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その4 さあこい! カエル


 キスチスがカエルのモンスターを釣り上げた。


「やっぱりモンスターじゃないの! どうするのよこれ! 何で池から出てくるのよ、この人そこの洞窟が住みかの〝とんねるケロケロ〟でしょ?」

 

「ちらっとこいつの心が見えたけど、洞窟からこの池が繋がってるみたいだ」


「凄いよキス、それって大発見じゃないの。キスのスキルが役に立ったの初めて見た! って食べられてる、キス食べられてる!」


 アルクルミが上半身をカエルにぱっくりといかれたキスチスを見て、大慌てで引っ張り出した。


「普段役立たずみたいに言うなよ、否定はしないけど!」

「食べられた直後に気にする事じゃないよね」


 キスチスを後ろにやり、カエルモンスターと対峙するアルクルミ。


『ゲロゲロオオオオ』

「ひい」


 相手はやはり大きい、嫌いな上にでっかい熊くらいあるカエルなのだ。

 これを今から倒すのである。


 しかしアルクルミには勝算があった。カエルは楽だ、何しろ放っておけば勝手に『ベロオオオ』してくれるからだ。

 そうなったら後はスキルが自動で仕留めてくれる。彼女はオートメーション化に成功しているのである。


「さ、さあ来い!」


『プイ』


 そんな気分じゃなかったのか、カエルはそっぽを向いた。


 ちょっとムっとしたアルクルミだったが、気を取り直してカエルの前に再び立った。

 カエルはアルクルミを上から下までじっと眺めている。


 さてはいよいよ来る気だな。


「こ、今度こそ来い!」


『プイ』


 いまいち考えがまとまらなかったのか、カエルはまたそっぽを向いた。


『ベロオオオオ』


「うわっこっち来たぞ!」


『ベロオオオ』されたのはキスチスだった。

 その様子を無表情で眺めていたアルクルミだったが。


「もういい諦めた。よく考えてみたら、カエルに『ベロオオオ』されようと思うなんて狂気の沙汰だったわ。きっと頭がどうかしてたのね、もう帰る」


 べっちょべちょのキスチスを引っ張って帰ろうとした時である。

 アルクルミの後ろを足から首筋まで『ベロオオオオ』といかれたのだ。


 瞬時にスキルが発動。

 アルクルミはジャンプするとカエルのバックを取り、そのままバックドロップで仕留めた。


 カクンとなったカエルの前でべちょべちょのアルクルミは涙目だ。


「ど、どうして帰ろうとしたら来たのよ」

「アルのカエル(帰る)にカエルが反応した」


「スキルでカエルの気持ちを読んだの?」

「いや、私の駄洒落だけど、面白かっただろ?」


「くしゅん」

「はっくしょん」


 この寒い駄洒落でアルクルミ、彼女の冷たい目でキスチスがそれぞれ風邪をひきそうになったのである。




 カエルをお肉に解体して袋に詰めると、もうこんな池には用は無い。


 もうちょっと釣りをしたそうなキスチスを連れて撤収だ。二人ともカエルにベロンされてぐちょぐちょなのだ。


 二人は町に向かって草原を歩き始めた。


「早く帰ってお風呂に入りたい」


「川でもいいよな」

「私は嫌です」


「なんだよアル。昔は一緒に川で大暴れしたじゃないか」


「昔は昔。それに大暴れした記憶ないし。キスとカレンが川から橋に向かって水かけて、何故か私だけが怒られたのを思い出した、たった今思い出した」


 酷い目に遭った昔を思い出してガックリしていると、向こうの方で何者かが歩いているのが見えた。大きさは人では無い、モンスターだ。


 それはこの草原をテリトリーとする牛型モンスターの〝のっぱらモーモー〟である。


 こんな所で凶暴なモンスターに出会うとはついていない。

 だが、そのモンスターには何だか不思議な感じがあった。


「あれのっぱらモーモーよね。でもなんだか違う」

「そうなんだよ、どこか変なんだよ」


 少し近くなってその違和感に二人は気付いた、なんとモンスターの上に人が乗っているのだ。


「ど、どうしようキス、あれ女の子だよね。モンスターに女の子が攫われてるよ! た、助けなきゃ」


「助けるってどうやって、私は今回釣り道具しか持って来てないぞ」


 二人は互いに見詰め合って草原にしゃがんだ。作戦会議である。


「キスが牛に突撃して吹っ飛ばされている間に女の子を助けよう」

「それだと私が助からない、残念」


「それじゃ、キスが私のお尻を触ってスキルで牛に向かってぶっ飛ばすから、その間に女の子を助けよう」

「やっぱり私が助からない。何で私が犠牲になる方向なんだ」


「橋に水かけ事件で私が犠牲になったんだから、今度はキスの番でしょ。それでおあいこだよね」


「ちょっと待って、おあいこの条件が厳しすぎる。今度ケーキ奢るからあの時の事は忘れてくれ」


「カレンがバイトしてるカフェのやつだよ?」

「そ、それでいいよ」


「女の子はどうしよう、カレンを呼びに行く?」

「間に合わないよ。というより、あれ本当に攫われてるのか?」


 二人でもう一回モンスターを見る。違和感の元はもう一つあったのだ。


 その牛は何故か荷車を引いていたのだ。モンスターに跨っているのはネギを担いだ青い髪の女の子である。


「なあ、あのシーンどこかで見た事ないか、今朝辺りが怪しいんだが」

「怪しいも何も、今朝二人で見に行った絵画のシーンじゃないの、行ってみよう」


 二人で恐々近づいていくと、どこから見ても牛に荷車を引かせている牧歌的なシーンでしかない。


 だがアルクルミとキスチスが近づくにつれ、のんびりと上に乗っていた少女がオロオロと急に挙動不審になった。

 二人を見て、危険なモンスターが近づいてくる! あわわ。な状態になっているのだ。


 一刻も早く急接近してあげて、私たちがただの女の子だとあの少女に知らせてあげなければ。

 使命に燃えたアルクルミは少女に駆けて行った。


 ただ少女は彼女たちが近づけば近づくほどに取り乱している気がした。


 次回 「青い髪の少女みのりん」


 アルクルミ、美少女に感動する

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