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その6 屋台の準備が完了したよ


「コロッケパン下さいな♪」


「サクサク、ちょっと手伝って」


 ちょうどやって来たサクサクを伴ってパン屋へ向かう。


「朝ご飯のパンを買うの? 因みにこのパン屋さんには、私が求めているコロッケパンは売ってないよ」


「どのパンがコロッケパンに合っているのか教えてサクサク」

「お、作る気だね! コッペパンがいいかなあ」


「いらっしゃいアルクルミちゃん」


 そう言ってお尻を触ってきたパン屋の店主の腕にしがみ付いて倒して、とりあえずスキルで仕留める。

 まずは朝の挨拶である。


「腕ひしぎ十字固めだね!」

「あ、はい」


「いやーありがとうアルクルミちゃん、パンの仕込みで疲れて動かなかった手が、ほらこんなに軽くなったよ」


 幸せの笑顔で腕をぶんぶん振るパン屋の店主と交渉を開始だ。

 この交渉に、アルクルミのお小遣いが、肉屋とパン屋の今日の売り上げがかかっているのである。


「オジサン、商売のお話があるのです」

「なんだい、アルクルミちゃんのお尻の為ならオジサン何でも話を聞くよ」


「パン屋の奥さん、商売のお話があるのです」


 肉屋の娘は相談相手を、隣にいた奥さんへと切り替えた。


 アルクルミが提示した計画とは。

 パン屋がコッペパンを、肉屋がコロッケをそれぞれ提出しあって、合同でコロッケパンの臨時屋台を出して、観光客に売りまくろうという壮大な計画なのだ。


 単品の揚げ物だけならいざ知らず、パンに近い物を売るとなると互いのテリトリーは侵さずに、仁義を守ろうと肉屋の娘は考えたのだ


 それに大量のパンが必要になる為、店内にある出来上がったパンの買い付けだけではどうしようもない、パン屋の協力が必要不可欠だ。


「いいわね、二店舗合同で儲けるのね。私は乗った」


 パン屋の奥さんは乗り気だ。因みにアルクルミに悪さをした旦那の上にも乗って、鼻を捻じ曲げて処刑執行中である。


「労働力に魚屋さんも噛んでるから、実質三店舗になりますね」


「よーし、コロッケパンの為、張り切って頑張ろう!」

「おー!」


 音頭を取ったのは、パン屋との交渉で忘れられていたサクサクだ。


「適度に顔をつっこんで出番と存在感のアピールは、常日頃から怠らないのだよ」



 午前中に準備は急ピッチで進められた。


 パン屋が総出でパンを焼きまくり、魚屋の娘がジャガイモを潰す。

 肉屋の娘が他の具を調理して練りこんだ物を、肉屋の奥さんがコロッケとして揚げる。


 サクサクはトンカチと釘を渡されて屋台の準備をして、お昼ちょっと過ぎにはコロッケパンの屋台が完成した


 キルギルスはそんな様子を見学してはしゃいでいた。


 終わった頃には、力尽きたパン屋の店主と魚屋の娘が白くなって転がっていたのであった。


 売り出す前に皆で試食会をしたが、このコロッケパンがこれまた最高の仕上がりである。


 ふわふわのパンに、ソースがたっぷりかけられたサクサクホクホクのコロッケが挟まって、ふわっサクっホクっの最強一品が出来上がったのだ。


「あら、美味しいわね奥さん」

「これ、これからも両店舗で売れそうね」


「どう? サクサク。これコロッケパンで合ってる?」

「これがコロッケパンじゃなかったら、この世界にはコロッケパンは存在しないというくらいの仕上がりだよ、完璧。さすがはアルクルミちゃん」


「ああ、わたひはこれを作っていたのか、うん、悪くない、おいひい」


 白くなって倒れたままのキスチスが、口から魂のようなものとコロッケパンをはみ出させて呻いている。


「んあああああああああ」


 一瞬で口の中にコロッケパンを、丸ごと放り込んだキルギルスも満足したようだ。



 さあ、ここからが本番である、準備で力尽きている場合ではないのだ。

 早速大通りに屋台が設置される。


 アルクルミはもう一つ準備しなくてはいけない事があった。

 早速キスチスを店に連れて帰ると、自分の部屋に駆け込んだ。店にはサクサクもついて来た。


「おお! 可愛い戦闘服だね!」

「戦闘服じゃなくて、店員さんの制服だよサクサク」


 二階から下りてきたアルクルミは、昨日完成させたフリフリが沢山付いた、可愛い店員服を着ていたのだ。

 ついにこれを着て、何かを販売する時がやってきたのだ!


 肉屋での装備は却下されたが、パンを売るのなら完璧のはずなのだ。

 可愛い服でパンを売る。何の違和感もないのである。


「似合うかな?」

「アルクルミちゃんイケてる! バッチグー!」


「ば、ばっちなに? キスは?」

「うんうん可愛いと思うよ」


「そっか、よかった。じゃこれがキスの分ね」

「は?」


「三日前に完成した試作第一号だけど?」

「プロトタイプだね! 頭の記号は〝Y〟かな〝X〟かな」

「だけど? じゃないよ。私はそんなひらっひらのついた服なんか着ないからな」


「えーいいじゃん、一緒に着ようよ」

「お断りだ! そんな足がむき出しのスカートなんか穿けるか」


 断固お断りの構えのキスチス。

 今穿いてるショートパンツも足が丸出しじゃないのよ、とつっこみたかったがめんどくさいのでやめてサクサクを見る。


 一つ年上の十七歳(だとアルクルミが思っている)サクサクでもいいのではないだろうか。


「え、えーとさすがに足が出すぎかな。膝は年齢が出るし、私普段は膝小僧が出ないロングスカート穿いてるし。冷えるのはちょっと」


「えー? サクサクもなの? 困ったなあ、お母さんじゃさすがに無理があるし、これ少女しか着れないよ」


「仕方が無い、少女しか似合わない服と知ったからには、この少女戦士サクサクちゃんが着てあげるよ! オーバーニーソックス……あるかな?」


 フリフリの店員服を着たサクサクは意外と似合っていて、本人も満足したようだ。


 アルクルミは白と可愛い神様の保護を受けたピンクを基調とした、リボンやフリルが沢山付いた店員服。

 サクサクは白と水色を基調とした、これまたリボンやフリルが付いて、足には黒いオーバーニーソックスを穿いている。


「うん、絶対領域も完璧に仕上がった。よし出撃しようか諸君」

「ぜったい、な、なに?」


 三人は店から出て、屋台を設置した大通りへと向かう。


 可愛い店員が歩く姿に周りの観光客から歓声があがる。


 その可愛い店員さんの思考は以下の通りである。


 アルクルミ店員(今日は売って売って売りまくるぞー! 売り上げアップはお小遣いアップ!)


 サクサク店員(コロッケパンでお酒飲めるー!)



 この時アルクルミは、この後町が滅びそうになる事態に陥るとは、全く想像すらしていなかったのだ。


 次回 「コロッケパン販売開始!」


 コロッケパンが飛ぶように売れる、そしてヤツも飛ぶ

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