9話:地下三階
「これ、全部あんたがやったのか」
「まあな」
「本当にE級なのか……?」
「今はな」
キャンプ地で、無事だった探索士が次々ヴラド達の側にやってくる。
「あんたは英雄だよ……俺はもう死ぬかと……」
「ありがとう……! ありがとう!」
「困ったことがあったら何でも言ってくれ!」
彼らは口々を感謝述べるが、ヴラドは鷹揚に頷くのみだ。
「ふ、人助けも悪くない」
「その範囲を超えた偉業だけどね……一人でアヴァドンの群れを全滅させるなんて……A級どこかS級探索士にしか出来ないことだよ」
ジェーンの言葉に、ティナがコクコクと頷いた。
「まあ、とにかくキャンプ地が無事で良かった。さて、宿屋に泊まるか」
「う、うん!」
「それより、あんた……このアビスクリスタルはどうする気だい?」
そこら中に落ちているクリスタルを見て、ジェーンがそう疑問を投げかけるが、ヴラドの返事はシンプルだった。
「適当に拾って、あとはこのキャンプ地のみんなで分けよう。復興や怪我人の治療に金もいるだろ」
その言葉に、探索士達が沸き立った。その顔には先ほどまであった絶望は消えている。
「は? あんた……正気?」
「無論。金は流してこそ意味がある」
「流石ですヴラド様」
ティナが嬉しそうに笑い、そしてキャンプ地全体が明るいムードに包まれた。それだけでヴラドには十分だった。
こうして、地下二階のキャンプ地は予期せぬ災害に合いながらも、すぐに復興を果たしたのだった。そしてそこでは、英雄ヴラドの名前が常に上がったという。
☆☆☆
「さて、いよいよ地下三階か」
「ええ。ここから気を引き締めていかないと。モンスターも強力になっていくわ……ってあんたには無用な心配だったわね」
「そうでもないさ。油断大敵ってやつだな」
「さっそく東部の〝貝殻平原〟に向かいましょうか」
ヴラド達が降り立ったその地は、まるで海の底に潜ったような場所で、極彩色の巨大な珊瑚礁がそこかしこにまるで山のようにそびえていた。
「ここが地下三階……【下層海底】か。何とも風光明媚な場所だなー。あと、日本に長くいすぎたせいか、腹が減る光景だ」
空を大量の魚が泳ぎまわり、タコやイカのような生物が漂っているし、エビカニといった甲殻類ものそのそと歩いている。
「あれを食べようと思うのですか……?」
「美味いだろ、多分」
「どうせ倒したら消えるから、食べるのは無理だけどね」
「残念」
そうして三人は地下三階を進んでいく。途中で幾度となくモンスターに襲われるが全てヴラドが蹴散らしていった。
「ん、あれじゃないか」
そこは珊瑚礁ではなく、巨大な貝殻が点在する平原で、確かに〝貝殻平原〟と呼ぶに相応しい場所だった。
そしてそこには、巨大な貝殻を利用して作られたキャンプ地があった。
「あれがきっとそうですよ! うわー貝殻をくり抜いて作っているんですかね? 凄いなあ」
「今回は、モンスターに襲われている、なんてことはなさそうだな」
「あれが異常事態だったんだよ」
キャンプ地は、探索士と彼らを相手に商売をする商人達で活気に溢れていた。
「さて、では酒場に行くか。ジルバートやらを探そう」
三人が酒場へと向かっていく。しかし――結果として彼らはジルバートを見付けることが出来なかった。
ジルバートどこいった!?
さて本作ですが、毎日更新から少しペースを下げる予定です。のんびりお待ちいただければと思います
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追放された王子が竜王の力で規格外でチートな国作りをするお話です! 良ければ是非読んでみてください!
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ハズレスキルというだけで王家から辺境へと追放された王子はスキル【竜王】の力で規格外の開拓を始める ~今さら戻れと言われても竜の国を作ったので嫌ですし、宣戦布告は部下の竜達が怒り狂うのでやめてください~




