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第2回
あの瞬間の事は今でもよくわからない
何度あの場面を見たかわからないが病室で見ていたタブレットを置き、
する事も何もないので病室に花の代わりに唯一置いた古ぼけた宝物を見つめる
自分は今28歳世間的には若者ではあるがこの世界ではけして若くはないこれまでの努力と幸運が重なりあの時あの場所にいた。
結構裕福な家庭に生まれ9歳の時にこんな機会もうないからと家族と見たあの大会で衝撃を受けその帰りに父親とある約束と引き換えに手に入れた俺の宝物。
そうサッカーボールだ!
「1人で大丈夫か?」
付き添ってくれていたスタッフがたずねる
『大丈夫ですよ』
と俺は答える
「しかし」
『飛行機にのるだけですそれくらいならまだできますから、それに向こうでは迎えもきますから』
「そうか、これまでご苦労様」
スタッフは伏し目がちにその言葉を絞りだした
『お世話になりました』
掴め無かった物は大きいがまぁこれまでの努力や苦しかった事は別に無駄ではないのだ。
さぁ、日本へ帰るか
ん?何だあいつえらく暗い眼をしてるな。
取り返しのつかないケガしたうえに戦犯確定の俺の方がまだ明るいぞ!