太陽のようなキミ
初投稿です。
バットエンドですが楽しんでくれると嬉しい。
月が、綺麗な夜だった。
太陽のような君が、いつもの笑顔を消して呟いた。
「……………」
今でも鮮明に覚えている、6年前の、あの日のことだ。
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「あたしね、お貴族様に買われるんだって。」
「え…?」
幼い頃から孤児院で一緒に過ごして来たキミが、キミにしては珍しく神妙な面持ちで言った。
冗談だと、思いたかった。
でもこちらを見つめてくるキミは相変わらず真剣な顔をして、いや、でも、少し違う。
これからの人生の諦め、そして哀しみと怒りを押し殺したような無表情で、僕を見ていた。
何も言えなかった。
その時に初めて、もう無邪気に遊んでいた少女のようなキミはどこにも居ない事に気づいた。
成熟したキミの孤児院の中でも輝いたその明るさは、笑顔は、美貌は、有名になるほどだったんだから、きっとその日は近かっただろうに。
僕はこの日々がずっと続いて止まないのだと、愚かにも思っていたのだ。
「だ、だれに…?」
聞いてどうするんだ。という疑問を振り払ってでもこの問いがこぼれ落ちたのは、キミが幸せになれる所かも知れないという無意識の願いだったのかも知れない。
でも、キミの口から告げられた名前は好色で有名な貴族で。
行き場のない感情が、雫となって目からこぼれ落ちた。
もう、何も言えなかった。
ただただ、震えるキミの手を握った。
痛いくらいに握り返したキミは、酷く泣きそうな顔をしていた。
僕達は、孤児だ。
ここまで育ててくれた職員に感謝こそすれど、怒る理由はない。
………分かってるんだ、こんな小さな孤児院がお貴族様に逆らうなんてできやしないことは。
ーーーーでも。でも!!!
何でキミなんだ!僕の世界で1番大切な人だったのに!大切な人なのに!
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月が綺麗な夜だった。
最後の夜、太陽のようなキミはいつもの笑顔を消して呟いた。
「大好きだったよ。」
今でも鮮明に覚えている。キミが死んだ、6年前のあの日のことだ。