第2話
風間は入学式とその後の工学部のガイダンスのは、出席こそしたものの、まったく集中していなかった。こっそりとビラを読み、参加するサークルのガイダンスのスケジュールを考えていた。そして、風間の心は航空研究会に惹きつけられていた。
大学の講義は90分あるとはいえ、最初の講義なんて講義のガイダンスだったり、成績の評価方法だったり、講義があっても高校の復習の内容だったりであっと言う間に終わってしまった。
一日の講義が終わる18時10分、ここからが風間にとっては本番だった。サークルのガイダンスの開催が近づいてくる。講義室の前は講義中のシーンとした雰囲気とはうってかわって、サークルの先輩たちが必死に勧誘している。「プログラミング研究会はこちら」書かれた看板をもって立っている人もいれば、マンガのキャラのコスプレをして勧誘しているマンガ研究会の人もいる具合だ。
203号室、203号室っと、ガイダンスの行われる講義室を探していた風間は、やっと求めていた言葉を聞いた。
「航空研究会のガイダンスはこちらでーす」
やっと、探していた場所をみつけた風間はテンションが高くなっていた。
「ようこそ、航空研究会へ」
「ガイダンスは30分から始めるので、座って待っててくださーい」
先輩たちから言われるがままに前から2列目の空いている席に座った。講義室の中では、おそらくサークルの先輩であろう男子が3人、ジュースやお菓子を配っていた。
「これ、どうぞー」
「ありがとうございます」
受け取ったビスケットとチョコレートを食べながら、落ち着かない風間はあたりをキョロキョロ見渡していた。わかったことは、たぶんサークルの先輩は外で呼び込みをしている二人と講義室の中にいる三人、自分を含めたガイダンスに参加する新入生は九人ということだ。人数が多いのか、少ないのかはよくわからない。
「ねえ、なんでうちのガイダンスに来たの?」
「あっ、えっと、飛行機作るのに興味があって、あと、青春したくて!」
突然、先輩に話しかけられた風間は、緊張しながら答えた。先輩は、少し不思議そうな顔をしている。
「青春……青春かー。そうか、ビラ見て来てくれたの?」
「あっ、そうです」
「おい、守富、良かったな、お前のビラのおかげみたいだぞ!」
先輩が奥でお菓子を配ってる人へ話しかけた。どうやら、あの"もりとみ先輩"が、ビラを作ったらしい。さらに、先輩が親しげに話しかけてくる。
「人力飛行機コンテストは、テレビで観たことあるの?」
「あっ、去年のは観てないですけど、一昨年までは観てました。あの、漕ぐやつですよね?」
先輩の顔が少し曇った。変なことを聞いただろうか?
「いや、うちのやつは漕がないやつなんだよね。滑空機部門だからさ。」
「えっ」
滑空機部門、そういえばあったような気がするが、あんまり印象には残っていなかった。
「はい、今から航空研究会のサークルガイダンスをはじめます!」
話していた先輩がそそくさと講義室の前へと向かっていき、先輩五人が黒板の前に並んだ。ついに、サークルのガイダンスが始まる。