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05・運命の出会い

「お主ならきっと、ワシらのBARの求人票を、見つけてくれると信じておったぞ」


「なんだ、それは!?余はそのようなものは知らぬぞ!」


「フッ、今更照れ隠しなどせんでも良い、実際お主がこのBARの初めての応募者なのじゃ。このBARはな、実は秘密裏に進められている国家プロジェクトなのじゃ。


真の目的はまだ言えぬが、それゆえ魔族どもに見つけられないように、難攻不落のダンジョンの深い奥底に隠されているのじゃ。お主もみたであろう、今のこの外の環境を、砂嵐舞う視界ゼロの世界を。まさに、砂の吹雪に隠された、地上か地下かの区別もつかぬ、奥深くまで続くバブルの塔に住んでおるようなものじゃて。


だから、普通の人間や魔族では資金力も足りぬどころか、絶対に辿り着けないどころか、存在すら発見できぬ、鉄壁の要塞なのじゃ!」


「いや、ジジィ、、、、それでは求人票を見ても、フツー、とてもじゃないが、誰一人ここにはたどり着けないのではないか?」


「そうかも知れぬ。実際、秘技ハローワークを持ってしても、もう1年以上、一人の応募もなかったくらいじゃ。のう、ダンディよ」


「ああ、流石に俺たちだけで、無人島のようなBARに1年以上立ち続けるのは、魔王を倒すよりも骨が折れるぜ。何より暇だ。しかも赤字がかさむ」


「いや、ジジィ、もしかして貴様らはアホなのか、、、?」


「フッ、長かった、わしらも耐えた、、、、しかしな、ついにやってきたのだ。お主という千載一遇の逸材がな。まさに予言の書に記されたように、空から恐怖の大王が降ってきたのじゃ!この年、この月、この日にちょうどな!これを奇跡の出会いと言わずになんというのじゃ!!!!のう、ダンディよ!」


「ああ、爺さん、今夜は最高にクールだぜ」


「いや、待て、貴様ら、いったい、何を勝手に舞い上がっておるのだ?」


「不服のようじゃな」


「いや、待て、状況がまるでつかめぬ。そもそも余は求人票など知らぬし、このBARで働くつもりなど毛頭ありはせぬ」


「なぜじゃ?」


「た、たわけ! 余はこの人間界に魔王様の密命を受けて、やってきたのだ!魔王様に仇なすにっくき愚かな下等生物どもを一掃し、理想郷を気付き上げるための礎となるのだ!


しかして先刻のまさかの大敗から、人間どもの強さと進化の秘密を探りにきたのじゃ!そして余の圧倒的な力を持って、この世界の重要人物どもを秘密裏に、抹殺暗殺皆殺しにするためにな!何度も言わせるでない!」


「嬢ちゃん、それは本音か?」

ダンディがつぶやいた。


「嬢ちゃんは素晴らしい探索能力を持ってるのさ。そんじょそこらの冒険者や探索者では、視界にすら入らないこのバブルの塔を見つけたこと自体、驚嘆に値するぜ。」


「フっ、余の能力を舐めないでもらおうか」


「しかしな、ただ見つけただけじゃ、この塔まで入ってはこれねえ」


「ましてやBARの扉を開けて、この最奥のダンジョンにまで入ってくるにはな」


「何、貴様、ここもダンジョンだというのか?」


「ああ、さっき爺さんが言ったことを噛み砕いていうとそうなる。ダンジョンとは一言で言えば、無限の世界観であり、人の夢や希望や欲望や現実逃避を反映した、あらゆる要素が自由に作られる仮想の世界さ。


その世界にはゲーム感覚で、新たにポイント獲得やレベルアップなんかの、複雑な罠が自由に組み立てられて、その世界観を増築するために、何層にも深掘りしていくようなある種の迷宮とも言えるが、それは場所や世界観の多様性や複雑さだけじゃない。


真のダンジョンとは人の心のそのもの、そして胸の奥にある魂こそが、それぞれにとっての御宝そのものなのさ。そう、俺にも、そしてお前のその小さな胸の奥にもあるように」


「貴様!余が貧乳だと申すか! そこに直れ、成敗してくれる!!!」


「はやとちりだぜ、嬢ちゃん。お前さんは可愛い顔して、短気なのが玉に傷だ」


「か、可愛いだと、、、、、」


「つまりはお前さんのハートが、メンタル弱弱ってことなのさ」


「く、ううっ、、、」


「だがな、だからこそだ、お前さんがこのBARに辿り着けたのは」


「なんだと?」


「お前さんは、疲れた女はBARに行くって言っただろ」


「えっ、あのう、、、そんなこと、言ったかのう、、、、?」


「ああ、疑うんなら、第1話からしっかりと読み直すんだな。」


「それこそが、シークレットキーなのさ。このBARの扉を開くための、求人票そのものなのさ。。。」


「お前さんは、口ではここにきた目的は、魔王に命令されたとか、人間たちを皆殺しとか、大層なことを言ってるが、実際そのとおりになったか?」


「いや、言われてみれば、確かに、この人間界に来てずいぶん経ったが、、、、、全くもって思い通りにはなっていない。まるで「極め付けの逆神」でも発動したかのようだ」


「お前さんは、魔界でも、そして人間界でも疲れ切った孤独な子犬だ。その淋しさが、魂の叫びとなって爆発したのさ。」


「たった一言だけ、寂しいってな。。。。あんなふうに、、、、それがお前さんのよこした便りなのさ」


「はぅ、、、、オオォーーーーーーー!!!!!」


「それがお前さんの本音だ、心の奥底にある真の願いだ、だからお前さんはこのBARにやってきた!いや、辿り着くことができたのさ。」


「遠く輝く俺たちのBARに、お前の願いが届いた時にな。魔界と人間界をはるかに超えて、光と共にやってきたのさ、、、、、」


「今が変身の時だ!と、お前のハートが叫んでるだろ? 違うかい?」



「ああ、ああぁ、、、、それならば、余がこのBARに来たのも、死兆星に導かれし運命であったのか、、、、、』


「たぶん、、、な」


「信じて、、、いいのか、貴様らを、、、、頼って、、いいのか、、 あと、う、うう、、泣いても、、、、いいか?」


「止めやしねえ」


「オッ、、、、オオオ、、オオー、、、、、、女は号泣した。滝壺がたまるかの如く、一生分の涙を流したかと思うほどに。


「決めるのはお前だ。誰もお前の人生を決めることはできない」


「ガビーーーーーン!」

このわずかたったの一言で、女はまた、完全に落ちてしまった。


皆が寝静まった、深夜の静寂に、ただ女の嗚咽だけがこだまする。



「見事じゃな、ダンディよ」


「フッ、爺さんもな」


「あの女は強いぞ、、、、」


「ああ、知ってるさ、、」



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