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5(5/17)-異世界っ娘がやってくる-

###5(5/17)-異世界っ娘がやってくる-


     * * * * *





「あ、あ、あの……」「え、えぇっと…………――」




 互いにどもり合うばかりで、

 しばし数拍の間が空いたのち、




「え、えっふん、えぇっふんふ、ごほん、コッホン……――えふんっ、」



 先制を取るべく、

 先に体制をたてなおしたのはルーテフィアの方で、




「や……やぁやぁ、これは。きれいでかわいいオジョウサン、あなたはこのおうちの住人ですかな?」




 えっへん、と平たいようにしている胸を張りながら、

 ルーテフィアは内心、



(キマった……! このボク、おじいさまの孫であるこのルーテフィア・ダルク・アヴトリッヒによる、カンペキなごあいさつ……!

 おじいさまの社交界での気さくさを受け継いだこのごあいさつで、 

 並の淑女ならもうイチコロに親しくなれて……って、タチアナはどういうつもりでボクにこうできるようにしてくれたのだろう?


 でもでも、どうしよう!? ボク、このおうちの引き出しとか目に付いたのからとにかく開けてばっかりで、気分良いから壺があったら割っちゃってたくらいだけど、でも見つからなかったしまだ割ってないし、

 でもでも、あやまってゴメンナサイって、ちゃんとごめんなさいすれば、ボクの家のメイドなら、げんこつ一回とほっぺたむにむに三分間の刑で済むのだけれど……でもここのおうちでそれですむかはわからなくて

 だからだから、えぇーっと……――


 お、おこられたくないよぅ!?)




 というところまで一気に思考が逆回転だかした後に、

 しかし我に返ってふと視線を見上げたとき、





「だ、だれですか……っ?!」





 そこに居たのは……自分よりもすこし年齢が下くらいの、

 なんとなく髪の色とかで関連性がありそうだが、

 それでも愛らしく整った顔の造作といい、つやつやで清潔そうで綺麗そうな頭髪といい、ばっちくなさそうな全体の格好と言い健康的なプロポーションといい、

 とてもではないが、あのゆうちゃんさんとは何の関係もありそうでなさそうな、でもありそうな、


 そんな美少女である。





(みためはにてないけど、なんとなくの雰囲気は、まあにているようなきがする……?)




 想像が及ぶに至り、

 そこでルーははっ、となって、




(そんな!? ゆ、ゆうちゃんさんの、奥方であったり、むすめさんだったりして?!)





 ずぎゃーん!! と、悪い予想がルーの脳裏にほとばしったのが今この時である……



 のはさておき、





「え、えぇっとぉう、ぉ、オジョウサン、」




 それが気になってそれがきになって、

 今気になるそれをたしかめようかどうしようか、との呻吟の末、


 ルーはたじろぎながら二の句を告げようとした。

 心の準備はできた。文面の用意も完了した。

 さあ、今だ!





「オジョウサン、は、このおうちの……「ちょっと、おかーさん! こどものフシンシャがいる!」……へぅっ?!」





 しかし爆発したかのように眼をぐるぐるさせながら、猛然とした勢いで駆けだして、二方通行の廊下でルーと反対側の方向へ向かったその少女に、

 ルーはおのれの二の句をつたえることさえできなかった。





「ぇ、えぅ……」




 自分のあいさつは変だったのか? と自問自答するルーテフィア。

 されど、落ち込んでいる暇はそうそうなかったのである。






「まぁ!? だれこの子!!……あの時の?!」




「あ、ぅ、え、えぇと……」「おかあさん!こっち!!」




 そして……玄関口から、井戸端会議を中断してやってきた、ゆうちゃんさんのお母さん。






「どちらからきたのかしら? あのときもおもったけど、見たところ、外人さんよね……?」





「えぅ、え、えぇと~~~~~~~!!!??」





 たすけて、たびしょうにんさん!


 ルーは心の内で唱えた……召喚の呪文のごとく。





 するとすると、





「ちょっと くそあにきー!」




…………




「くそあにきー! こういうときくらいたすけろー!」




…………なんだよ、バカいも!





「フシンシャ、ふしんしゃがあらわれた! リビングにー!」




………………はぁ?!




 そう少女が叫び終えると同時に……

 上階でなにやらどっかんばっかんと物音とモノが崩落する音が連続したのち、

 どて、どて、どて、……と、


 なにやら重量感のある足音とあまりテンポのよくない足運びで降りてくる、人物の気配……




「まったく、なんだよ、今ゼッコウチョーで入り用なんだってのに……、……って、」




(あっ……)




 現れた。

 ゆうちゃんさんだ!!





「あっ、たびしょうにんさん!」


「おまえっ?! なんでここにいるのッ」




 腕を振り回してよろこびはしゃぐルーテフィアに、なんだかばっちい格好の使い古した室内着を着た、道寺橋 裕太 ……は、


 傍らの、妹……道寺橋 舞依 ……に、眼の向かう先を変えて、




「うわっ、ちょっとアニキくさいッ! ニンシン? させる気か!!」


「模型用シンナーの揮発臭で孕めるもんなら妊娠してみやがれ、よ。

 まったく、この愚妹ぐまい舞依まいちゃん、が……「コノヤロ!」ぐぇっ!」




「え、えぇっと……」



 偉そうに構えた瞬間、秒としないうちに蹴手繰りにより撃破され沈黙したゆうたの姿をみて、ルーテフィアはなんだか、面食らった。




「ちょっとゆうちゃん、この子はなんなの?!」

「えぇと、母ちゃん、俺もしらないよ……」





「あっ! 水がでっぱなしじゃん!……タンスが全部あけられてる!! ちょっとくそあにきー!」



「しらないってどういうことなの!? ちょっと、ゆうちゃん!!

 おとうさんが帰ってきたら、家族みんなで家族会議するわよ!!」


「勘弁してくれよかあちゃん……」


「ちょっとー! くそあにき、く・そ・あ・に・き!!!!

 はやくなんとかしろー!!!!!」


「あぁあっもうっせえなぁバカいも! ええとな、かあちゃん、これはその、あれがこれで……」


「説明なんてするよりも! まあ、水が出しっぱなしになってるじゃない!!!! ちょっと、ゆうちゃん!!!!」


「あ゛ぁ~~~~~、もう!!!!!!!」




 ヒステリックな二重波状音波攻撃に、先にギブアップしたのはゆうたのほうだった。




「ちょーっちストップストップ!」



「前に外散歩したときに知り合ったおうちのお孫さんなんだよって!」



「俺が帰すから!!」




 そうまとめて、妹と母親からの二重の追求を、なんとかいったん打ち切った。



「はぁ………………、、、、、、、」



 ゆうたは、煙草があれば胸元から取り出して口にくわえんか、というような仕草のみで最大級の哀愁を吐息として吐きながら、




「で、なんだけどぉ、」




 そういって、渋い眼でルーテフィアの姿を見る……




「ちょっとちょっと待ってよギブミー、

 なぁんでキミぃ、がここにいる?」



「あのとびらから、」



 ルーが指を指す。


 指された先の向こうの勝手口は、半分開きかけになっていた。




「えぇっとねぇ……キミねぇ……」




「?」






 ゆうたは惑うしかなかった。












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