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6話:ノットイェット、カラミティ・ジェーン


「快適快適。ハイヨー! シルバー」


 ヴラドが嬉しそうに両手を動かしながら風を感じていた。


「……あの」

「なにこれ……」


 背後で絶句するティナ、そして紫髪の女性の二人を見て、ヴラドがにやりと笑った。


「どうした。ははーん、さてはこういうのは初めてだな? まあそう緊張するな。慣れれば快適さ。とろとろ歩くよりずっと速いだろ?」

「それは……そうですけど!」

「これはいくらなんでも――速すぎる!!」


 ヴラドの手から伸びた糸状の影が纏わり付き、まるで操り人形のように動き、荒原を爆走する――()()()()()()()()()()()()()()、二人の女性の叫びが響いた。



☆☆☆


 

 遡ること十分ほど。


「あたしは、ジェーン。しがないソロ探索士(シーカー)さ。ランクはD級だけど、それもたまたま同行したパーティが強くてそのおこぼれで上がっただけだよ。普段はこの表層荒原で採掘や狩りを行っているんだけど……運悪くブラッディシザーと遭遇してしまってね」


 そう言って、紫髪の女性――ジェーンがヴラド達に名乗った。良く見ればかなりの美人であり、背が高くスタイルも良いせいで、ヴラドが分かりやすく目尻を下げていた。だがその細い腰にぶら下がっている、とある物を見て――彼は目の色を変えた。


「ちょ、ちょ、ちょ待てよ! それなに!?」

「へ? ああ、これかい? あはは、あんた変わってるね、これに興味を持つなんて」


 そう言って、ジェーンが腰のホルスターから取り出したのは――形は多少歪なものの、それは間違いなく()と呼ばれる類いの形状をしている黒い物体だった。


「これはあたしが開発した探索士向けの新武器さ! 誰もが持っているエーテル力を弾として発射する全く新しいコンセプトの武器で、これが完成すればきっと魔術師や弓使いなんて用無しになること間違いなしだよ! ま、まだ試作段階なんで色々未完成なのだけど――」


 ジェーンがそれを流れるような動作で上へと構えると、銃身が淡く発光した。彼女がためらいなく引き金を引くと――銃声と共に、一発の弾丸が射出される。


「おお……!」


 ヴラドが驚くと同時に――空から、三匹の翼の生えた魚――この階層に生息するモンスターである空魚、が落ちてきた。


 それら全ての胴体に穴が空いており、ヴラドはその三匹が、たった一発の弾丸だけで撃ち抜かれたことに気付いていた。どうやら、射撃の腕前はかなりのもののようだ。


「ま、こんなもんだよ。エーテルの属性を変えればもっと色々できるんだけどね……」

「……す、すげえええええええええええ!? 魔導銃じゃん! イエスカラミティ!?」


 目を子供のようにキラキラさせてヴラドがジェーンに迫る。


「え、え? いえす……なにって?」

「の、ノーカラミティなのか……?」

「いや、よくわかんないけど……イエス?」

「イエス!! 素晴らしい!!」


 拍手するブラドを見て、ジェーンが引き攣った笑みを浮かべながら一歩後ろに引いた。


「むー……ブラド様、近付きすぎです」


 ティナが拗ねたような声で、ヴラドの服の裾を掴んだ。


「おっと……すまない。いやあ俺は、昔からこういう武器に目がなくてね。なけりゃ俺が作ろうとでも思っていたが……まさか既にあるとは。素晴らしいぞ、ジェーン。それは間違いなく()()()()()()()()()

「これの良さが分かるなんてね……大体のやつらが弓やボーガン、魔術があれば十分だって言って、全然理解してくれないのさ」

「ジェーンがそれを一から造り上げたのか? それを知っているのは?」

「そうだよ。あたし一人で開発したから、他には誰もいないと思うけど……」


 その言葉に、ヴラドが真面目な表情で考え込む。


「ヴラド様、どうしたんですか?」

「いや……。なあ、ジェーン。提案がある」

「なんだい?」


 ヴラドが微笑みを浮かべると、右手を差し出した。その笑みは、女性であれば誰もが思わず惚れてしまいそうなほど、魅力的な笑顔だった。


「ジェーン、俺と手を組まないか? その武器の開発を全面的に援助したい。代わりにその技術、そしてお前自身を――()()()()()()()


 その言葉に――ジェーンは顔を真っ赤にして、手をばたつかせた。


「あ、いや! それは嬉しいけど! その!! 独占って!」

「じゃあ決定だな。ティナ、構わないか? 仲間は多い方が良いのだろ?」

「あ、はい! それは構わないのですけど……あの独占って……どどどどどういうことですか!?」

「ん? 優秀な技術者を囲い、援助するのは為政者として当然の義務だろ? 他国に渡すわけにはいくまい」

「あー、そういう意味で……びっくりした」


 ホッと胸をなで下ろしたティナと、真っ赤な顔を手で扇ぐジェーンを見て、ヴラドが笑った。


「まあ積もる話は移動しながら聞こう。そうだ、せっかくだから、これ使うか――〝屍も我が武器となるデッドバットノットエンド〟」


 そうして、ヴラドはブラッディシザーの死体を影で操り――乗り物としたのだった。


 これがのちに、最強のエーテルガンナーと謳われた〝厄災散らす女王(カラミティ・ジェーン)〟とヴラドの出会いとなった。



イエスカラミティ!! 新たな仲間ですね。ジェーンさんは二十代半ばぐらいです。仲間の二つ名は大体ヴラドさんが勝手につけるので、どこかで聞いたことあるものになります。

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ハイファン追放ざまあの新作です! 竜王の力で規格外でチートな国作りをする王道的なお話です! お楽しみください!

ハズレスキルというだけで王家から辺境へと追放された王子はスキル【竜王】の力で規格外の開拓を始める ~今さら戻れと言われても竜の国を作ったので嫌ですし、宣戦布告は部下の竜達が怒り狂うのでやめてください~



興味ある方は是非読んでみてください
― 新着の感想 ―
[一言] とてもおもしろくて是非早く続きが読みたいです! 首を長くして待ってます!
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