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6(6/17)-異世界っ娘がやってくる-

###6(6/17)-異世界っ娘がやってくる-













「まったくかあちゃんがよー、かってに勝手口の鍵開けちまってたっつーかよー、」



「えぇ、ええ……」




 ぐびぐび、と俺は手元のグラスで冷水を呷り、




「鍵、締めておいた筈なのに、かあちゃんは開けてない! って言い張るしよー、なんなんだろうかなー」




「えぅ、えう……」




「なぁ、ルー、」




「えぅ……」




 目の前で、こいつはしょげている。

 めにみえて、しょげている。



 なんだか威圧しているような気分になってくるが、実際問題そのとおりであるわけだし、

 俺……道寺橋、裕太……は心を鬼にして、




「……なれなれしく名前よんですまんな、

 改めまして、ルーテフィアさんでしたっけ?」




「そ、そんな?!

 他人行儀にならなくてもいいじゃないか! ボクとキミの、キミとのせっかくの仲なのに、

 ボクのはじめてのおともだちなのに!!」




 どうも、のどごしが悪い。

 もっかい冷水を呷って、……



「……だ、だよね、? りょ、りょうみんさん、」


「この現代日本のここは、お宅のお家の土地か??」


「えっ、ぇう……ゆ、ゆうちゃ、」


「……、、、」


 おれは指で、“鼻をつまんでチーンとさせる”のしぐさをとってみた。

 すると……目の前のお子様には、それだけで十分だったらしい。

 目に見えて怯えた。


「え、えうっ?! た、たびしょうにんさん……~~!」


 涙目になって沈没した、この目の前の、こいつ。

 このままやっていても、埒が明かない。

 はぁ、……とため息の吐息を吐き洩らしつつ、俺は……


「たびしょうにん、って言うのももうヤメテ……

 おれはしがない無職のニートのひきこもりで、

 ここは、あの勝手口がつながっている、只の普通の一軒家。

 俺は、この家に生まれたときから住んでいて、


 そして、この国は現代の日本!」




 めのまえのこの子は、なにをいっているのかわからない、

 というような瞳で、俺に相対している。



……、、、




「わーかった?」




「ダンジョン気分で荒しにこられちゃ、こまるのよ、

 一応生活住居なんだからさぁ。

 あらされたらまずいのよ、おわかり?」




「へ、へぅ……」





「お返事がたしかでない。」




「え、ぇぅ~?!」




 ここまで5連発で、この子へきつく、物あたりをした。




 はたして目の前のこの子はきょとんとした顔を続けているけども……

 それでもこらえているのを続けて、(反省しているのか??)、なにもかんがえていなさげな、無垢な笑顔を浮かべて、俺に尋ねた……

 精一杯の、ひたむきな笑顔を浮かべて、




「…………なまえ、おなまえおしえてくださいっ!」




 ん?




「あ、あなたは、ゆうちゃんさんはボクの名前、おぼえてますよね?

 ね、ね?

 そ、そうしたら、ボクも、ゆうちゃんさんの、おなまえ、知りたいなぁ、って……

 そしたら、ボクたち、もっと仲良くなれるよね?……」








「おれとあなたの間に、どういう関係があっての、

 それをそうする前提なので?」




「……えっ?」





 このとき、どうやら、俺はこの目前のおこさまを虐めすぎてしまっていたらしい。




「う、ぅぇっ、ぇぅっ、…」




 ルーは目に涙をうるうると貯めると、目の端から見る内もなくこぼれだして、

 みるみる内に、その領は増えていき……





「あ、あぁぁぁぁあああ~~~あぁん!!!」





 と、泣き出してしまった。





「お゛と゛も゛た゛ち゛になったのに、おと゛も゛だちになったつもりだったのに、



 つもりでおわってただなんて、



 たしかに、そうでしたぁ゛!! そうだったんですよぅ゛!!!

 なまえもしらない、ボクはあなたのなまえもしらないっぃぃぃなんてえええぇ……~!!!」




 目の前のこの子……ルーは、大泣きになきはじめた。




「ともだちしっかくだよぉぅ、ともだちになったつもりだったのに、

 なれたつもりだったのに~~~~!!!

 うぇんぅぇんぅえん、ひっぐ、うえぇぇぇぇん!!!!」




 話し始める最初にその手に持たせた冷水入りコップに、

 頬を垂れた涙の粒が、はらはら、ぽたぽた、と垂れ落ちていく。




…………、、、




「あーあぁ、おにいちゃんがなーかせた、」



「バカいも、いつのまにそこにいたのか……こういうときだけ、おにいちゃん呼ばわりして」



「かーわいそ、かーわうそ、

 ま、くそあにきには、おにあいだよね!」




 きゃっきゃっ、と笑いながら、

 部屋の扉をあけて出現していた我が愚妹は、そう言って階下へと降りていった……




「……、」




“ともだち、に、なる”……か、





「……、」




 あれは、間違いだったのか……


 いや、そうと片付けるのも、なんというか、性分に悪い。




「ゆうた。」



「はひ、?」



「ゆうただよ、それが、俺の、なまえ!」





 昼下がりは真っ盛りのころのこと。


 おれはそうルーテフィアに言いつけた。






「あ、ありがとう、ございま! ずずぅぅっ、」




 盛大に鼻をすすったルーテフィアに、なんまいかのティッシュをひったくってやり、渡す。




「ずずっ、ずっ……」




 へたくそに鼻水をすするルーテフィアを見つつ、俺はうらぶれるしかなかった…

 あー、なんだろうね、俺ちゃん、どうしようもないやつ。









     * * * * *







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