13(13/16)-500円のファンタジー-
###13(13/16)-500円のファンタジー-
……あーもう、なんだかなー!
ここから先も、俺にとってはもう予期したものではない。
「ボクの、身体で、! しはらうことは、できますか!! と、扉の向こうの、っ、……」
カラアゲ弁当、ひとつ五百円。
なのに、支払いの話になったら、大事になりつつある。
「あ、悪魔だとしても、ぼ、ボクの魂で、は、払えるなら……生涯の一生を、売り払っても、かまわないから、ららららら……」
なんかやっかいな誤解が起こりつつあった。
「これ!ルーや!! 本物の悪魔ともしれぬ相手に、そんな言葉を言ってしまったら……!」
「おじいさまっ、これはねっ、ボクたちがいつも食べてる塩粥より、ずっとずぅっとすごいものなんだっ…、ごめんなさい、黙ってたの……
だまって、ひとりじめしちゃってて、ごめんなさい!
だから、おじいさまにそれをたべさせてあげられるなら。ボクは……。
なんだっても、なんだっても、できます!
…ねっ、だ、だから……」
それで、これで、本当にかまわないのか? と冷やかしてみた。
「…うんっ、こ、こわくないよ?、ぜぜ、ぜんぜんへいきだもんっ!」
どんなことがあっても?
「………う、うんっ! ていそー、だって、だいじょうぶだもん!」
………。。。
「……ぇぅっ、……そのとおりだよね…そうで、すっ、よねっ……」
ん?
「ふ、不服、ですよね、っ、? やっぱり、不本意、ですよね……だ、だって……」
ん、何が?
「きょうは、あ、貴方から、……たびしょうにんさんから、贈り物まで頂いたのに、」
うん、…ん?
「頂いた、贈り物、だったの、にっ……
ぷ、福福鯛、でしたよねっ?
たいせつ、な、たい、せつ、な、大切なぁっ……贈り物だったのにっ……
まもれなくて、ご、ごめ、ごめんな、さ、あぅ、ずずっ、ぐしゅ、ぐすっ……うぇええっ……」
ああ? あれは、最初から、ちょっと異世界人の現代日本食品の食レポが見たかっただけ、っつーか……
たいして含意はなかった、っつーか…
「待ってくれ、異界人よ!
ルーやよ、あれは…我が勝手にやった事故に……!」「で、でも、おじいさまっ!!」
…………、、、。。
「ごめんな、さ、い……ひれいを、お詫び、させてください。
ごめんなさいっ、非礼を侘びますっ。
もうしわけ、なかった、で、すっ。なんと、いえば、いいか、よいのか、………
処分、されて、しまっ、た、こと、の、非礼の、お詫びを、いわせてくださ、ずすっ、すっ……えっぐ、ひぐっ……ええぅ…………」
……はあぁ……
「まあな、これは、最初からお前の分だ……」
「! ほんとうに?! ぐすっ、
あ、ありが、ありがとう、ございます! ぐしゅっ」「ま、孫よ、…」
いえる言葉はそうない。
年下の子に、無理やり言わせているような気分になってしまったのもあったが。
なので、
気の毒に……というか気の毒な子をみる目のまま、弁当の残りをスッ、と手渡してやる。
貴族っ娘は決意した顔で弁当を受け取ると、ごくりっ、と喉を飲んで、
「おじいさまっ、」
「! いかん、やめておくれ、ルーや!」
貴族っ娘は本当に心から輝いて見える笑顔で、
「ねぇねぇ、これで…」
ガタガタになった弁当容器を開けて、
「…! あっ、」「………」
──しかしカラアゲはもう、ひとつしかなかった。
メイドがすでに食った後なのだ。
ずたずたになった弁当の、それを伝えて言う事が出来なかった俺も俺だな…
「………、」
…と思いきや、
貴族っ娘は落胆はしてない、という様子で、顔を左右に振って、
「おじいさま、カラアゲ、たべよ?」
「! ……む、むぅ…」
屈託のない面持ちで……そう祖父に勧めるルーと、
年甲斐もない幼子の様に、孫からのそれを拒もうとする、ガーンズヴァル爺。
「むぅ、むぅう………──」
「おじいさま、たべて!」
ルーの、貴族っ娘の……
精いっぱいの笑顔だった。
差し出されたスチロール箱の前で、爺は、腹の音をまた鳴らした。
「…──っ、──っ―、―っ」
腹から息を切らしたかの様な音が、ガーンズヴァルの五臓六腑から漏れた。
ジジイは、ぽろぽろと涙の粒を止まりなく落としながら、からあげ弁当の、残りひとつだけのからあげを、口に入れて、食べた。
食べて、数えきれないほどの回数を、何度も咀嚼した。
…―――、…――、、、……っ
見てられない、
言い様もない、そんな雰囲気だった。
「ん?」
なんだかいいにおいが流れてくる。
見ると、家につながる勝手口のドアが半開きだった。
家の中側の、勝手口の前には、俺の家の台所がある。