6(6/8)-アヴトリッヒ家の華麗なる食卓-
ただいま日刊連続投稿中です…
今回から少々感情的描写が入りますが、
日刊投稿完了までに解決されますので、皆様お願いします…
###6(6/8)-アヴトリッヒ家の華麗なる食卓-
「なにやってるのよ、この、愚姪!!!」
「ひゃぅっ?!」
バァン!……と、食卓の上に、乱雑に葡萄酒のボトルが叩き置かれたのが、その時のことであった。
強度が高いため、割れて砕ける、ということはなかった。
が、その代わりに鈍い響きが、叩き付けられたことで鳴った。
食卓の間は、今日も凍り付いた。
「えぅ、ぇぅ……」
「あんたねぇ、なに役立たずやってるのよ。
アタシだって、怪我なく爪切れるの、楽しみにしてたんだから!」
エリルリアの逆上は、止まることがない……
その激高に、なすがまま、なされるがままの、ルーテフィアである。
「えぅ、ぇぅ、ぇう、…………」
ルーは、さめざめと、仕打ちに耐えるしか無かった。
「もうよい、エリルリアよ、」
「お父さん! この愚図、アタシのいうこと聞かない!」
「ルーやに、つらく当たるのではないぞ、……むぅ、まったく……」
「おとうさんからも、いってやってよ。
アタシの言うことだから聞かないんだ!」
「もうよい、エリルリア……」
「お父さん!」
エリルリアの逆上は、尚も続いた……
「……わかった! ……わが細君よ、」
「まかせぃ、」
「!」
辟易としたのは、ガーンズヴァル爺もおなじくである。
やむを得ない。
そう判断すると、傍らの、エリルローズ婆に、要請を行い、
「……〈睡眠魔法〉!」
かつての勇者パーティーの、その魔道士を勤め上げた、ガーンズヴァルの幼なじみ。
今はその妻の一人である、エリルローズ。
その熟達した、魔王にさえ通用した、ベテランの魔法。
呪文一つ程度ならば、魔導杖も必要としない。
それを使って、エリルリアを眠らそうとしたのだ……
だが、
「ふん、〈魔法反射〉。」
「ウヌァガ!?」「?!」
その才能を受け継いだのが、その娘である、エリルリアだった。
天賦とも称された、幼いときから卓越したその魔法のセンスによって、若かりしころの一時は、神童、だとか、神の子、……だとか、天才少女、だとか、、
そのように褒めそやされ、、
事実、その才能は開花し、
史上最年少で、この国の帝都のアカデミーに認められ、
帝都にある国立の研究所の主席研究員にまで、のぼりつめたほどなのである。
いっときとはいえ、栄光をつかみ取った。
それがエリルリアという人物なのである。
…………今はもう、過去の話だが。
「! ローズ、しっかりせい!?」「フゴォ……グゥ……」
「ふっふん。お母さんが私にそうやってやろうだなんて、
小さいときはいざ知らず、今となっては無、理、よ、。」
唇の前で利き手の指をくいくい、と左右に振って、
エリルリアは不敵な笑みでそう述べると。
「おやすみ、おかーさま、」「ま、待て! エリルリア、……娘よ……」
収集をつけられない、自分の父・ガーンズヴァルを置き去りにして、
そういって、離れの自室へと、戻っていった……
「あ、あわわわ…………」
「イリアーナ、ローズさまとガーンズヴァル様をまかせましたよ。……
さあ、ルーさま、ルーさまも、おやすみになられましょう……」
じぶんのせいでこうなってしまった……
おびえるしかないルーに、メイドのタチアナが、そう促した。
* * * * *
窓から月の明かりが差し込む、夜の、ルーの自室。
魔力燈のスイッチを入れ、手元の明るさを準備すると、
タチアナが、書棚に、本を取る手指をくゆらせた。
「ルーさま、今日の、寝る前の本の読み聞かせは……」
「……いつもので、おねがいします。……」
ルーは目を静かにつむって、
ふかふかで重量がある、羽毛かけ布団。
ベッドの上の、それに身をくるませて、静かにタチアナの読み聞かせを聞いている。
(おじいさまの、伝説のおはなし…………なんど聞いても、あきないです…………)
そうして、ルーは、きょう一日の振り返りを思った。
(でも、きょうはユウタのおうちで、
おじいさまの伝説なみに、とっても刺激的で迫力のある、あそび? もできちゃいました!……)
(ユウタが、ボクの鍛錬の相手をしてくれた! そのことが、なによりもうれしかったです。
ボクは、いつもメイドたちに稽古付けしてもらってて、おじいさまに、はやく認められたいんだっ。
だから、とってもうれしかったなぁ…っ////
でも、それもありますが、)
そう追想したルーは、にへらぁ、と次の追憶に顔をほころばせて……
(げーむ、ゲェム、……とっても楽しかった!)
にへらぁ、とルーは顔を綻ばす。
(げえむ機、というのを、ボクの異能で確かめたとき、ぷろぐらむ? という、すごいいっぱいの羅列と、とっても手間のかかった、魔道具の構造とつくられかた……
とてつもない幻視が、すっごくたくさん、みえた!!
あんなすごいものは、このアヴトリッヒ領にはないはずですでしょう。
そう、エルトール国の本土でも、どころか、この西大陸世界全体でも、
もっとしたら、このアリスティリウ世界の全域でも…!
天界の神様たちの世界なら、たぶん、匹敵するものがあるでしょうけど……)
ルーはそこまで思いを巡らせて、
ほぅっ…という満足のため息とともに、目をつむった。
(機械って、すごいなぁ……)
ルーは、あの時のアーメードコォアや、そのあとに遊んだ、ガンドァアム、や、フリントメッセン! などの、
今日一日の内に遊んだゲームの体感を思い出して、
(ろぼっと、って、なんだろ?)
というように、はてな? を浮かべた。
(魔法で動く、のろいの甲冑や、ゴーレムよりも、つよいのかな?)
…………
(でも、おおきくてりっぱなゴーレムよりも、かっこよかったな……)
………………
…………
「はやく、今日がおわらないかなぁ」
「ルーさま、目を閉じられて……」
「あうっ」
あの刺激的な体験を思い返していたら何とも言えずにわくわくしてきていて、思わず目を開いていたのだ。
ルーはそのタチアナの言葉にいざなわれて、再び、目をつむった。
そうして、夜はすぎていき……
ルーは夢の中についた。
夢の中で、ルーはたくさん、ゆうたと遊ぶ夢を見た。
叔母さんにいびられることなく、不安もおそれもない夢の世界の中で、ゆうたは、とってもやさしくて。
(…………とっても楽しくて、とってもうれしくて、
そうして、最後はゆうたとばいばいして、
また、明日ね、って……
えへへ…………にゃむ…………)
「むにゃ、……ユウタぁ…………むにゃむにゃ……」
不意に、きらめいたものが、そこには見えたのだろう。
寝床のルーの閉じられたまぶたの端に、涙のかがやきがきらめいた…………
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