―鮮血の風刃―(1/4)
書き溜めが少々溜まったので、本日より11日間連続投稿を開始します
みなさま、ごゆるりと…
―鮮血の風刃―(1/4)
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第六小隊! キサマらは先行しすぎているぞ!
「こちらファルコン1、前線本部へ!
ちんたらしてたら、こちらの占領祝いの、ガリウス城塞大広間での晩餐会におくれちまいますよぉ!」
観測機、前進する。
前方、エルトール、銃兵隊。蜥蜴乗りの騎獣兵も複数。
市街路上の簡易陣地への潜伏を確認。
目標陣地により、前方への進出進路を遮られている。 各機、警戒されたし。
……――!…!…――!!!!…………
前方より射撃が飛来。
敵、銃兵隊の脅威度が増大。前方各機へ、速やかに排除せよ。
「ファルコン1より全機へ、かまわん!ぶっぱなせ!」
“了解!!!”“イヤッフー!!!”
斯くして、戦闘が繰り広げられていた……
──開戦が勃発してから、数日がたった現在……
エルトール国の、
このガリウス市という国境近くの都市は、今、市街戦の戦場として、
こうして戦争の舞台となっていた。
なにと言うことはない。
この都市は旧来より栄えている要衝であった……なにより、都市に連接して、エルトール国の重点要塞が立地していることも、
こうしてセンタリアによる侵攻攻略の優先対象となった、その次第である。
特に、侵攻の戦力の主力として展開しているのは、
市街の道路を前進し侵攻していた、
センタリア国軍・ネクロアーマー屍甲化歩兵部隊である。
その中で、
彼ら、F……ファルコン小隊部隊は、現在、
指揮下から逸脱した単独侵出を果敢にも実施したところ、
このように快進撃の最中にあった。
まったく、進出するのなら、このタイミングで、であった。
なにせ、ついさっきまで双方が盛大におっぱじめていた、ブラストログと重砲の迫撃合戦が、ようやく小休止を迎えていたからである。
故に、ここまでの進出も、まあ簡単とは行かないが、それでも難易度はイージーだった。
なにせ、タイミングの間の、
こんな間隙を縫うようにして来た自分たちという敵襲に、
砲撃戦の再開を見越して油断していたエルトール軍は、はっきりいって脆弱であった。
対応できるエルトール軍は、居なかったのだから!
故にこそ、このネクロアーマーは強力な性能を、機能特性を十分に活かし、如何とすることもなく、縦横に発揮できたのでもあったろう。
「ファルコン全機、アタック!
腑抜けのエルトールどもはケツをまくってるぞ!」
「「「「「「「「イエァ!!!」」」」」」」」
このファルコン部隊は、
各国で広く使われている、
Gタイプ・ガルバーニ型ネクロアーマーを派生させた。
センタリア国産仕様の、グリドール・タイプで構成されている。
内部につながれて搭乗している搭乗員達は機体の操縦を執り、思念コマンドと操作操縦で動作を行わせ、
すると、
その全機各機の、ネクロアーマーの右腕が、ぎぎぎ、と持ち上がり……
「撃てぇい!」
次の刹那、斉射が放たれた!
……――!……――!!!…………――!!!!……
アッ、
ぎゃ、
ぐわぁぁ?!
…………
……
「へっへっへ、エルトールは手応えがねえなァ、」
遭遇したエルトール国守備隊・その混成小隊は、
こうして二つが、ガリウス市街の路地に野を晒すこととなった。
このセンタリア国軍・ネクロアーマー隊は、
目下の所、このガリウス市の市内の戦闘の、そのB戦域の最前方を侵攻していた。
ネクロアーマーは、強力な兵器だ。
腹郭をくりぬいてコクピットを設け、
そこの部位の装甲ハッチも含めた外装は、
肉薄なアトラス鋼の鎧に魔導呪術をかけてパワーアシストの効果も持たせたダブル・メリットの製造品で、
なにより贅沢に専用肥育させた家畜鬼の腐らせをシャシーとすることで、この世界の人類圏の現存での機械兵器では成し遂げられなかった、
頑丈・軽量・高速・高性能・高馬力・高応答性、
これらを発揮できる、高パフォーマンスの兵器として君臨しているのだ。
その戦闘力は、たった一体で低級魔道士随伴歩兵小隊、その一つ分に相当する……と納入元メーカーの呷り文句とされている。
さて、このネクロアーマーは人間ひとりだけでは扱えない規模の魔導火器類の運用使用も可能となっている。
それもその筈で、
先述の通りに、
シャシーの家畜鬼を専用に肥育することで、
機体規模の大型化を図っており、
その結果、巨人種の小型級に相当するサイズに、全体をビッグにつくることに成功していた。
およそ、全高、七メイル……
このことにより、
旧来から巨人種級のみが扱えた重型装備をそのまま流用装着装備することが可能とし、
なにより、巨人種の奴隷を加工していくのでは直面する個体差による性能と規模のばらつきと、及び入手生産性の難度の解決をすべてしているのが特徴である。
従って、コストも比較的低廉となり、
補充消耗品の調達費用や運用ライフサイクルの問題こそあるが、
そのこともあって、この世界の主力兵器種類の一つとまでなっているのである。。。
現在この部隊のほとんどの機体は、
多目的・汎用戦闘用マガジン式クロス・ボウを携行しており、
この青色のマガジンには徹甲弾種が装填されており、 大柄でタフな体躯のオオトカゲであろうと、
市街地の通りの石畳を剥がして掘り返し、
その周囲に硬化土嚢で築いた陣地に陣取った敵の銃兵だろうとも、
もろともを、殺傷して見せた。
「! うぉ!?」
殺戮は、まだはじまったばかりだ。
なんだ、冒険者のゲリラか!
「地元の奴らか、いっちょ遊んでやるか!」
市街地の中程まで進んだこの時、
ネクロアーマー・ファルコン部隊は、こんどは思いがけない抵抗に遭遇していた。
何と言うことはない。
市街の建物の屋上から、レンガや石などを投げつけて……、そのように少年や少女などの、年少の冒険者たちが奮闘していた。
市街を漂う、市街が燃えた煙や炎からの煤煙で、
その顔は目からは涙ぐみ、鼻からは鼻水をたらしながら、彼ら彼女らは奮闘していたのだ。
だが……それは、殺戮の第二幕の開始であった。
「狙いにくい相手だな……キャニスター・グレネィドをつかえ。」
ネクロアーマーの何機かが、その判断を受けて、
腰のラックから取り出した、手榴弾をつかみ……
マガジンを取り外した携行用クロスボウの装填ラックの、その弦に突っかけて……
投擲!
……!!!……
……!!!!……
VO! VOW!! VOMM!!!
…………
……
「よし、仕留めることはできたようだな……」
キャニスター・グレネイド……
センタリア国は工業発展にかねてより注力していた国家であり、
その工業生産された検品落ちのベアリング球を転用して、高威力の散弾手榴弾としたものだ。
平たく言えば、機甲運用専用で、
ネクロアーマーの装甲ならば問題はないが、
この程度のソフトスキンあいてならば、効果はてきめんである。
空中高くに放り上がったグレネィドの炸裂は、的確に大勢を殺傷し、その行動を不能たらしめたようだ……
観測機からファルコン部隊へ、
周囲に動体反応、警戒せよ。
「うん?! ……ハッ、こりゃあなるほど、」
上層階は損壊した建物群であったが、その下層階の根元あたりで、
このネクロアーマー・ファルコン部隊を相手に、
展開した人間や亜人達が、魔法や弓矢、魔導火器などを用いて、いままさに攻撃を開始していた。
格好は、エルトールの兵士のものではない……義勇の、市民の義勇兵と、この街のギルドの、冒険者たちだろう。
激高した、戦意に溢れた表情と決意を篭めた気配であったろう。
だが……
「ファルコン各機、射撃班は、パイロチューブを使用しろ」
「射撃班、了解」
ファルコン部隊の隊長はまず、そうと指示を出して、
「手持ちの弾があるやつは、連中に見舞ってやれ。
徹甲弾の無駄打ちも許可する!」
そうして、殺戮の第三段階が、今まさに幕を開いた。
ネクロアーマーの腕部が動作し、その手に持たれたクロスボウの射撃を、作動させていく。
……――!……
……――!!!……
……!!――……
若者から壮年まで、挑んできた冒険者たちは、勇敢に戦おうとした。
だが、破壊力の規模がちがいすぎた!
いままさに、この瞬間にも悲劇は起きていた。
冒険者たちは、矢弾に穿たれちぎられ貫通されて四散して爆死して、肉体と命の血潮を零しながら。。。。。そうして命を散らしていった……
年若い外観のエルフの少女が、仲間の屍体に折り重なれ、まみれながら、魔法を行使しようとした……
……詠唱と規模から、戦術級の高威力魔法を使おうとしたのだろう。
だが、それは次の瞬間に不可能となった。
バリスタ級の威力とサイズがある、
この大型クロスボウの矢弾の直撃により、
一撃で、エルフの少女の上半身は吹き飛んだのだ。
「グッキル!」
部隊への脅威のリスクをキルして、
戦果を上げた部隊機へ、隊の僚友はそう称揚した。
「 パイロチューブ、射撃準備! よいか!! 」
そうしているうちに、状況はさらに次の段幕へと移った。
「……撃てぇ!」
シュパン、と、まるでシャンパンのボトルを開けるかのような、そんな軽快で軽やかな音響が鳴った。
……次の瞬間、炸裂と爆破が轟いた!
“交戦勢力”は市街ごと炎によって破壊され、
衝撃と閃光の威力によって、
建物も……ヒトも……ネクロアーマーよりかよわいモノは、
なにもかもが、燃やされて焦がされるがままになった。
「パイロチューブ、第二射準備しろ、ファルコン各機は全周警戒!」
要するに、バズーカである……携行型無反動砲、パイロチューブ。
高威力魔導榴弾による炸裂が、建物の低層階を破滅的に打ち砕いた!
それによる威力の現来である。
「ファルコンよりファルコン1、隊列の前後にて、不審な状態を確認!」
「対処せよ!」
まだ冒険者たちはあきらめていなかった。
爆薬を乗せた、貨車……それを路地から押し出した、冒険者たち。
ファルコン部隊の機体たちを、その前後から高威力爆薬で挟み撃ちし、炸裂させるつもりで行動は計画されていた。
だが、それは即座に阻止された!
警戒に当たっていたファルコン部隊の各機が、クロスボウの射撃で、いくつかの貨車を貫いたのと、
慌てた彼らの内の射撃班が、装填が完了したパイロチューブの照準を、それら貨車へと向けて……
同時の瞬間であった。その着弾は。
大炸裂が燃え咲いた!
ガリウス市の市街は、劫火とも言える如くの破滅的な火力によって、
破滅と壊滅の一途をたどるしかなかった。
もうここまでで、周囲の建物はずたずたのぼろぼろに損壊していた。
人間の間で気に留めるモノはあまり居ないとはいえ、 魔王帝国時代の由来があり趣ある建築群であったが、そのほとんどは灰燼に帰したのである。
灰燼に帰したのは無機物だけではなかった。
ここで戦った、人もモノたちも……
そんな、灰燼に帰す、という言葉が、まさしく一致する……そのようなあらましであった。
なにもかもが燃やし尽くされ、灰の下の底に、沈もうとしていた。
「あんまり、めぼしいのはもったいなくするなよ。
あとでの遊びが残ってんだからなぁ!」
火薬の匂いと炎の風景が、通りに現出していた。
そうして、彼らは勝利者となったあとのラグジュアリーな体験や体感をそうぞうしながら…………
「ん?」
……その耽溺の時間は、今終わろうとしていた。
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