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その3 パレードに参加しよう!


「カーニバルのパレードに参加するって?」


 どうやらサクサクは昨晩のうちに、メンバー全員のパレード参加登録を済ませていたようである。

 なんという手際の良さだ。そういえば昨日の宿探し中にサクサクが、いくつかの張り紙やパンフレットをチェックしていたっけ……


 アルクルミは思い出す、昨夜サクサクはとある理由で酔っていなかったのだ。理由も何も手持ちの酒が無かっただけだが。

 しまった、さっさと酒ビンをその手に握らせてしまえばよかったのである。


 準備万端のサクサクは、なんと皆の衣装までちゃっかりと借りていた。

 しかしサクサクが借りてきたパレード用衣装が、これまたとんでもない代物だった。


 露出面積がとんでもない事になっている!

 お腹も背中も足も丸出しなのだ。


「さ、さすがにこれはちょっと無理かもしれない。プールや海ならまだしも、町の中でこの露出度はちょっと……」


「大丈夫! 心配ナッシング! カーニバルのパレードなんてビッグウェーブが来てるようなもんだから、みんなで波に乗っちゃおう! 海と同じだネ!」


 サクサクが何を言っているのかわからない……


 しかしみのりんがやると言い出した。

 奥ゆかしいお嬢様の参加発言に、アルクルミはびっくりしてしまった。


 もしかして彼女は今、変わろうとしているのかも知れない。前に出ようとしない性格を解き放って、世界に羽ばたこうとしているのかも知れない。

 そんな少女の決意を、アルクルミが邪魔できるわけがないのだ。


 それに全身笑顔のサクサクをガッカリさせるのも忍びないので、結局それを着て踊ることになった。


「おいこらサクサク! 私のこれなんだ! ビキニパンツしか無いぞ」

「あーしまった、男の子用の衣装を借りてきちゃった、失敗失敗」


 もう、めんどくさいなあキスは。せっかくのみのりんへの感動が薄れちゃうじゃないの。男の子のフリしてトップレスで踊ってしまえばいいのに、どーせバレないって。


「無茶苦茶言うなよアル、さすがにバレるわ!」


 部屋の中は誰がトップレスで踊るか、という議論で一時騒然としたが、身体の具合がよくないらしいタンポポが普段着で参加という事で落ち着いた。


 みのりんが危うくトップレスで踊るという案まで出たほどだ。

 アルクルミが大慌てで止めたのは言うまでもない。



 露出度の高い衣装は恥ずかしかったが、いざ会場に着いてみると、自分たちの衣装など可愛いくらいに思える過激な衣装を着たダンサーたちで溢れ返っていて、アルクルミたちなんて完全に埋もれている。

 それでふっきれた。


 アルクルミはカレンと一緒に踊った。こうなったらもう楽しんだもの勝ちなのだ。

 昔商店街で小さなダンスカーニバルをやった事があり、その時も楽しく踊っていたのを思い出した。


 キスチスはめちゃくちゃに暴れている、ヤケクソになって踊っているのだ。

 激しい踊りで観客たちに、自分の恥ずかしい姿を一瞬たりとも見せないようにしているのか。


「でもかえって目立ってるよねキスは……」


 サクサクはキレのいい踊りを踊っている、彼女は異世界ではダンスもやってたらしいのだ。何でも挑戦してみるのは実にサクサクらしいと思った。


 タンポポは不思議な踊りだったが、ゆったりとして規則正しい舞を舞っているようだ。

 身体の調子が悪いみたいだから押さえているのだろう、それでも悠然とした舞は様になっている。


 素晴らしかったのはみのりんだ、この美少女は見た事も無いような舞で周りを圧倒したのだ。


 無のような静かな表情で踊る青い髪の少女。

 静と動を表現したらしいそのパフォーマンスはやがて、笑顔の躍動感へと変化して、最後は両腕を上げて高くジャンプで締めた。


「天使の舞だ」


 アルクルミは青い天使に見とれてしまった。完璧である。

 周りの観客たちの拍手喝采も当たり前の話だった。



 パレードが終った後は表彰式をやるらしい。何でもチーム対抗戦だったみたいで、クイーンも決めるというのである。


「これって対戦形式だったんだね、全然知らないで踊ってたわよ。まあ、私たちは関係ないよねキス」

「あ、ああ。はあ、はあ、はあはあ」


「ああ、やだやだ。過激な衣装で興奮した男の子みたいになってるよキス」

「はあはあ、う、うるさい。はあはあ」


「キスはヤケクソになって滅茶苦茶に踊るから疲れるんだよ。もっと楽しめばよかったのに、完全に魚のモンスターと格闘していた時のアレだったよ」

「つ、疲れた……今日は早く宿に帰りたい」


 司会者らしいのがお立ち台に上がったのでそちらを見ると、優勝者の発表が始まるらしい。


「優勝チームは! サクサク少女隊の皆さんです! 優勝おめでとう!」


「へー、優勝はサクサク少女隊ってチームだって、凄いね。どんな子たちなんだろう」


 そう言ってアルクルミの動きが止まる。笑顔のまま顔の筋肉が固まったようだ。


「ねえキス、聞きたい事があるんだけど、私たちのチーム名なんだか知ってる?」

「チーム名? 知らないよ、そもそも名前なんかあったのか?」


「まさか、違うよねえ」


 とお立ち台を見ると、サクサクが元気にジャンプをしていたのでキスチスと二人でコケそうになる。

 向こうではみのりんがコケそうになっていて、さらにその向こうではタンポポがコケていた。


「ヤッホー! ほら皆もおいで!」


 サクサクが召還の呪文を唱えている。


 何かの間違いだろう。

 アルクルミとキスチスが、目を擦ってもう一度お立ち台を確認する。


 サクサクが元気にジャンプしていた。


 次回 「感動に包まれたお立ち台」


 アルクルミ、キスチスにハンカチで鼻をかまれる

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