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ボーイ・ミーツ・ヤクザ  作者: 池未裕輝
1/1

1回表

「若はどのチームに掛けます?」

 プロ野球への賭博が世間的に難しくなった昨今、俺らは少年野球チームへと賭博の対象を向けている。ギャンブルが狂おしい程好きな俺はいつも大穴に掛けて楽しんでいる。

 若と呼ばれているが職業はヤクザではない、野球のデータ会社へ努めている。データ会社って何?とよく聞かれるがプロ野球選手が出した成績を細かく算出しファンと言い合いながら成績の裏付けとなるものを楽しむ娯楽を産み出す、これが大まかな概要である。だから職業はヤクザではない、ただ親父が組長なだけである。

 なぜヤクザにならなかったのか親父が組長だと知っている人には聞かれるが、暴力的なことが好きじゃなかったからという容易な答えではない。愛嬌が良く人を脅す事など出来ず顔が優しすぎてヤクザには向かないという、もっともっと容易な答えである。


「じゃあ、この倍率10倍のとこで。」

 周りにいる親父の子分達は意表を突かれた顔をしている。そこは誰も選ばないからである。

「ここはピッチャーもバッターも上手い子1人もいませんよ」

 子分の松崎は秋のチームを見て倍率を決める役割をしている。仕事柄光るものがあるんですか?と聞かれたが

「ただ単純に大穴が好きなだけ。」

 そう答えた。続けて、

「来年の夏、区の大会で優勝するチームを決めて倍率全部一桁増やそう。」

 周りは驚いたがそれは楽しそうとみんな盛り上がった。 エースと4番がすごいレッドファルコンの20倍に100万賭ける者もちらほら。僕は名前も分からない100倍に30万掛けた。


 子分達は騒ぐだけ騒いで各々の自宅に帰った。無性に冬にアイスを食べたくなり公園へと向かう。通り道に公園があるが遊具は何もなくベンチとトイレがあるだけ。

そんな質素な公園に普段聞こえない音が加わると努力の場へと変わる。

アイスを買いベンチに座りながら音をフォームを聴いて見ていた。素振りの音は最悪、バットを振るフォームも最悪。つい口が先走ってしまった。

「もっと下半身に力入れ体全体で打つように大きく振るんだよ少年」

 少し歯向かってきた少年は「じゃお兄さん振って見てよ。」と言うが俺は教える専門だからと逃げた。スポーツ全般下手なことを隠すために。その代わり技術や理論はあるから詐欺師のように言葉で論した。

 「明日の練習で試してみるよ、お兄さん。」

少年は数回素振りをするとバットを担いで家路を急いだ。

 


 賭けは冬が明ける半年後の事。

 監督になるのは夜が明ける翌日の事だった。

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