閑話 バレンタイン ⑤
僕達が入ったフォンド村の中はついさっきモンスターの襲撃があったとは思えないくらい平和だった。
長閑で良い場所だなぁ‥‥と思いつつ村を軽く見渡した。そして、僕達は近くにいた村人に村長の家の場所を聞いた。そしたらあっさりと教えてくれたので村長の家はすぐに見つかった。村長の家は屋敷と呼ばれるくらい大きかった。屋敷の前には門番も居て屋敷の前で僕達は止められた。
「何者だ!?ここはフォンド村村長ガトーの屋敷だ!」
「俺達は、異界人の探求者だ。お宅のお嬢様に言われていた素材を集めたからその報告だ」
「そうでしたか。その話なら聞いていますのでどうぞお入りください」
「了解した。エア。行こうか」
「うん」
僕達が村長の家の中に入ると執事らしき人が厨房に案内してくれた。そこにショコラさんがいるらしい。
僕達が厨房に着いたらいつでも外に出ることが出来そうな格好をしているショコラさんが待っていた。
「お待ちしておりました。優しき異界人の探求者様達。私の為にチョコレートの素材を集めて貰い深く感謝します」
「いえ、困ってる人がいたら助けるのが僕達がここにいる理由ですから気にしないでください」
「ありがとうございます。では、素材を出して貰えますか?」
僕達はカカオとミルク、砂糖をショコラさんに渡した。
「では、始めます。すみませんが探求者様方は屋敷の外に出て待ってて貰えますか?早急に終わらせて行きますので」
「分かりました。お待ちします」
僕達はそう言われたのでまた執事さんに案内され屋敷の外へと出た。
外に出て少しだけサンと会話をしているとショコラさんが出てきた。
「お待たせしました!チョコレートが完成しました!さあ、私の呪いを解きに行きましょう!」
「護衛しますのでこちらに」
サンが護衛を申し出ると‥‥
「大丈夫ですよ。私を呪った人物が居る所はそこまで遠くないですから」
そう言って村の入り口とは逆方向に向かい出した。それに僕達がついて行くと村の外れに出た。そこにはボロ小屋があった。そして、ショコラさんが小屋に向かって声を掛け始めた。
「チョコレートを持ってきましたよ~開けてください」
すると‥‥中からフードを被って顔が見えない人物が居た。
「やあ、待ってたよショコラ。じゃ、呪い‥‥というか魔法を解くね」
「はい。お願いします」
呪いじゃなかったんかい!と思いながら僕達は状況を見守っていた。フードの人物が何かを呟いた途端にショコラさんの見た目が変化していく。長いチョコレート色の髪にチョコレート色の目をしているスレンダーな美人さんが現れた。
「はい。解除完了。お疲れ様」
「ありがとうございます。レトさん」
知り合い!?と思いながら驚いているとサンは何か分かったみたいでなるほど。と呟いていた。
「毎年毎年チョコレートを持ってきてくれてありがとうね?」
「いえ、私が渡したくて渡しているので‥‥」
ショコラさんは少し照れながらそう言った。
「やあ、異界人の探求者さん達も悪かったね。この茶番劇というか僕達の為に手伝ってくれて」
そう言われて僕が困惑してるとサンが一言。
「やっぱりそういう事なのか?」
え!?どういう事なの!?
「そっちの銀髪の彼は状況が分かってないようだけど君は分かったようだね。僕達から説明しても良いんだけど長くなりそうだから説明してあげて貰えるかい?」
「なんとなく、こんな感じだろうな程度だけどな」
「それでいいさ」
そして、僕に対してサンが予測を交えて説明してくれた。
「呪いに掛けられてショコラさんがおじさんにされたと言うのは嘘だ。それなりに強力な幻術だけどな?ショコラさんがレトさんにチョコを渡したいけど身分差があって親にバレたら面倒。だからお前達の娘に呪いを掛けた。お前達の娘がチョコを作って持ってきたら呪いを解いてやると家族の前で伝える。そうすれば、チョコをショコラさんに持ってきて貰う大義名分を作り出す事が出来る。こんな所かな?」
「うん。正解!大体そんな感じだよ」
なるほどね。身分違いの恋ってのは面倒で難しい話なんだねぇ‥‥
「ごめんなさい!優しいあなた達を騙してしまいました。去年までは定期的にチョコレート作成の素材が手に入ってはいたのですが‥‥急に素材が手に入らなくなったので異界人の探求者の人達に手伝って貰う事にしたのですが‥‥あなた達2人と村を守ってくれた3人組以外は来てくれませんでした‥‥」
「そうなんですか‥‥なるほど‥‥とりあえずは呪いというのが嘘だったのは驚きましたが何事もなくて良かったです」
「そう言って貰えると助かります」
「では、依頼も達成する事が出来たので僕達はそろそろ帰りますね。いつしかあなた達が結ばれたら僕達も手伝って良かったと思えるので頑張ってくださいね!」
「応援してるぜ?ショコラさん、レト」
僕達は小屋を外に出て小屋を後にした。
〔期間限定クエスト:呪われた娘を救え!をクリアしました。 報酬:フォンド村への移動券 1万Gを獲得〕
〔元の場所に戻りますか?はい/いいえ〕
元の場所に戻るかを聞かれた。なので、僕達ははいを選択して元の場所であるアンファング時計塔の前に戻ってきた。
「やっとクエスト終わったね。いろんな事あったけど楽しかった。また、来年もバレンタインのイベントもフォンド村なのかなぁ?」
「どうなんだろうな‥‥まだ、あの2人の関係が改善された訳じゃ無いからな。来年はあの続きが始まるんじゃないか?来年になれば分かるさ」
「そうだね。あ、忘れてた」
僕は、カカオトレント討伐の時にやらかした事についてサンへとお説教すると決めてたのを思い出した。
「どうしたんだ?何を忘れてたんだ?」
「ん?サンへのお説教かな?」
僕がそう言うと‥‥
「おっと、この後用事があったんだ。じゃ、またな~」
サンは逃げるようにしてログアウトしていった。
「あ、ログアウトで逃げられた‥‥」
現実世界でお説教するつもりは無い。だけど、次会った時に文句は言わせて貰おう。
ああ。そうだ。アーシェはまだ、遊んでるのかな?まあ、いつもの事だから気にしてても仕方無い、か。そろそろログアウトしなきゃ‥‥そろそろお昼時だろうからね。
サン「危ない危ない‥‥なんとかログアウトして逃げれた‥‥前、真也に説教された時は1時間以上正座させられて怒られたからな‥‥あれはもう嫌だ‥‥用事あるって言ってログアウトしたし、真也がいつまでいるか分からないUSOには戻れないからな‥‥昼飯食ったら夜まで寝るか」
作者からのコメント
真也君が、ログアウトしてから次の日までの話は想像に任せます。流石にこれ以上書いたら本編に戻れるのが何時になるか分からないので。