4(4/8)-ツメキリ節孝-
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あと四話分ございます…
ごゆるりと…
###4(4/8)-ツメキリ節孝-
「………………」「………………。。。」
……ガーンズヴァルの方が先に、ゆうたにへと譲歩した。
ゆうたの傍らに、ガーンズヴァルは、歩いてきて、立った。
そうして、ガーンズヴァルとゆうたは、対峙した。
「んじゃあ、椅子に座ってくだされ、」
「むぬ…………」
椅子に座ったガーンズヴァルと、その前に、ツメキリを片手に、立つ、ゆうた。……
……対峙している。
(勇者英雄と謡われたほどの我に、こうも物怖じせぬ、とはのう……)
…………
(調子が狂う……)
ガーンズヴァルはそう心で譫言しつつ、
「ぬぅ……」「?」
ガーンズヴァルは、顔に冷や汗を浮かべ、流した。……
…………――幾多の戦場での傷と痛み。それは、もうだいぶ遠い昔のこととして、忘れては居ないが、記憶は古いものとなった。
だが、それ故に、爪の先は敏感で、鋭敏なのである。
先ほどの痛みの感覚が、フラッシュバックとして脳裏に去来する……
そうと知ってかしらずか、かちゃかちゃ、とツメキリを稼働させる、ゆうたである。
「ぬ……」「まあ、おれちゃんにやらせてくだされよ、ガーンズヴァルさん。」
そうして、ゆうたによるツメキリは開始され……
「う、」
「ぬ、」
「ぅ、……」
「……ふむ、快適よのぅ……」
表情を優雅にさせながら、ガーンズヴァルはそう言った。
……ぱちん、
……ぱちん、、
……ぱちん、、、
「~♪」「わ、わぁっ……!」
あっという間に、片手の爪の先が、綺麗に整えられた……
「さて、」「ほぇ?」
そこで、ゆうたは、自らの作業を、いったん中断させた。
「む、どうしたのだ、ドウジバシ……」「いえ、ね、」
ゆうたは、傍らにいたルーに声をかけて、
「おい、ルー。」「ふぇ……」
ゆうたによる、ガーンズヴァルのツメキリ。
目の前のその光景を見ていて、ルーはうれしげだったが、同時に自信をなくしてもいた。
「…………、、、、。。。、、、、……ぇぅ……」
心が、折られていた、といってもいい。
それほどに、
無力感に、苛まれていた、ルー。
「おい、って、」「……ふぇ?」
そのルーにゆうたは諦めること無く声をかけ、
「汚名返上といこうぜ、ルー?」「ぇぅ?」
悄然とした声しかだせなくなった、消沈したままの、ルー、
それを見かねたのである……ゆうたは。
「ほら、ルー、今の見てたろ? もっかいやってみよう、」
「ぁぅ?! ボクっ、い、いい、いいよっっ……できないょぅ…………」
自信のない、ルー。
それをゆうたは、なおも促しながら……
「おじいちゃん大好きなんやろ? ほら、爺孝行しようやないの、一緒に、おれがてつだうから、」
「で、でも……っ」
迷うルー。
らちがあかない。
……そう考えたゆうたは、
そのルーの片手を、ゆうたはそっ、とした手つきで、しかし身軽に手に取ると、
ツメキリを持った己の手に重ねさせて、、
「俺の手を持ってるだけでいいからさぁ、」「え、えうっ……?////////」
思いもよらなかった今のこの様相に、ルーは目を白黒させ、言葉をたどたどしくさせながら…………
……そうしてツメキリは再開された。
(ボク、ユウタに、教えて貰いながら、いっしょにツメキリしてます……////)
ルーは、心地良い体感を感じながら……
隣り合ったゆうたの脈動と、自分の鼓動の音。。
その温もりが、重なり合って、響き合う…………
「ぁ、ぅ、……///////」
最初は爪を切るゆうたの手に己の手を重ねているだけであったが、
三回目ほどから、ゆうたにツメキリを委譲されて、
そうして、ゆうたが教えた通りに、ツメキリで爪を切るようになり……
……ぱちん、
……ぱちん、、
……ぱちん、、、
「こうまで、安全に、簡単に、切れる、とは………うぬぅ……」
ガーンズヴァルのツメキリは、そうして完了した。
「わ、わぁ……!!」「どーよ、ルー、お手柄やな?」
ルーの表情が、だいぶ、明るくなった。
それを見て、ゆうたも表情を破顔させる。
そして、
「わ、私は、畜生顔になんか……!!」
「わたしも、あなたに、借りをつくるようなことは……」
「ルーにやってもらうのは、?」
「うっ…………ごほんごほん、……主人をメイドに尽くさせるなど、本末転倒です!」
「……さっきのわれらは、とくべつだったので…………」
「ほーん、それじゃあ、……「ユウタ! それから、タチアナ、イリアーナ!」……ん?」
ルーは、ぐすっ、と鼻をすすったあと、
「ボク、汚名返上、したいです!」
「「!」」
…………そう言われた、メイドたちは、頷くしか無かった。
……ぱちん、
……ぱちん、、
おーおー、メイドどもよ、
嫌っていた俺ちゃんにツメキリされることになって
なんか心情の変化とか、そういうのは、ないのか。
「べ、べつにぃっ……ツメキリくらい、私らでもできますしっ…「ふぇっ?!…ぐすっ……ぐすっ……ぇぅっ……」…あっ、ルーさま、ルーさまにそういう意味で言ったのでは無く……!」
……ぬ゛っ…………まぁええわ、やらせてもらうでー
「………、、………」
……
「……本当に、怪我なく、終わった……
さすが、ルーさま!!!」
「! うんっ!!」
良き主従愛やのぅ…………って、
はい、次はそちらさまや、
「……メイドにさま、付けは、不要、です…………」
さいでっけ……
ぱちん、
「! …………」
こら、動くなっ! 切ってる最中にもぞもぞするなっ!
「……こそばゆいのだから、しょうがないでしょう………………、、、、。。。」
……足で俺だけ蹴手繰りするな!!?
ぎゃあっ!!??
「……ルーさま、申し訳ありません、私どもの、不浄な爪の始末をさせてしまう、などと……」
「大丈夫だよ、タチアナ!
ボク、ずっと前から、みんなにお礼がしたかったの!
だから、ボクのお返し、感謝を、伝えられたら、って!」
「…………、」
(ルーさま、立派になられて……)
……ぱちん、、、
……ぱちん、、、、
メイド二人も、完了した。
「ふぉっふぉっ……」
エリルローズ婆も完了し、
「……あ、アタシぃ?」
エリルリアを最後にのこすばかりとなった。
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