください。」


「お前には苦労をかけてしまってるな」


「先生、それは言わない約束ではないですか」


「どうした、魔族の女?顔が青いぞ?気分でも悪いのか?」

若者が無表情で女を見る。


「では、代金を払って、さっさとこのBARから立ち去れ!」


「い、いや、、、だって、、余の財布は従者が管理しておるからして、、だからここに呼び出したのだが、、、しかも今放り出されたら、帰るところもないからして、、、、」


「オマエ、まさか払う金がないのか?」


「た、たわけ、、、魔族に二言は、、、、うっ、くっ、、、、」


その時、女の目に一筋の光明が刺した。


「あ、あれは、あの中に余の財布があるではないか!あれをよこせ、たんまりと入っておるから、いくらでも言い値で払ってやるから、、、」


「オマエ、なにを言っている?あれは私の戦利品だ。一つ目の巨人を細切れにした際に、首にかけていたポシェットを剥ぎ取ったものだ。」



「サイクロプスだけにサイコロ切れに、、、、、、いや、そ、そんな理不尽な、、、、余は、余は、、、、、」


「オマエ、まさか無銭飲食する気か?上級魔族のお姫様ともあろうものが、いやしくも食い逃げとは、、、、魔族も落ちたものだな。もはや救いようのない外道よ」



「く、クゥッ、、、、、」

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