5(5/8)-ツメキリ節孝-
日刊連続更新中です…
あと三話ございます…
ごゆるりと…
###5(5/8)-ツメキリ節孝-
「……あ、アタシぃ?」
エリルリアは、少し迷ったような態度をした後で、
「そうねぇ…………」
……なにか、値踏みをするような目でゆうたを見た後、
「ルーじゃなく、あんた、あんたが、ひとりでやって、」
さらり、と受け流すように、そうとだけ言った、エリルリア。
(……!?)
だが、叔母には珍しいような、好奇心の目で、ゆうたのことを見やる瞬間を、ルーは目撃してしまった。
実際にはどうだっただろうが、
ルーの目には、
蛇の舌なめずりとその目、と受け取れた。
(お、叔母さまっ?!)
ルーはおののいた……
自分では絶対に敵わない天敵の相手に、ゆうたが、!!
(ユウタ、ゆうたのこと、ユウタのことに、食指をのばそうとして…………?!!)
そう思い至ると、もう、おさえていられない!
(どうしよ……どうしょ……どうしよぅ……!??)
ルーの脳裏に、いろんな感情と、光景の幻視が、フラッシュバックした。
自分をおいやって、この叔母が、ゆうたとたのしくしていたり、
……大人同士の関係を結んだ、り、……
…………最後は、自分が端に追いやられた結婚式で、
ウェディングを、この叔母が行うのだ!!
………………伴侶を、ゆうたとして。
(……――ねとられたくないよぅ!!!?)
がぁん、がーん、……と、
もう涙の溢れは自らが沈むほどにまで止まらなくなり、、
ルーはそうして形成された、
おのれの心の底板の下の絶望の湖の底へと、急速に沈んでいった……。
(いやだ、いやだ、いやだぁ、いやだよう、ユウタがとられちゃうよぅ!!?)
がーん、がーん、がぁ……ん、……
もう涙がとまらない。
(かなしいよう、さみしいよう、せつないよう、
くるしいよぅ…………
ゆうた、ユウタぁぁぁぁぁぁぁぁ…………)
なみだがとまらない……
このちいさなルーの絶望は尚も続いて、
(ぼくの、ボクの、たいせつな、だいすきなユウタなのにぃっ…………
えぅ、ぇぇう、ぇぇぅ…………ぅぅ~~!!)
悲しくなったり、さみしくなったり、ちいさくなったり。
ルーの心の、底が抜けてしまった瞬間だった。
(と、とめないと! ボクの、ボクのユウタが!!)
ルーは、そう決意して、
(だめだ、いやだっ、て、いわないと!!)
青ざめていたのを勇気へと、
顔の表情をそう一巡させながら、ルーは…………
(……、……。。)
(…………、。。)
……
…………、
………………、、、
(………、、、。。。。……だめだぁ、ボク、ダメって、いやだって、いうこともできないよぅ……!)
ルーのこころは、もう限界であった……
「ユウタぁぁぁぁぁ……、」「…………へいへい、」
涙を滝のようにさせ、心配するルーをよそに、
それを背後にあさっての方……エリルリアを見ていたので、それに気づくことも無く、なにということもなく、返事をしたゆうたである……特に言い返すこと無く。
(……?)
(今のこの、ドウジバシの、どもり、間は……なんだったのかしら???)
一方のエリルリアSIDE。
敏感なエリルリアはそれを察知していた。
しかし、エリルリアのその疑問は、まあ本人がすぐに気に留めなくなったのだが……
ルーにとって、紀元歴がつくられ、ほろびるまでの、
永い永劫の体感を、心で感じていた……
(ぐすん、ぐすんっ、ずっ、ぐすっ…………)
(ぇぅぇぅぇぅ……ユウタぁぁ、ボクをひとりにしないでぇぇぇ…………)
「おい、ルー?」
(ほえ?)
「おわったで、」
「……え、?、」
その間じゅう泣き通しで、
ルーが心の中の青い湖の底で溺死していた、まさにそのとき、ゆうたはそう声をかけた。
「え? え、ぇ、?
……あれ、? いまボク、どこに、いたんでしたっけ。
……あれ、?、、。
……、、。。、、、
……きれいなおはなばたけだったなぁ……
……きれいな式場だったなぁ……
……でも……、
ユウタ、ボク、叔母さまとユウタの投げた、
花束のブーケ、受け取れなかったんだよ?、
そうなのに、ボクのこと、見捨てないで居てくれて、心配してくれて……で、でっ、でもっ、もう、ユウタは叔母さまのものに……まもなく、はねむーん、への、出発の時間で……」
「なーにいうとんじゃい、もう終わったよ、」
「……ぇ?」
天国に昇天して召されていたルー……
……であったが、ゆうたのその発言で、現実にと戻ってきた。
「ぇ、ぇ、え、ぇ、????」
「俺ちゃん至上記録更新やな、薄くて小さいかったから、簡単にぱちぱち切れたわ。
指はきれいだとおもったよ? だけど、おまえのほうの指には叶わんやな。
さっすが、おまえが姪御に持つ叔母さんやな、」
「ぁ…………、、、」
ルーは、とくん、と胸の高鳴りを感じて、
(指…………ほめられちゃった…………////////)
ルーは、その手応えを感じつつ、
まあそんな案配で、
叔母さんの爪も、首尾良く完了した……
ーーーーーーーーーーー
(SIDE:ゆうた)
「……さて、こんなもんやな?」「うんっ、うんっ!!!」
そうして、ツメキリは無事完了した。
かがんだ状態から立ち上がり、腰の骨がべきぼきと鳴った、俺、ゆうた。
俺ちゃんも一息つける、というものだ~~。
「その袋は、、なんです?」
メイドが不審がった……食卓におきっぱだった、ドラッグストアの袋に、
お? おうおう、忘れるところだった。
がさごそ、とその中から目当てのものをとりだし……
「これを、みなさまに、……」
はっ、と、
皆の顔が、驚きの表情になった。
「ツメキィリ、ではないか!」
そうなのである。
新品の、ツメキリ……
それが、六本。各全員分。
「まあ、お土産……ということで、」
そこまで言いかけた、俺……そうすると、ガーンズヴァルが、俺の前へと進み出て、立った。
ぎょっ、となった、俺ちゃん。
なぜならば、
ガーンズヴァルは、何時もの眼光……
ガーンズヴァルは、爺なのに、俺よりも身長が高いのもあるが。
なんや、俺ちゃん、どうなっちゃうの?!
「……礼をいわせてもらう。」
しかし、口から出てきたのはそのお言葉。
ふと、それで感じた。…というか、
ああ、この爺も、顔の表情の取り方が上手くないんだな、
不器用で損してきてる人なのだな……と、俺はそのときになってふと思った。
「……率直に礼を申させて貰う、ドウジバシよ」
い、いや~、そんな、べつにべつに!
「これへの御礼は、なんと言って良いだろうか……」
ん、? どこかできいたような、この台詞、
「恩を授けてくれた御主は、このアヴトリッヒ家の家長・ガーンズヴァル・ベルク・アヴトリッヒ。
我からの感謝の礼儀ある言葉と礼節を、名誉ある御礼として、御主に授ける。
それを誇りとして、御主はこれからも……」
そこまで及んで、ガーンズヴァルの言葉は、…………途切れた。
しばらく、無言が続いて、
「……領民、ではなかったな……」
……ごほっん、とガーンズヴァルは咳払いをしたあと、
「………………ルーやの、良き遊び相手、友人として、この我らとの交流と関係を、続けられよ。
ドウジバシ、御主は一層、研鑽に励まれることだ。」
こ、こいつ……こいつら……
言葉上の形式だけで、俺へのフォローを済ませよった!
まあ、こうなっても惜しくないように、(?)
渡したツメキリというのも、近所のドラッグストアで購入した、通常グレードのモノで、俺ちゃんたち道寺橋ファミリーの使うものより、値段が劣るものだからだ。
べ、べつに、見返りなんて、求めてなかったんだからね!(涙
一本、だいたい七百円。
そんなもんなので、まあ、安い買い物だったさ……(黄昏
「ボクのおじいさま、流石です!」
一方の、ルー。顔と目をキラキラと輝かせて、このルーのやつは、はしゃいでいるし、
……うーん、どっとはらい?
だが、それで収まりがついたわけでは……なかったのだ。
少なくとも……
俺ちゃんの“作戦”は、ここからが正念場の本番……というやつだった。
ーーーーーーーーーーーー
********************************************