6.神々はそれからアーロンにハンバーガーを供えて貰って帰路についた。
神々はそれからアーロンにハンバーガーを供えて貰って帰路についた。それなりに満足である。
彼のダンジョンは自然発生したものではなく、何らかの意図をもって誰かが作り出したものである。現状日本にまだできていないのは偶然以外の何物でもないだろう。もしくは、単に大陸からダンジョンを作り出しただけかもしれないが。
それであれば早晩、この国にもできるだろう。
というのが、急遽集まった天津神と国津神の重鎮たちの感想であった。
『あちらがそのつもりなら、こちらも迎え撃たねば失礼というものよの』
『そうなりますなぁ』
『人間に儀式としてさせますか』
『いやいや我らが気が付いたのだから、我等の主導でも問題あるまい』
そうと決まれば話は早い。決まるまでが長い場合もあるが、早い場合は早い。
神々に呼び出されたのはキツネの一族と、天狗の一族であった。
「拝命いたします」
「仕ります」
双方に下された命令はとても簡単で、俗に言う冒険者ギルドの作成と運営である。ダンジョン自体は、あちらさんが作る前に神社の境内に作成する。すべての小さな神社にもだ。小さい神社であれば小さいダンジョンで構わない。
人が来て、信心を多く神社に落とせば、それだけその神は強くなるのだ。
青白橡は、近所の国津神様からの通達に瞬いた。瞬いた。瞬いた。
宮司の子供たちはニュース映像で見るダンジョンに興味津々で、日本にも出来ないのかと青白橡に聞いてくる。青白橡の今の宮司は声を聴くだけだが、その子供三人の内長男は青白橡を見れて会話が出来て、長女は声が聞こえた。残念なことに次男は青白橡を信じていなかった。
『どんなダンジョンがいいかの』
宮司は大人だから、そんな危ないことをさせないで下さいと言うだろう。このダンジョンに潜ることが出来る人員は天狗が育てるし、キツネが恐らくダンジョンの管理をしてくれるだろう。だがダンジョンを作るのは青白橡で、報酬なんかも考えなければいけないのも青白橡だ。
近所に住まう尾花と青朽葉と一緒に、頭をひねる。首もひねる。
問題なのはこの一文、出来るだけ地元の特産品を使え。だ。
『門前町で取り扱いのあるものを、と言われてもなぁ』
『門前町があるような大きな神社ばかりではないからなあ』
『多分、どうすればいいのか悩むだろうから、という配慮なのだろうけれど』
三柱の神はうーんとうなるしかない。
ここは農村ではない。住宅街だ。特にこれといった産業もない。工場があるわけでもないし、伝統芸能があるわけでもない。
もうちょっと東に行けば牧場があるけれど、それは三柱の管轄ではなくて、他の神様の管轄だ。
「経験値だよ、経験値! 経験値が美味しいやつ!」
「そうそう。いいアイテムがあるのと、いい経験値が貰えるのが魅力的だよね!」
『そうはいうてもの』
『けいけんち。けいけんちとはなんぞ』
『どうやれば、美味しくなるんかのう』
この三柱の神々だけではなく、各地で色々な神々がしばらく首をひねり続けることになった。
いや人間にダンジョンを作ることを言えないのだから、ドロップアイテムを準備するのは難しい。商工会に話を通すの? どうやって?
その一方で着々と、キツネと天狗は準備を整えていった。外国と物語を手本に、体系を整えていく。戦い方を教えるのは天狗が。神社の境内に出来るダンジョンの見張りはキツネが行う。勝手に入らせはしない。死なれたら困るので。とてもとても困るので。
どんな小さな神社であっても、境内かもしくは近隣にキツネの社があった。青白橡の住む神社も、ちょっと行ったところにキツネのお社があったので、相談に行った。手土産は、宮司の子供たちに買ってきてもらったお揚げだ。
「そうですねぇ。とりあえず作ってみたらいかがです」
『とりあえず?』
「そうですそうです。作って運用してみないと、どうしていいのか分からないでしょう。とりあえず三階層くらいで、青白橡様は元は鳥だったのですから、近隣の鳥に声をかけていただいて」
『なるほどなるほど。それが特色を出す、ということなのだな』
「そうですそうです。教練場にすると天狗に言って、カラス天狗でも借りて。三階をボス部屋にして、そこに陣取って貰えばよろしいのです」
『お詳しいですの』
「そりゃあもう、勉強しましたから」
キツネに相談をした結果、青白橡のダンジョンは出来上がった。青白橡から話を聞いて、尾花と青朽葉もキツネに相談をした。キツネは他のダンジョンとの調整もして、その上で的確に相談に乗ってくれた。
こうして現代日本にもダンジョンが整備されたのであった。
特に理由もなくダンジョンができて特に理由が説明もされず踏破していく話を読むのも好きです。
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