それは、自分が雑多なものだと知っていた。
これはご案内用のSS
それは、自分が雑多なものだと知っていた。
魔王たちと同じ闇から生まれ出でたけれど、魔王たちと同じように育つことは出来なかった。自分の抱える闇は深くならず。濃くならず。
雑多なものは、雑多なもののままだった。
なんかこう、ごちゃごちゃと色んなものが混じっている闇の姿。片手のひらに収まってしまうサイズで、手足はあったりなかったりする。多い時は九本あって、少ない時はゼロ本だったりもする。混ざりものだって、その辺にある埃やら小さな空を飛ぶのに適さない羽やらなんやらいろいろだ。
だから雑多なものは自分を雑多なものと称したし、周りにいるもの達もそう呼んだ。
のちに魔王と呼ばれるようになるドグラスは、とても大きくなった。闇を統べる魔の神に似た姿を得た。だからドグラスは、魔王になった。めちゃくちゃ大きな角がとても格好いいと思う。ドグラスに言ったことはないけれど。
神に似た姿を得たから魔王になったのか、魔王になったから神に似た姿を得たのかは、雑多なものには分からない。
のちに六曜と呼ばれ、魔王を支えた彼らも、雑多なものと同じ闇から生まれた。それなのに彼らは、魔王と同じく強く深い闇を得た。
羨ましくないのか、と問われたら、雑多なものにとってそれはとてもとても羨ましい。彼らはカタチを得たから、喉がある。声帯がある。他の皆と、会話が出来る。
雑多なものにはそんなものはない。だから会話が出来ない。
雑多なものは闇が濃くもないから、思念で会話もできない。
雑多なものは彼らを幼馴染だと思っているが、あちらはどうだろうか。気にしてはいけない、と、雑多なものは思っている。必死に、自分にそう言い聞かせている。
だってそうしなければ、自分は消えてなくなってしまうから。
四角いカーサや、隻角のシーラは雑多なものを気遣ってくれた。けれど雑多なものはしょせん雑多なものなので、良く死んでいた。
五つ目のアーベルの作るダンジョンで、雑多なものはよく働いていた。縦に伸びたり縮んだり、目に見えないほど小さな羽を必死にはためかせて飛んでみたり。
そういえば雑多なものは、何度死んで何度生まれ変わっても、姿かたちが固定されなかった。いつも違って、いつも雑多なものだった。それに対して特に思うところはない。あの時の幼馴染たちはなんかすごい上の方に行ってしまったけれど、でもこの思い出は、自分だけのものだ。他の雑多なもの達とは、ちょっとだけ違うのだ。
それは雑多なものにとって、別に優越感の類ではなかった。幼馴染の彼らが、同じ闇から同じように雑多なものとして産まれた彼らが力をつけて、それが雑多なもの達の間で話題になるたび、なんかこう、この辺が、ぎゅっとなった。
光の神の作りたもうた生き物ならそこに何か臓器でもあるのだろうけれど、闇の神が作った雑多なものに、そんなものはない。無いのに、この辺が、ぎゅっとなるのだ。
雑多なものに感情などほぼない。だからそのぎゅっとなることに、名前はない。
「なんだ、あいつはまた死んでしまったのか」
魔王は、自分によく似た闇をすくい上げた。あの日、あの時、同じ闇から生まれた雑多なもの。いつまで待っても大きくならず、いつまで待っても強くならず。
だからいつも簡単に死んでしまったけれど、いつも必ず、産まれ直す雑多なもの。色んなものがもう色々と混ざりあってしまって、よく分からなくなってしまったもの。
五つ目のアーベルは、魔王の手のひらに収まる小さな小さな闇を覗き込んだ。
「今度はどんな雑多なものになりますかね」
「そうだなぁ」
どれだけ魔王が、魔王以外の彼等が闇の力を注いでも、雑多なものは雑多なもののままだった。
それでも、彼らは同じく生まれた雑多なものを、雑多なものとして愛した。
優しい友人たちからもっと読みたいと言ってもらえた結果、チョロい私は本作を深堀しました。
その結果文字数が倍になり、考えた結果、こちらをフレームワーク版として残し(だってこっちはこっちで好きなので)、あっちを本編としてアップすることにしました。
タイトル同一なので、見つけやすいと思います。
よろしければあちらもご覧ください。
*追記
シリーズ設定いたしましたので、タイトル上のリンクをぽちってください。
慣れてなくて案内が不明瞭で申し訳ない…!




