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その3 四人パーティでお肉を目指そう!


 町の門でパーティの宣言をして四人はパーティ仲間となった。


 門で互いの名前を呼び仲間宣言をする事で、青い光がメンバーを包み込みパーティが成立するのだ。

 これはパーティセレモニーと呼ばれていた。


 名前を呼んで友達宣言をするのは少し恥ずかしいのだが、アルクルミはこの青い光がとても好きで、子供の頃はよく冒険者のセレモニーを見物に出かけたものだった。


 オジサン同士が『僕たちは大切なお友達だ!』と、顔を真っ赤にして宣言する姿がたまらなく好きだった。


 いつもはキスチスと二人組だったが、今回は四人組なのでいつもより頼もしさが跳ね上がっている。

 因みに謎のオジサンは〝タンポ男〟君という名前だった。


 パーティは森に向かって草原を進んでいる。先頭はカレン、そしてみのりん、アルクルミ、謎のオジサンの順だ。

 アルクルミの前を歩くみのりんの青い髪を、草原の風が舞い上がらせる。


 その度にキラキラした美少女攻撃でアルクルミは『ひい』っとなってしまうのだ。

 転生者って凄すぎる、転生オーラが半端じゃない。


 転生オーラって何だろう? と考えながらも、彼女は自分にもいつか転生者の仲間ができたらいいのにと思った。


 まあ、目の前のみのりんと仲良くなってしまえばいいだけなのだが、町の肉屋の娘が、こんなお嬢様とお近づきになるのもはばかれる気がした。


「この前さ、草原のモンスター〝のっぱらモーモー〟を相手にして酷い目にあったから、今日は森の〝やんばるトントン〟でいいよね、アル」


 先頭を歩くカレンが振り返ってアルクルミに確認する。


「それでいいよ」


 正直に言ってしまうと、お肉なら何でもいいのである。


 答えた彼女を、同じくみのりんが振り向いて見ている。

 吸い込まれそうなグリーンアイがアルクルミを見ている、その美少女攻撃にまたもや『ひい』となった。


「タンポ男君もそれでいいよね」


 カレンが最後尾の謎のオジサンにも尋ねる。


「異論はございません!」


 オジサンはカレンに対しては、何故かガチガチに緊張しているように見えた。


 もしかしてこの人カレンに頭が上がらない?


 アルクルミにはなんとなくわかっていた、この町のオジサンたちは若い女の子に何かとセクハラをしてくるのだ。


 どーせ以前にカレンのお尻を触って成敗されて川に放り込まれたとか、そんな感じの事情があるのだろう。知らないけど。


 ただアルクルミにセクハラをしてくるオジサンたちは、成敗されて喜んでいるような人が殆どなのだ。否、殆どではなく百パーセントだ。


 この後ろのオジサンみたいに、皆が反省してくれたら町がどんなに平和になる事だろうか。

 町のオジサンたちも、このタンポ男さんを是非見習って欲しいものだと願うばかりである。


 そう思いながら歩いていると、目の前に森が広がってきた。

 ここから先が森のエリア、今回のお目当ての〝やんばるトントン〟のテリトリーなのだ。



 パーティはいよいよ森に入る。


 森に入る時はやはり緊張してしまうものだ、アルクルミも視界が良好な草原に比べて森は苦手だった。


 いきなりモンスターが現れることは無いだろうが、どこから出てくるかわからない視界不良な状況はやはり好ましくはない。


 でも今日はカレンがいる、これはアルクルミにとって安心できる大きな要因だった。


 この前の討伐ではカレンはポンコツ化していたので、スコップ少女として穴を掘って落ちただけなのだが、今回は違うのだ。


 頼れる冒険者として堂々と先頭を歩いてくれているのだ。


 しかも転生者みのりんというオマケまで付属しているのである。

 彼女は刃物ではなく木の棒などというものを装備しているのだ、それはモンスターを倒すのに剣なんか必要ないという事なのだろう。


 なんと頼もしい事か、こんな可愛い子がどんな戦闘力を持っているのだろう。後ろのオジサンは、うん、まあ、あまり強そうじゃない。


 それでも三人とも肉屋の娘なんかよりは、全然攻撃力のある冒険者なのである。

 アルクルミは今回の冒険は本当に気が楽だった。


 これこそが本物の冒険者パーティに違いない!


 でも彼女は知らないのだ、この中で一番戦闘力があるのが自分だという事に。



「アルクル……冒険者?」


 森に入るとみのりんがアルクルミに話しかけた。


 肉屋の娘は申し訳ない気持ちになる。

 冒険者でもなんでもない全然戦闘力の無いひ弱な町娘が、こんなパーティに潜り込んでいてはいけないのだ。


「ううん、私は単なる町の娘よ。冒険者でも何でもないのに、たまにこうやってお店のお肉の仕入れに行かされるのよ。うちのお父さん無茶苦茶でしょ」


 それでも自分の話を一生懸命聞いてくれる少女に、アルクルミはもっとこの子とお話がしたいと思った。

 まだ森に入ったばかりだ、冒険はこれからまだまだ続くのだ、森の中でゆっくりとたくさんお話ができるのだ。


 できるのだ、できるはずだった、でもできなかった。

 目の前にドヤ顔のヤツが立ち塞がったからである。


 やんばるトントンの登場である。


 何でいきなり出てきちゃうの!? もうちょっと待っててよ! 帰って下さい、邪魔しないで! 


 文句の一つでも言ってやろうと思った瞬間、カレンが一瞬でそのモンスターを倒す。


 その場にいた全員がポカーンとそのシーンを眺めていた。

 あまりに素早くて、カレンの残像が残った程だった。


 森に入った途端のいきなりのモンスター登場と、その退場が一瞬で行われたのだ。


 アルクルミが今まで散々酷い目にあってから、スキルを発動させて倒して来たモンスターをあっさり瞬殺なのだ。

 改めて、カレンの、冒険者の凄さを再確認する肉屋の娘だった。


 ただし、ここから先のカレンはただのポンコツ娘である。


 アルクルミとしては、今回は自分のスキルの出番もなくモンスターを倒せた事に大満足だ。


「お肉ゲットー! さ、とっととお肉にしちゃうよ!」


 カレンが早速モンスターをお肉に解体しだしたのを見て、アルクルミもそれを手伝おうと腰の肉切り包丁に手を掛けた。


 せめてこの包丁をお肉の解体にでも使わないと、恥ずかしい思いを散々して腰にぶら下げて持って来た甲斐がない。


 青い髪の少女に、この包丁はあくまでもお肉を解体する為に仕方なく、持ちたくもないけど持っていたという〝てい〟を装うのだ。


 完璧な偽装工作である。


 その時事件が起こった。


 次回 「パーティを襲った大事件」


 今回は出番が無いと思っていたアルクルミのスキル、ここで炸裂

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