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1(1/8)-ぷろろーぐ-

###1(1/8)-ぷろろーぐ-



プロローグ:いまから三ヶ月前の俺へ




挿絵(By みてみん)




 蝉の鳴き声が聞こえる……──


「うぅ、ん、」


 

 誰だってふと思う事はあるだろうか? ここ(現実社会)とは異なる、違う世界の存在……


 異世界の事を。




「うぅう、うっ………んっ、むにゃ……」



 異世界。

 ここではない、こことは地続きではない、異世界という、それ……

 生憎とも、世間一般では創作物といった娯楽の形で触れ合えるとはいえ、

 それがまさか現実にあるとは、誰だって思いやしないだろう。



「ゆぅ……た……」



 だが。俺の場合はそれが違っていた……と言うと語弊があるだろうか。

 正確には、




「ゆうた、ユウタ、ねぇ、」




(ん……ガ……)



「ねぇ、ユウタってば、」



 

 二重の意味がある。

 俺ちゃんにとって、というのと、もうひとつ。

 とりあえずは、このふたつについて、だ。



……異世界というものがいっときの白昼夢のようなものだというなら、

 その境界線からこちら側の、現実というのも、またまどろみの中のモノでしかないのであろうか……



 ニワトリが先か、タマゴが先か?

 というのは、有名な謎掛けの類であろうか。

 ただ俺は浅学につき、この謎掛けのちゃんとした正しい答えというのは、未だにしらないままだ。



 ただ、一つ断言できることがあるとすれば。

……なので、1つ目の、としては、こうだろう。

 俺が遭遇した“異世界それ”なるものは、俺とその関わってきた人間たちを、

 そう簡単にはやさしく安穏と放っておいては、くれなかったということだ。




「ねえ、ユウタっ」



 ガ、ムニャ………ァ



(微睡みに沈殿する俺の意識の外から話しかけてくる“そいつ”の声は、スルーしつつ…)

 

 自分の場合はどうにも違ったのだ……

…まさか、家の勝手口が、そのまま異世界と通じる、摩訶不思議な扉になってしまっていただなんて。

 そのうえ、それはなんと、入ってしまったらもう戻れない!?……などという類ではなく、

 扉を境界としたらその前後からの相互に、出たり入ったりが出来てしまう代物で……。


 つまり、異世界むこう現代日本こっちの両方に、

 何度でも何回でも、閉じたり消えたりすることもなく、

 相互に行き来できるような、そんなトンデモなシロモノだったのだ!

 ということである。


 こうして俺の日常は、非日常と連結してしまうこととなった…。

 まあ曰くはともあれ、そんなご自宅怪奇現象な、

 ポルターガイスト・ハウスと化した実家に住まう、

 発見と遭遇を成し遂げた第一人物なのが、この俺ちゃん…というわけであったのだ。



 そして、奇縁というのは続くもんだ。

 それが何かというと、異世界の大地に踏み込んだその日のうちに…

…俺は“そいつ”と、出くわした……ということである。

 第一村人、などという言い回しはどうかとも知れないのだろうが、

 これが、俺にとっての、

“第一異世界人との発見と遭遇”、というわけであったのである。



 なにはともあれ、それが初日の初っ端にあった出来事であった。

 未知との遭遇ということとしては此処まで述べてきた通りの経緯と推移とその状況で、

 そうして異世界と…こちら、日本を行き来する生活。

 俺のその日々が開始されたのだ。


 だが、……ぶっちゃけて言おうか。

 かーなーり、この奇遇はおねだんお高めだった…。


 あんまりにも、ワタクシめの事前見積もりが、甘かったのであります……

 折々と節々の度、食い扶持というモノの重みを思い知らされた!


 人間、一日にどうして過ごす?


 まず、ごはんが必要じゃろ?

 それも、できることならば、美味しいごはんの方がいい。

 それも、腹減った! メシ! と言えば、

 まあ万年ニートであったところの俺の日常の食生活としてはそうであったのだろうが…、

 しかし、この知り合ったばかりの異世界人は、

 どうにも大変に困窮しておられていた、そのような状況と状態だったのであります……



 そうなのだ。この知り合った異世界人というのは、

 いわゆる、欠食児童。

 ……というものだったのである。

 当時の状況としては。



 そりゃあ、いくらニートである自分でも、

 一回や二回なら、美味しいご飯を食べさせてあげられたのさ。

 しかししかし、そんなのは、たまの気まぐれついでならば出来なくはない、ということであって、

 それが一日三食以上、それも日々の毎日、しかもそれにおやつとジュースつき!

 としようと思ったらば、、

 そうしたくても、そうそう払えて負担できる金額と成って済むワケもハズもなく……(泣)



 なにせ、まがりなりにも、人間のひとひとりに、満足いく日常を送らせていこう、というのが、その最初のミッションであったからである。

 そのために、なにかと負担は…主に金銭的な面でなにかと、俺の財布ちゃんへとダメージは吸い込まれながら、その負荷は高く付いたのは事実なのだった。

 サイフちゃんのHPが、もうマッハで削れていった!! そういう次第でありました。



 その経過のもたらした結果は、もう論ずるまでもないだろう。

 市井のなんも変哲もないニート青年の手持ちと日々のお小遣いでは、到底ではないが、養っていけなかったのだ!


 しかししかし、なれどされど、

 一度情けを掛けたその相手を、今更として野に帰させるのは、いくらニートとはいえ目覚めが悪かったのであり……



 だから、そこから俺は悪戦苦闘を始めたわけなのである。

 勇ましく、希望を持って、前向きに、そして背水の陣で!

……が、そんな世間様の条理というのは、斯くも厳しく、困難なものである…

 これというのは、そいつとであってからその後のしばらくで、俺という人間にとっては骨身に刻むほど、遅れて思い知ったことだ……



 だが、しかし。

 その“相方”を中心にした生活がだんだん軌道に乗るにつれて、その収支は……なんと逆転を始めていった。



 というのにも、曰くと由来はある。

 その、そいつ…の食い扶持を稼ぐために、苦し紛れで始めた、現代日本~異世界間の商売……

 俺が始めたそれは、俺の担当し活躍した範囲においては、

 所以ゆえんがあって大した貢献と効果はでなかったのであろうであるのだが、

 しかしそのすべては、俺が助けた欠食児童のそいつが……

 異世界だとすごい、天賦の才と素地の芽があった! ということなのである。



……言っておくが、俺はギャンブル・ドランカーという訳ではないので、あしからず。

 こんなご時世だし、みなさんは上手い話には最大限注意しよう。


 そのぐらいの信心は、自分にとてあるっちゃあるのだ。 

 まあ、後払い? 後祓い? の字句というやつとして、そう言わさせておくれ……




 ともはあれ、そんな経緯を経て、俺の日常にはあたらしい“隣人”がプラス・ワンされ……

──そうして、現代日本…こちらがわ…と異世界を行き来しながら、

 の日々が幕を開けて始まり、それから今日まで続いたのである。


 さて、

 もうけの方法は、手始めには古典的なものだった。

 片方の世界で得たものを、もう片方の世界で、換金する…というモノ。

 交互に転売換金…せどり…をすることで、相互の世界で、資本を作り…そうして高まった元金をつかい、もうけの構造を、さらに大きくさせていく…。

 そんな序幕から始まった転売生活。

 


 すると…、あるターニングポイントからさらに発展して、

 今では色々いくつかの、独自の売り物を持つに至った、俺ちゃんたちである。

 

 何なのだ? といいますとね、

 運悪く? 良く?

 火急の案件、といえるほどに差し迫ったピンチな事態が折よく勃発した結果、

 その急を要す需要に、たまたまジャストに当てはまったそのニーズ…需要…もあって、

 作った端から飛ぶようにユーザーの元へ出ていくそれらにより、

 今のところ、この商売は結構盤石なのではなかろーか?

 というところまで、短期間の内ながら、漕ぎついたのだ…。



 ものには言い様、という言葉があるが、これもその範疇におさまるだろう。



 であるので、肝心の厄介事さえ勃発しなければ、きっと今頃は……

……なかなか、リッチで、ゼータクで、ラグジュアリィな、

 安楽椅子の上でマッタリしながらの、難易度を、ありったけの金とあるだけの物資で買う方式の……華やかでイージーな、異世界殖産産業勃興物語……。


 そんな絵に書いた夢のごとくな、きらびやかなそれの、その主役格的生活! の、くじひもが、

 この俺ちゃんなんぞの前に、転がってきた…様だったろう瞬間が、まあなかったわけではなかった。



 まるで天上からの蜘蛛の糸が、するりと降ろされたかのように……







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