その2 やって来ましたカーニバル!
馬車に揺られて三日間、やってきたのはカーニバルの町ムラジルである。
今回のメンバーは、アルクルミ、キスチス、サクサク、カレン、みのりん、タンポポ、知らん男の合計七名だ。
前回と何も変わらない、犬が参加していないだけである。付いて来ている男に関しては、今回もアルクルミは別に覚える必要もないだろうと思った。
余計な労力は、脳に負担がかかるだけなのだ。
父親が何か言っていたようだが、母親から四百ゴールドのお小遣いも入手したし、目一杯お祭りを楽しもうとアルクルミは考えている。
カーニバルの町は楽しい事が一杯に違いないのだ、間違ってもモンスターを討伐に行くなんて事があるわけが無いのだ。
と思っていた矢先に、馬車の旅は途中でポヨンポヨンと跳ねる〝くさくさスライム〟に襲われた。
「違う違うこれは違う、楽しい旅でモンスター討伐なんて事があるわけがないんだから」
アルクルミはモンスター登場で馬車が急停止した際に、吹っ飛ばされてスカートの中に頭を突っ込んできた相席のオジサンを討伐しながら否定する。
また誰かが窓から射出されて飛んで行ったようだが気にしない。
願いが通じたのか、カレンたち冒険者が同行しているのでアルクルミの出番もなく、スライム襲撃は無事に解決した。
くさくさスライムは髪の毛や布を溶かすという凶悪なモンスターなので、もしもセクハラ反撃のアルクルミの出番があったとしたなら、その時はとんでもない事態になっていた事だろう。
皆が尻込みする中みのりんなんて、そんな恐ろしいスライムに真っ先に立ち向かって行ったのだ、冒険者の敢闘精神はさすがである。
さすが最強の戦士だ。可愛いのにかっこいい。
アルクルミは尊敬の眼差しで彼女を見つめた。
結局服を溶かす悪のスライムは、恐ろしい業火に焼かれて撃退された。
女の子の大切な髪や服を溶かそうと、よからぬ悪事を企むとああなるのである。
あんな恐ろしいスライムを、魔族のキルギルスちゃんたちは練って遊んでるんだよね……
まあ、遊んでるのか仕事なのかよくわからないけど。
ともあれ一向は無事に目的地の町に着いた。とんでもない事態になるのは実はここからなのだ。
町に到着したのは夕方、今日は宿を探して寝るだけだ。
ムラジルの町はカーニバル一色で、宿を探すのに難航したがなんとか部屋の確保に成功した。
やはり温泉旅行の時と同じく、女子六名でベッドが三つしか無い部屋だったが、さすがに二回目ともなればもう慣れたものである。
前回アルクルミはキスチスと一緒のベッドで寝たので、今回もそうなるかと思っていたらサクサクの提案で寝る相棒を変える事になった。
サクサクへの人身御供はキスチスに決定。
キスチスは異議を唱えているが、なにしろサクサク本人の指名なのだから仕方無い。
そういう役回りなのね、キス……
アルクルミはそっとキスチスに合掌する。この世の中には、人の力ではどうする事もできない事態が存在するのを彼女は知っている。
さて、自分の相棒は? という事になるのだが、アルクルミの狙いは当然青い髪のふわふわの美少女みのりんである。
タンポポはあまりよく知らないし、幼馴染のカレンは幼い頃から何度もベッドで重なるように寝ていた間柄なので全く新鮮味に欠ける。
「じゃ私はみのりんと寝るわねカレン」
速攻でツバつけた。
奥ゆかしいみのりんは『幼馴染同士で寝るんじゃないの?』と遠慮しているところがこれまた可愛い。
「みのりん、今夜はよろしくお願いします」
ベッドの上で挨拶すると、みのりんは『こんなボクでよければ……』と返してくる。
なんて謙遜を! この中で最高なのが自分だって全然思ってないこの謙虚さ、ボクっ娘最高――
みのりんは嬉しそうに笑った、とアルクルミは思っている。
一緒のベッドでみのりんは緊張していたようだが、アルクルミが抱きつくとその瞬間に寝た。
馬車による長旅でよほど疲れていたのだろう。まるで気絶でもしたかのように、カクンと眠りに落ちていったのだ。
魂が抜けたみたいな寝顔がこれまた可愛い。
冒険者は眠れる時に全力で死んだように寝るのが鉄則なのだろう。
それにしても、みのりんの抱き心地は完璧だった。
今回もクマ太郎には留守番をしてきてもらったのだが、温泉旅行での代わりのキスチスよりもふわふわしていて、これならゆっくり眠れそうである。
その可愛いふわふわのお肉に顔を埋める。
女の子の胸でもお肉と認識してしまうのは、肉屋の悪い性だわ……いつの間にかお肉の量を測ってるし。
そんな自分に苦笑を浮かべているうちに、アルクルミも眠りに落ちていった。最高の夜だった。
カーニバル旅行の初日はこんな感じで平和に過ぎていったのである。
次の日も平和に過ごせれば良かったのだが……そうは問屋が卸さないのであった。
卸さない問屋は、そう、サクサクである。
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「おはよう諸君! さあカーニバルだ!」
寝相の悪いサクサクに蹴飛ばされて、ベッドとベッドの隙間に挟まっていたキスチスをアルクルミが引っ張り出そうとしていた時だ。
突然飛び起きたサクサクのその大声の挨拶で、アルクルミとカレンがベッドから落ちた。
途中で手を離した事でキスチスなんて、頭からベッドの隙間に突入してお尻だけが出ている状態だ。
本当に迷惑な話である。
みのりんは敵の襲撃だと思ったのだろうか、即座に回転しながら廊下に出て警戒任務についたようだ。
帰ってきた時は飴をコリコリと口に頬張って、脳への糖分補給も怠らない。さすがである。
「せっかくのカーニバルだし、みんなでチームを組んでパレードに参加しよう!」
サクサクが何か言っている、ここからがサクサク劇場の始まりなのである。
「はい?」
全員が首をかしげて聞き直したのは言うまでもない。
少女たちが首をかしげるシーンは可愛いものである。
次回 「パレードに参加しよう!」
アルクルミ、天使の舞を目撃する




