12(12/16)-500円のファンタジー-
###12(12/16)-500円のファンタジー-
まあ教えてやろうか……
「これ、イチマイで」
そういえばサイフがあった。
腰ポケットから取り出したそれから、さらに目当ての硬貨をとりだして……
「ニヤリ、」「!」「!?」
キラリ、っと輝くニッケル硬貨の輝きを、
一枚分、指に取って、みせつけた。
「な、なんだこの……貨幣はッ」「す、すっごい!」
そう言われた手の指の中の五百円玉ちゃんは、ゼロの数字の中のホログラムをうれしげに輝かせていた……
ただの五百円玉でこの驚きようなのである。
個人的には紙幣の質感のグレードも相当であると思うのだが…はさておいて、
「ところでね、このオベントウ、あなたはんのお孫さんはね、もう今日までに二膳も、お食べになられているのですよ。どうしてくれましょうかね~、“ ? ”」
「! そ、そんな……」「あぅ!? う、えっと、……」
主張するべきは主張しないとな、という判断である。そうすると俺は悪徳商人の端くれになるのだろうが…
こうなりゃ、旅商人さまさまってね★
するとすると、
爺も孫も、
とたんに慌てだして、
「い、いったい幾らするのだ……支払いはっ、ルーや、だから買い食いは危険だと、あれほど!」
「や、やっぱり、お金、しちゃうんですか! はぅ……ぱたん、きゅー」
いいように反応を返してくれる、爺と貴族っ娘である。
しかし、
「あ、…で、でも…あ、あのっ、」
食い下がってきた。
そうとうにドキマギした表情で、顔に熱と汗をかきながら、
そんな感じで意外な反応を返したのが、貴族っ娘の方である。
どうしたのだろうか……
「ねぇ、さっき、このオベントウ、ボクにくれた……のだよ、ね?」
まああげたつもりで今日のは買ったつもりだがな、
だが、手元の弁当をつかむ重量は軽い。
いまさらこのくいさし穴だらけの弁当に、お役目がつとまるか……というと、
と俺が言う前に、
「えっとね、えっと、ね、まって、まってて、ね!」
貴族っ娘は、がさごそ、と全身のポケットをまさぐる……
そして、
「! あった! ボクが、去年の誕生日にもらった、おこづかいの一枚!」
ごまだれ~☆
……と、ルーはそれを両手に掲げた。
が、
「………………中銀貨………………」
中、と名前に付く割には、やや小ぶり気味の、その銀色のコイン……を、自信満々に、俺に見せてきた、この、貴族っ娘。
「え、えへへ、ずっと大切に、お守りにしててよかったっ……
えっとね、これでね!」
………………
「………………、、、、。。。。」
…………………………、、、、、、、。。。。。
「だめなかんじ、ですか……?」
このなけなしの一枚を、
買い取りレートはいくらだろう? 等と鬼畜な事を考えてしまった、俺はなにもいえない…………
「………………。。。。、、、、」
一方、
うる、うるる、と大きな両目に涙を貯め始めた、この貴族っ娘。
「そしたら!」
貴族っ娘は鼻水をすすり、
「も、もし、払えなかったら、………」
そういうと、貴族っ娘…ルーテフィア…はごくり、と息を飲むと、
「ボクの、身体で、! しはらうことは、できますか!! と、扉の向こうの、っ、……」
「! ルーや!、孫よ、そのような事は軽々しく言っては………──」
ぶほ、っ、と唾を吹いたのがこの時の俺だった。
身体で支払い??? 今時の悪魔でもそんなアナクロな事は言わないだろうよ……と思いつつ、
「あ、悪魔だとしても、ぼ、ボクの魂で、は、払えるなら……生涯の一生を、売り払っても、かまわないから、ららららら……」
なんかやっかいな誤解が起こりつつあった。