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2話:弱点なき世界(日光を除く)


「ふむふむ……ここはアビスガルドという街で、地下には広大なダンジョンが広がっているのか……で、探索士(シーカー)と呼ばれる人達はそこで発掘される資源やアイテムを売って生計を立てている、と。そういうことだよねティナ」

「はい! ヴラディスラウス様は理解が早いですね!」


 少女――ティナ嬉しそうにヴラドへと返事する。


 二人は月明かりが差す、小教会の中にある辛うじて座れる木製のベンチに腰掛けていた。教会っぽい雰囲気で、ヴラドは最初は警戒したが、十字架らしきシンボルはなさそうなので今は安心して座っていられた。


「ヴラドでいい。その名前は長ったらしいから、決めの時にしか名乗らないし」

「はい、ヴラド様!」

「うむうむ……しかし……まさかな」

「ふえ?」

「いや、どちらかと言えばフィクション側の存在である俺が異世界に転移するなんてね……」

「ヴラド様は、異世界からいらしたのですか?」


 ティナが首を小さく傾げた。その仕草が可愛らしくてヴラドはほっこりした。褐色銀髪シスター最高やんって思いながらも、そういえば確認しないといけないことがあると思い出した。


「そうだ、ティナ! とても重要なことなので良く聞いてほしい。そして嘘偽りなく答えて欲しい」


 真剣な表情を浮かべるヴラドを見て、ティナが真面目な顔をして頷いた。


「この世界に……ニンニクと銀と十字架はあるか!? それと日光は!?」

「へ……? えっと……にんに……く? とぎん……じゅうじか……」


 ヴラドの言葉を咀嚼しながらも、ピンと来ていない表情を見て、ヴラドは半ば確信を得ながら、説明し直す。


「ニンニクは香味野菜の一種で、強烈な臭いが特徴だ。こんな形をしている」


 そう言って、ヴラドは彼の能力の一つである【影操作】を行い、手のひらの上に質量のある影で作ったニンニクを作り上げた。


「……玉ねぎ? に似てますけど……すみません私は知らないですし、おそらくこの街にはそんな野菜はないかと」

「次に、銀とは金属の一種だ。ないとすると銀色のことをここで何と表現するんだ……? 君のその綺麗な髪色のことだが」


 ヴラドがそう言うと、ティナが顔を真っ赤にして俯くが、小さく頷いた。


「……あの……銀色は分かりますよ。金属っぽい色ですよね……? 銀って金属が存在するんですか?」

「……ふむ……やはり地球とは色々違うようだ。最後に十字架。二つの棒を交差させたような形だ」


 流石にこれは実際に作ってみせて、というわけにはいかないので何とか口答で説明する。


「要するにこういう形の宗教的象徴ってことですよね?」

「うむ。だがその格好でそれをすると、ちょっと危ないからやめて!」


 シスターが指を十字にしていると、それだけで十字架の効力を得そうでヴラドは直視出来なかった。


「それに関しても少なくともこの大陸にはないと思います。細々した宗教は各種族ごとにありますけど、この大陸でそういったシンボルは見たことありません。最も教徒が多いヘリオス教は太陽のシンボルですし、私が信じる教えであるこの教会の宗派はへカーテ教で、三日月がシンボルですし」


 ティナが嬉しそうに首元から、杖と三日月を合わせたような小さなレリーフのついたペンダントをヴラドへと見せた。


「……勝ったな」

「へ?」

「いや何でもない。しかし、太陽のシンボルか……ってことは日光は当然あるってことか」

「はあ。朝が来れば日は昇りますし……夜になれば沈んで月が出ます」

「そこは一緒か……まあ贅沢は言ってられないか」

「まあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 その言葉に、ヴラドが目を丸くした。


 そうか……その通りだ。ダンジョンなら――日光が届かない。つまり自分にとってそこは……天国じゃないか。


「ティナ。俺は探索士になるぞ。ギルド的なとこで登録するのか?」

「え? あ、はい! 良くご存知で!」

「まあね。うっし、とりあえずこの街で暮らすことにするとして、生計はダンジョンで立てると。完璧じゃないか! 弱点になるものはもはや日光のみ! 素晴らしい世界だ!! 異世界万歳!!」

「あの……ヴラド様」


 遠慮がちに声を掛けてくるティナに、ヴラドは鷹揚に頷いた。


「どうしたティナ。俺は今すこぶる機嫌が良い。良く分からんが君のおかげでこの世界に来れた。この恩義、必ず報いるつもりなので何でも申せ」

「あの……ヴラド様は探索士になるということは、ダンジョンに潜るのですよね?」

「うむ。俺は日光を浴びると死ぬ奇病に罹っていてな。日の下を歩けない俺には丁度良い仕事だ」

「となると、やはり最深部を目指したり?」

 

 最深部が何か分からないが、まあ目標はあった方が良いだろうと思い、ヴラドが答える。


「まあ、どうせなら攻略したいな。ゲーマー魂が疼くし」

「だったら――()()()()()()()()()()()()!!」


 ティナがそう叫んで、頭を下げたのだった。


後ほどでますが、銀の代わりにミスリルと呼ばれる金属があります



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ハイファン追放ざまあの新作です! 竜王の力で規格外でチートな国作りをする王道的なお話です! お楽しみください!

ハズレスキルというだけで王家から辺境へと追放された王子はスキル【竜王】の力で規格外の開拓を始める ~今さら戻れと言われても竜の国を作ったので嫌ですし、宣戦布告は部下の竜達が怒り狂うのでやめてください~



興味ある方は是非読んでみてください
― 新着の感想 ―
[気になる点] ミスリル…。 ファンタジー世界では、銀としての特性よりも、魔法金属としての特性の方が圧倒的に強調されていて、穢れた存在に対して何かしら効果が有るのか?っていうのは、そう言えば聞いた事な…
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