表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/278

6(6/8)-ツメキリ節孝-

日刊連続更新中、あと二話残っております…

みなさまごゆるりと…

###6(6/8)-ツメキリ節孝-









「ふむ、ツメキリの働きに、それに……贈物、感謝であったぞ、ドウジバシ。

 それでは……」



「えぇ? 俺ちゃん、もう用済みなのぉ???」




 俺の発言に、むっ、?と反応の声を立てた、ガーンズヴァル。




「せっかく、……」



 がさり、と。




「折角、ドラッグストアで、カプリッコォン……を買ってきたっちゅーのに、」




「……な、なんですかぁ? それ?」「……、それは……?……」




 メイドのイリアーナが、そう胡乱げな声と目で見やる。

 タチアナも、油断なく、目を据えて、





 カプリッコーンミニィ、の、

 パーティパック、それを、七袋ほど、





「みんなっ!! これね、とっても、とっても、とってもおいしい、お菓子なの!

 すっごく、おいしいんだよっ?」





「お菓子……であると……!?」





 ざわ……っ、

 ルーのその宣言に、食卓の間の中の人間たちは、このカプリコォンの大袋に、注目した。





「みたこともない……なんだ、この奇天烈な柄と模様の、この袋……

 どんな材質でできているのか、皆目見当が付かん……

 この間の、ふくふくたい、なるモノの、類種かなにかか?」




「おおまかにはそうなのです!

 そして、この外装は、ぷらすちっく? だって! とっても薄い、合成じゅし! だそうです!」




「そうか……」



 ガーンズヴァルは、ううむ、と声と喉を鳴らし、



(……ならば、味も、あの時ルーやが分けてくれたあの味の、あれに匹敵する甘露なのだろう……のか……期待でき……」



「ガーンズヴァル氏?」



「うむっ?! うむっ……ウウウウムッ…~~~………。。。」



 まあそんな一幕も挟みつつ……



「いまから、ボクが実演するねっ!」



 ルーはそういって、複数ある大袋のうち、ひとつの封をひらいて、

 その中から、カプリコォォン……のミニ、その一本をとりだして……





「ぱくっ♪……う~んっ♡」




 顔をこれ以上無いやみつきな笑顔にさせると、





「おいしいっ!」




……ということであった。




「、わ、わたしも、そうしたら……」「……こら、まったく、イリアーナは……」


「タチアナも、手を伸ばそうとしてるじゃないですかぁっ!?」「……うーっ……」





 まったく、さっきはメイドは主人に控えるもの、とか言ってなかったっけか?





「それとこれとはべつです!」「……うん……」




 そうして、注目が、この屋敷の家長に集まる。


 その……ガーンズヴァルは厳かに、




「……良い、食べてみろ。メイドらよ、」




「――あ、ありがとございますぅガーンズヴァルさまぁっ!!!」「……ご慈悲の程、ありがとうございます……」




 そうして、メイドらも一本ずつ封を手に取り……




「! おいしぃ……!!!!」「!……」





 片方は溌剌と、片方は淡く、であるが……

 心の底から満面の、幸福な顔となった……






「毒味をさせたつもりではなかったが……ふむ、ローズ、共に食べようぞ、」


「ふぉっふぉっ、」





 ガーンズヴァル爺とエリルローズ婆も、一本ずつ、カプリコォオン、ミニィ……を取ると、





……こないだの、麺麭ぱんの袋とおなじやりかたか……この……っ、うむ、開いた。……




 ? うむ、なんだこれ、は……





 さくっ、






「……むぅっ?! こ、これは……」「むむ!」





「……甘露なり、」「のう~、」






 ガーンズヴァルは、そう呻いた……

 エリルローズ婆も、同意した。





(ドウジバシよ……ありがとう…………)



 ガーンズヴァルは瞑目しながら、そう心の中で唱えた……










 最後に残ったのは、







「どうですかっ? おばさまっ!」







「ふん、……」




 表面上の取り繕いは、無愛想に返した、エリルリアである。



 ……が、




(なにこれなにこれなにこれぇ?! 

 こんなおいしいお菓子、食べたことなかったわよ!!!)




 内面では大爆発していた。





(なによ……なによっ、こんなおいしいものが、異世界のニホン、ってとこにはあふれてるわけぇっ?!)





 大爆発していた……。




(嗚呼、あぁ、あぁぁ…………)




 それから、爆縮をおこした。。


 刻がみえていた……


 心の中で、エリルリアは涙をまなじりに浮かべ零しながら、




(嗚呼、我が青春の黄金時代。アタシの人生の華やかりし最盛期……

 帝都で過ごした、あの忘れられない日々……

 帝都で食べた、焼き菓子……生菓子……素敵で、新鮮で……甘くて……

 それらの良いとこが合わさっているようで、……でも既存の今までにはなかったようで、いや、あり得なかったと言い切っても惜しくないわ……そして、あまくて、おいしいっ!!!)




 カプリコォのおいしさに、メロメロになっているのであった……




……




「……あのー、」





…………




「あーのぉ、もしもし、?」




「なによ、!」





(五月蠅いわねぇ、まったく、この華やかな後味に、浸ってたっていうのに!!


……あ、ルーじゃない? 愚姪ルーじゃない?

 コレ買ってくれた、ドウジバシ?

 なら、応じてやるか……)




「……なによ、」



「ええ、それは……ですね、」




 こほん、とゆうたは息払いをしたあと、





「…………ルーテフィアくんのこと、叔母さまは、普段はどんな?、」





(……“くん”?)





 エリルリアは、内面の心の感情だけを失笑に破顔させて、





(あっはは!! こいつ!こいつったら、このアヴトリッヒ家一世一代の、この渾身の一大ギャグコントのこと、本当に本気で信じちゃってるんだ!!!

 そんなバカいるぅ?! いたぁ!!!


 あっはははははっはははははぁあっ、

 

 おっかしーーー!!!!!!)




(……って、)




(……なんか余計なこと言ったのかしら、あの愚姪。)




 わずかに剣呑な気配を出したエリルリアに、

 多少離れた位置に居た、ルーはびくりっ、と殺気を察して怯えひるんだ、が、




(……ここは表面上は、仲良しを演じたほうが、よさそうね……得になりそうね?)




 そう判断すると、エリルリアはこほん、とひとつ息払いをし、

 顔の表情を、自分は……知的で聡明な美女なのだ、と取り繕わせながら、

 



「そうね……アタシは、たまにだけど、

 普段から面倒見てやってるわ。

 すこし、熱心すぎるかもしれないけれど、」




「……そうですかぁ、」





 ゆうたは、その確認だけを行った。




 一方、エリルリアはそれどころでは無かった。




 前述すると、確かに、エリルリアもまた、周りの美少女たちにもひけを取らず、美しい美貌というのに恵まれている人物である。

 年齢の換算でいうなら、いわばアラサーというやつではあったが、確かに美しい女性…美女ではあった。

 そうして、まるで…至宝の絵画の絶世の美女画! かのような、その一幕が現出していた。

……もっともシチュエーションはなんとも妙なものであったろう。



(……至福だわぁ…っ……)


 そう、至福。彼女…エリルリアはいま、その感傷に浸っていた…

 表面上はたおやかで優雅な手つきで、カプリコミニィィのもう一本を手に取り、開封して、口に運んでいたが……





(ルー……あんたってやつはぁぁ……! こんなおいしい思い、毎日してやがってぇぇぇ……!!!!)




 おのれの姪御への、怨嗟と羨望の呻りの限りを、心の底で低く震わせていた……



 ルーは気配を感じて、さらに怯えるしかなかったのであるが、





……、





「これをほしい、って言ったの、実はルーなんです。」




 へ?


 そのとき、唐突にかけられたゆうたの言葉に、エリルリアは硬直した。









********************************************


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ