2(2/12)-異世界っ娘がやってくる-
###2(2/12)-異世界っ娘がやってくる-
* * * * *
(side:ルーテフィア)
「………」
木造造りの、もう何度日常の目覚めと眠りを繰り返したか分からない、おじいさまの屋敷の、そのボクの部屋の中。
目覚めたばかりのボクは、ベッドの上でしばらく半分開いたまぶたをこすった後、なにともいわず、おなかのあたりを何回もさすってみた。
「…………、」
にへらぁ、っと。
そんな表情になったのだろうボクの顔はとろけていて、あたまのなかで考えていることはというと、今朝の食べた、あのとてもおいしい食べ物たちのことでいっぱいだった。
「とっても、おいしかったな……」
あのときにいっぱいたべたつもりだったけど、
こうして寝て目覚めて起きてみると、おもいだすだけでよだれがたれてくるくらい、おなかはペコペコだ。
(もっと、たべておけばよかったのかな……?)
思い返すと、とてつもない経験をしてしまった、その感慨というのを
ボクの理性は訴えかけていた……
あれ? なんだろう、ことばがなにかへんなきがする……
でも、それくらいにボクが変になってしまうほどの経験だった。
「…むふ~~♪」
あんなにいっぱい、
たくさんのごはんが食べられて、とてもしあわせだった!
幸せすぎて、ボクは天国にいってきた気分……♪
「失礼いたします……。。。。。」
と、そこに入ってきたのが、メイドのタチアナだ。
「!」
はっ、となって、びくり、と固まったボク。
タチアナはやさしいけど、いざとなったらとっても厳しい。
いつも怒られないように、ボクはタチアナがいるときはどきどきしているのだ。
「ルーテフィアさま、朝餉でございます……」
* * * * *
ごはん、という事で、呼ばれて行った先で、
「おはようございます、ルーテフィア様。こちらが今朝の朝餉になります……」
「う゛ぇっ………おぷ、うぇえぇえ…っ」
まずい! 拙い、不味い。ええぇぇえぇえぇぇぇん、…………
そんな今日の朝、
ボクが行き当たったのは、今日もごはんとして出た、
黒麦の塩粥……これが出てきた朝食だった。
きょうもまた、我慢して食べる……
我慢……
「…………」
「ごちそうさま……」
「これ!エリルリア、あんたったらば、毎日酒とつまみで生きてるような生活しおって! こら! 待ちなさい!」
おしいさまは表情一つかえずに、この黒麦粥を完食されていた。
やっぱり、ボクのあこがれるおじいさまだ………
おばさまはというと、おばあさまのお叱りをものともしないで、
今日もこの塩粥を残して、自室へと去って行くのだった……おばさまは個人であれこれ買いためがあるから、
部屋できっと自分の食べ物を食べるのだろう……
「はぁ……」
つまんない一日の始まりが、今日もまた過ぎ去った。
「ルーテフィアさま? この問題のここ、とここ、の答えはわかりますか?」
「え、えっと……こうかな、」「はずれですぅ! もぅ、ルー様、しっかりしてくださぁい!」
ベシッ!
「はぅ?!」
いたいよぅ!
こうしてくるのはイリアーナがほとんどで、
だけどいつもニコニコしながらそうしてくるから、とてもおそろしい。
タチアナの時は、間違えた時、にらみつけてくるだけだ。
だけどすっごくこわい表情でにらんでくる……
問題をまちがえると、
メイドは自分たちの怪力にはむとんちゃく…
…気に留めるつもりすらないように、ボクのことをたたいたりつねったりしてくる。
でも、ボクは騎士になるんだ。
誇りあるおじいさまの孫なんだ!
だから、我慢…………
「ぇぅ……」
それでも、これが毎日いつも続いているから、ボクはくたびれてしまっていた。。。。。
朝の学習を終えて、ボクはひとり、自分の部屋のベッドの上まで戻ってきていた。
「……はぁ……、、」
不満だらけの毎日。
そんな日々で、代わり映えのあった出来事といえば……
「あっ!」
そうだ、あったのだ!
ボクにとっての、とっても不思議な冒険が!
「むふ~、♪」
そう思い立ったら、ボクはじっとなんてしてられなくなった。
あとは……
まず、厚がけ布団を簀巻きに丸めて、
できあがったその上に薄がけ毛布をかぶせて、
偽装工作を万全にする……よし、今日もかんぺきだ。
こっそりと部屋から抜け出して、
ボクは、異世界の…
…あの扉の向こうを確かめたくて、その場所に向かった。
ボクだけの“ふしぎなばしょ”。
ボクだけの、冒険!
そうして、たどり着いた場所………扉の祭壇の元で、
ボクはその扉の前に立った。
「この扉の向こうが……」
ボクは、ゆっくりとドアノブを回し……
* * * * *