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16(16/16)-500円のファンタジー-

###16(16/16)-500円のファンタジー-


 

 

 

 

 

 一通りの準備ができて、呆気にとられていた貴族っ娘と共に異世界側に再び行って、飯の用意をして……



 時計を見ると、もう4時半である。







「その…ぉ」



 異世界側。扉の縁に腰掛けて出来上がるのをしばらく待っていた時だった。 

 いままで黙っていた異世界っ娘が、口を開いて、




「貴方は、この扉の向こうから来た方……なのですね?」



 俺はぼりぼりと頭をかきながら、まあ口ごもるしかない……、のだが、



「我がアヴトリッヒ家、おじいさまがこの地の鎮守を託された時よりまえから、この扉はこの場所にあったといいます……」


 

 そういうと、



「その時から、この扉は、決して、開くことはなかった。……と聞いてます。」



 なるほど?




……しばし無言の間が続いて、




「ちっちゃいときは、よくかくれんぼしたりしたんですよっ。

 この開くことのない扉のまわりでっ。

 メイドたちや、おじいさまといっしょに……」



 ふぅん、と流し聞きする、俺。



「おかあさまには天使様がこの扉の向こうからやってくるんだ、とか、叔母様はアクマの住むクニがあるんだ、とか、いろいろ教えてもらいながら育ったんです、……」




 じゃあ、俺の事はどっちだと思うか?




「ふふん、それは簡単な問題ですっ、アクマさんじゃなければ、ボクの天使様なのですよ!」




 やけに自信満々に、答えたこいつ。



 

 

 

「ゆうちゃん! できたわよ!」

 

 

 


 母ちゃんからの呼び出しだ。

 

 


 

「ねぇねぇ、」 

 


 なんだよ、 

 

 

「ゆうちゃん、っていうの?」

 

 


 はなを摘んでやった。鼻を摘ままれたこいつはおもいっきり嫌嫌ってな反応をした。

 

 


 

「えぇぅ――っ……」




 異世界側では、勝手口の扉を取り巻いて、花見会か、宴会のような様子となっていた。


 その勝手口の扉の前……よく見ると、落ち葉の下に祭壇のような石造りがある……で貴族っ娘を見ながら、




「じゃあお前はなんていうんだよ、」




「? 名乗りません、でしたっけ?」



 こてん、と首を傾げて、それから俺の顔を見上げながら、



「ルーテフィア・ダルク・アヴトリッヒ、アヴトリッヒのルーテフィア、っていいます、」




…ふぅん、



「ふふー、んっ////」



 ん? どした?



「人になのるなんて、はじめてだったんですよぉぅっ、騎士物語の主人公みたいにかっこよかったですかっ?」



 さて、どうかな、



「じゃあお前の名前、ルーって呼んでやるわ」




「――! うん!」




 咲いたひまわりのように、まぶしい笑顔でそいつは返事した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ばつが悪い、という言葉の意味を思い知った日になった。

 

 




「ボクのはじめてのともだちっ♪」





 訂正、このぼっちな娘、ぼっちっ娘の貴族さんとは、これからもどうなるのだろうか……




まあそれはともかく、




「ああ、そうだ……」「えぅ?」



 とりあえず、俺はおもむろに、コンビニ小袋の中から目当てのものを取り出して、



「じゃあんっ」「あっ」



 今度こそ、である。



「福福鯛リベンジだ! 改めてコンビニで買ったから、さあ、食おうっ」


「はわぁっ……!?」



 リベンジ、ということである…



「ちゃあんとな? これは、すごく美味しいお菓子なんだっ」


「おかし!?」



 ルーは俺の手の中の包装を見て、



「これが……?」



 怪訝になる、ルー。

 訝しみながらも、ルーはこのお菓子の包装を手に取ると、



「……≪ ── ≫……」



 儀式のごとく?

 何かを念ずるように、少しだけ力を込めたかのように……ルーはそうやった。



「!」



 すると、



「……なるほど! 異世界のお菓子、ということなのですね!」



 そういっとるけんによ~…



 まあともかく、包装を解いてやる……

 悪戦苦闘するルーを手伝ったりもしつつ。



 そうして剥き身になった福福鯛を、




「ぱくっ!」



……サクッ……



「!!!? うぅ~~ん、♡ 」



 どうだ?



「おいしいっ!!! とっても、とっても美味しいですっ!!!!」



 いざ食べてみたら、一発の一撃でメロメロになってくれた、ルーのやつ。



「サクサクした黄金色の焼き菓子の殻の部分と、中のふんわり、ふっくらした、この甘い部分がほろりととろけて……

 なんだか、ふかふかしてますっ、さくっ、さく、 

 とっても、すごいたべものですっ!!!!


ぱくっ、さくっ、さくさく……」



 あっという間に、ふたくち、みくち、と口に消えていき……



「……あっ……そうしたら……」



…のだが、

 中途で咀嚼を中断したルーは、



「そうしたら、」



 ルーは、よろこんだ表情になって、



「お祖父様!」「うぬ?」



 げっ、と俺はなった。

……ルーテフィアは祖父のガーンズヴァルなんたらの元へ駆け出していって、



「おじいさま! これが、ふくふくたい、だそうです!」


「ウヌ……」



 ガーンズヴァルは、ルーの手元のぷくぷくたいの半分と、そこから少し離れた俺の顔。

 それの相互の両方を、なんども見たりしながら、


……永い間、そうしていた後に……



「……“サクッ、”… !!



……美味なり。」



 ルーが半匹残した尻尾側の半分を、ルーはガーンズヴァルにへとあげたのだ。

 それに対するガーンズヴァルの反応を見て、ふぅん? と俺は思って、



「ほー? ガーンズヴァルとやらさん、孫には正直なんですね~?」



……孫の好意を無碍に出来る祖父がこの世におるか。



 そういった後、ごほん、ごほん、……と咳を切って、



「我は、まだキサマにほだされたわけではないぞ…?」



 ふぅーん?



 ま、いいや。ルー。こっち向きな。



「ほえっ? ……はうっ?!」



 福福鯛、さっき、たっくさん買っといたんだよねー。

 まだ4個あるから、ジジ思いで他人を思いやれる良い子のオマエに、ほれ、ご褒美じゃい、



「は、はいっ!!///// わかりましたっ! ゆうちゃんさんっ!////」



 ルーテフィアは笑顔を満開に咲かせて、はしゃぎ喜びつつ、



「む、むぅ、」



 ガーンズヴァルの逡巡や落胆というのを、ユウタ(おれ)は視界の片隅でしっかり目撃しつつ。



「えへへっ、りょうみんさん、旅商人さん、ゆうちゃんさん、ありがとうっ!/////」



……こんどこそ、俺はコイツの笑顔を引き出すことに成功したのである。




( 勝利条件、達成… ) 



 ひとまずは、これで俺も満足さね……

 さて? 三日目の朝が訪れようとしていた。





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