6(6/8)-ツメキリ節孝-
日刊連続更新中、あと二話残っております…
みなさまごゆるりと…
###6(6/8)-ツメキリ節孝-
「ふむ、ツメキリの働きに、それに……贈物、感謝であったぞ、ドウジバシ。
それでは……」
「えぇ? 俺ちゃん、もう用済みなのぉ???」
俺の発言に、むっ、?と反応の声を立てた、ガーンズヴァル。
「せっかく、……」
がさり、と。
「折角、ドラッグストアで、カプリッコォン……を買ってきたっちゅーのに、」
「……な、なんですかぁ? それ?」「……、それは……?……」
メイドのイリアーナが、そう胡乱げな声と目で見やる。
タチアナも、油断なく、目を据えて、
カプリッコーンミニィ、の、
パーティパック、それを、七袋ほど、
「みんなっ!! これね、とっても、とっても、とってもおいしい、お菓子なの!
すっごく、おいしいんだよっ?」
「お菓子……であると……!?」
ざわ……っ、
ルーのその宣言に、食卓の間の中の人間たちは、このカプリコォンの大袋に、注目した。
「みたこともない……なんだ、この奇天烈な柄と模様の、この袋……
どんな材質でできているのか、皆目見当が付かん……
この間の、ふくふくたい、なるモノの、類種かなにかか?」
「おおまかにはそうなのです!
そして、この外装は、ぷらすちっく? だって! とっても薄い、合成じゅし! だそうです!」
「そうか……」
ガーンズヴァルは、ううむ、と声と喉を鳴らし、
(……ならば、味も、あの時ルーやが分けてくれたあの味の、あれに匹敵する甘露なのだろう……のか……期待でき……」
「ガーンズヴァル氏?」
「うむっ?! うむっ……ウウウウムッ…~~~………。。。」
まあそんな一幕も挟みつつ……
「いまから、ボクが実演するねっ!」
ルーはそういって、複数ある大袋のうち、ひとつの封をひらいて、
その中から、カプリコォォン……のミニ、その一本をとりだして……
「ぱくっ♪……う~んっ♡」
顔をこれ以上無いやみつきな笑顔にさせると、
「おいしいっ!」
……ということであった。
「、わ、わたしも、そうしたら……」「……こら、まったく、イリアーナは……」
「タチアナも、手を伸ばそうとしてるじゃないですかぁっ!?」「……うーっ……」
まったく、さっきはメイドは主人に控えるもの、とか言ってなかったっけか?
「それとこれとはべつです!」「……うん……」
そうして、注目が、この屋敷の家長に集まる。
その……ガーンズヴァルは厳かに、
「……良い、食べてみろ。メイドらよ、」
「――あ、ありがとございますぅガーンズヴァルさまぁっ!!!」「……ご慈悲の程、ありがとうございます……」
そうして、メイドらも一本ずつ封を手に取り……
「! おいしぃ……!!!!」「!……」
片方は溌剌と、片方は淡く、であるが……
心の底から満面の、幸福な顔となった……
「毒味をさせたつもりではなかったが……ふむ、ローズ、共に食べようぞ、」
「ふぉっふぉっ、」
ガーンズヴァル爺とエリルローズ婆も、一本ずつ、カプリコォオン、ミニィ……を取ると、
……こないだの、麺麭の袋とおなじやりかたか……この……っ、うむ、開いた。……
? うむ、なんだこれ、は……
さくっ、
「……むぅっ?! こ、これは……」「むむ!」
「……甘露なり、」「のう~、」
ガーンズヴァルは、そう呻いた……
エリルローズ婆も、同意した。
(ドウジバシよ……ありがとう…………)
ガーンズヴァルは瞑目しながら、そう心の中で唱えた……
最後に残ったのは、
「どうですかっ? おばさまっ!」
「ふん、……」
表面上の取り繕いは、無愛想に返した、エリルリアである。
……が、
(なにこれなにこれなにこれぇ?!
こんなおいしいお菓子、食べたことなかったわよ!!!)
内面では大爆発していた。
(なによ……なによっ、こんなおいしいものが、異世界のニホン、ってとこにはあふれてるわけぇっ?!)
大爆発していた……。
(嗚呼、あぁ、あぁぁ…………)
それから、爆縮をおこした。。
刻がみえていた……
心の中で、エリルリアは涙をまなじりに浮かべ零しながら、
(嗚呼、我が青春の黄金時代。アタシの人生の華やかりし最盛期……
帝都で過ごした、あの忘れられない日々……
帝都で食べた、焼き菓子……生菓子……素敵で、新鮮で……甘くて……
それらの良いとこが合わさっているようで、……でも既存の今までにはなかったようで、いや、あり得なかったと言い切っても惜しくないわ……そして、あまくて、おいしいっ!!!)
カプリコォのおいしさに、メロメロになっているのであった……
……
「……あのー、」
…………
「あーのぉ、もしもし、?」
「なによ、!」
(五月蠅いわねぇ、まったく、この華やかな後味に、浸ってたっていうのに!!
……あ、ルーじゃない? 愚姪じゃない?
コレ買ってくれた、ドウジバシ?
なら、応じてやるか……)
「……なによ、」
「ええ、それは……ですね、」
こほん、とゆうたは息払いをしたあと、
「…………ルーテフィアくんのこと、叔母さまは、普段はどんな?、」
(……“くん”?)
エリルリアは、内面の心の感情だけを失笑に破顔させて、
(あっはは!! こいつ!こいつったら、このアヴトリッヒ家一世一代の、この渾身の一大ギャグコントのこと、本当に本気で信じちゃってるんだ!!!
そんなバカいるぅ?! いたぁ!!!
あっはははははっはははははぁあっ、
おっかしーーー!!!!!!)
(……って、)
(……なんか余計なこと言ったのかしら、あの愚姪。)
わずかに剣呑な気配を出したエリルリアに、
多少離れた位置に居た、ルーはびくりっ、と殺気を察して怯えひるんだ、が、
(……ここは表面上は、仲良しを演じたほうが、よさそうね……得になりそうね?)
そう判断すると、エリルリアはこほん、とひとつ息払いをし、
顔の表情を、自分は……知的で聡明な美女なのだ、と取り繕わせながら、
「そうね……アタシは、たまにだけど、
普段から面倒見てやってるわ。
すこし、熱心すぎるかもしれないけれど、」
「……そうですかぁ、」
ゆうたは、その確認だけを行った。
一方、エリルリアはそれどころでは無かった。
前述すると、確かに、エリルリアもまた、周りの美少女たちにもひけを取らず、美しい美貌というのに恵まれている人物である。
年齢の換算でいうなら、いわばアラサーというやつではあったが、確かに美しい女性…美女ではあった。
そうして、まるで…至宝の絵画の絶世の美女画! かのような、その一幕が現出していた。
……もっともシチュエーションはなんとも妙なものであったろう。
(……至福だわぁ…っ……)
そう、至福。彼女…エリルリアはいま、その感傷に浸っていた…
表面上はたおやかで優雅な手つきで、カプリコミニィィのもう一本を手に取り、開封して、口に運んでいたが……
(ルー……あんたってやつはぁぁ……! こんなおいしい思い、毎日してやがってぇぇぇ……!!!!)
おのれの姪御への、怨嗟と羨望の呻りの限りを、心の底で低く震わせていた……
ルーは気配を感じて、さらに怯えるしかなかったのであるが、
……、
「これをほしい、って言ったの、実はルーなんです。」
へ?
そのとき、唐突にかけられたゆうたの言葉に、エリルリアは硬直した。
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