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その17 何でスキルが不発なの!?


 モンスターを目の前にして、うんともすんとも言わないアルクルミのスキル。

 まさかの対セクハラ自動反撃スキルの不発なのだ。


 火薬が湿っていたのだろうか、奇跡の弾丸切れか、発動する様子がまるで無いのにアルクルミは慌てた。


 パンツが丸出しなのに! モンスターははっきりしっかりと、そのパンツを目に焼き付けているのにスキルが発動しないなんて!


「な、なんで? どうして! こんな所で解除されないでよ! もう一体倒さなきゃいけないのに! ほらちゃんと見てよ! 私パンツ丸出しの丸見えなのよ! ほらしっかりパンツ見て! 私のパンツ見て――!」


 アルクルミは必死だったから良かった、後で自分がこんなセリフを大声で叫んでいたと考えたら余裕で死ねただろう。

 今だって恥ずかしすぎて、このままお肉にされちゃった方がいいんじゃないか、と考えてしまっているくらいなのだ。


 このままならこの恥ずかしいセリフを聞いていた目撃者も皆一網打尽だ、〝お肉に口なし〟なのである。

 アルクルミはいけない考えを打ち消し、必死に原因を突き止めようとした。


 何故発動しないのだろう、自分はスキルを失ったのだろうか、いや違う、よく考えろよく……何故スキルが発動しないのか。

 さっきので奇跡が打ち止めになったとも思えない、十連続スキル発動もあったから連発は可能だし、次のスキルをくり出すまでの時間の制約も無かったはずだ。


 ま、まさか――

 いやいや、まてまてそれは考えたくない……でも――


 パ、パンツじゃダメなの? パンツ以上を求められているの? アルクルミが半泣きになる。


「よし、アルクルミちゃん! 脱ごう!」


 サクサクがとんでもない事を言い出した――!


 何かを掴むような手を前に出し、じりじりと近づくサクサクにアルクルミはおろおろと後ずさる。


「ぱぱっと脱いで怪物仕留めちゃおう! 天井の染みを数えている間に終わるから」


 森の中に天井なんてどこにあるのよ――!


「大丈夫大丈夫、お姉さんに任せておけばいいから。怖くない怖くない」

「こ、怖いよサクサク、そのいやらしそうな手やめてよ、何で目がキラキラに光ってるの」


「今までアルクルミちゃんには遠慮してたんだ、でも非常事態だしもう躊躇する必要なんかないよね! 行くしかない! あのモンスターにはGJを贈りたい!」


 こっちの方が非常事態になってます!

 逃げ出したアルクルミは三秒で捕まった。速攻でサクサクに小脇に抱えられてしまったのだ。


「こ、ここはキスの定位置だし、遠慮したいかな」

「さ、アルクルミちゃん、お仕事の時間ですよ。うーい」

「サクサクはまだ酔ってるよね? 待って待って、それだめ、許して。いやああああああ!」


 アルクルミが酔っ払いに服を引っぺがされそうになった時だ。


「な、なあ、あいつメスなんじゃないか?」

「え?」


 キスチスの言葉によく見ると、カクンとなっている怪物よりも一回り小さくて、胸もあるようだ。

 対セクハラ自動反撃スキルは相手が女性の場合は発動しない――!


 最強スキルにも、まさかの弱点があったのだ。


 まさか自分のスキルにこんな穴があったとは……

 実は今までは、女の子には発動しないからと安心していた部分なのだが、まさかこれが命取りになるとは思わなかったのだ。


 実際に今もサクサクのセクハラにスキルは無反応で、窮地に立っていたところである。

 そのサクサクと言えば、アルクルミの服に手をかけたままで夢の国を訪問中だ、どうやら酔っ払いのスイッチが切れたらしい。


 メスの肉屋型モンスター〝まっどなブッチャー〟は、肉切り包丁とハンマーを握り締めてゆっくりと近づいてくる。


 どうしたらいい? どうすればいい? サクサク起きてよ、サクサク!

 もうダメじゃん――!


 今度ばかりは人生の終焉なのか。

 自分のスキルが絶たれた今、もはや助かる道は無い。完全に終了したのである。


 もう奇跡はさすがに起こらない。

 アルクルミが諦めかけた時だ、キスチスがおかしな事を言いはじめた。


「全く、お父さんダメじゃないの。これだからハゲ親父は困るのよ、頭の毛を毟ってやろうかしら。肉屋の娘も本当に疲れるわ」


「キスは一体何を口走っているの? 絶望でとうとう頭やっちゃった?」

「ち、ちげーよ! こいつの心を読んだんだよ!」


 はあ、え? 肉屋の娘? この子さっきの肉屋型モンスターの娘なの?


「カーニバルをカンニバルと間違えて喜び勇んでこんな所まで来ちゃって、マヌケ親父もたいがいにして欲しいわよ。こんな遠くまで連れ戻しに追いかけてくるのも、もー大変、本当に全く全くだわよ!」


 アルクルミは恐る恐る目の前のモンスターに話しかけてみた。


「あ、あの、私たちも肉屋の娘なんですけど、お肉屋協会やってます。あなたのお父さんボッコボコのガッタガタにしちゃってごめんなさい」

「あらやだ、あなたたちも肉屋の娘なの? 同業者を襲うなんてこちらこそごめんなさい。そのノビてるオッサンはきちんと回収して帰りますからご心配なく」


 モンスターの娘はそう言って(キスチスの代弁)、ノビた父親モンスターの禿げ頭をスパーンとはたくと、そのまま引きずって帰って行ったのである。

 どこの世界も肉屋の娘は、肉屋の親父に手を焼かせられるのだ。


「あいつ、お肉屋協会には自分も参加するから、適当に混ぜといてくれってさ……」

「め、名簿を作らないとね……」


「は! 寝ている間に怪物がいなくなっているのです! ネムネム教は最強なのですー!」


 飛び起きたミカルミカが叫んでいる。

 もちろん『おはようございますお母さん』『お母さんではありません』のお約束をきっちりとこなした後だ。


 サクサクとマリースマルに回復薬を飲ませ、皆に地面に埋まった銀髪の少女を掘り出してもらった。

 その間にアルクルミは裁縫道具をポーチから取り出すと、チクチクとスカートを縫った。いくらなんでもパンツ丸出しで町に帰ったら死んでしまう。


 終わってみれば全員無事。

 とりあえず適当に出てきた〝やんばるトントン〟を適当に倒して適当にお肉にすると、皆でカーニバルの町へと帰還だ。


「俺たちゃ冒険者♪ 山越え谷越えどこまでもー♪」


「アルがそれ歌うの珍しいな」

「うん、今日はちょっと気分がいいからね」


 犠牲者は出なかった、生きてるって素晴らしい!

 カーニバルの町、ムラジルの門はすぐそこだ。


 次回 「お祭りの終わり」


 アルクルミ、またチャンスを逃す

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