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11(11/16)-500円のファンタジー-

###11(11/16)-500円のファンタジー-


 





「………」


 さて、俺の手元にはくいさしとなってカラアゲの数が残りともない、弁当のスチロール容器があるばかりだ。


 俺に治癒魔法とやらが掛けられた結果体調が復活し、

 ジジイにも回復魔法が掛けられて復活した、その後の話である。



「ぐぬぅ……このガーンズヴァル、老いたとはいえ……この様な醜態を晒すとは……──ぬう……──」



 じいさん…ルーの祖父のガーンズヴァル…はそういいながら瞑目した。

 ずたぼろになったような見た目だが、恐ろしいことに素の身には傷一つ着いていないようだ……

 メイドたちは地面に落ちたリボンを探していて、大部分が集まりつつある…。



「はぁ……」


 俺もため息をつくしかない。

 さんざんな異世界だ! と俺は評価するしかなかった。

 ここまでの日々をだ。

 たった二日で決闘イベントまで行くなんて、並のワールドの作りじゃあない……相手は萌えない、ジジイだしよ、

 むろんイヤミである。


 で。



「なんかいうこと、ねーのかよ、」「あ、あぅ、その、」



 俺の目の前には異世界貴族っ娘がいる……ルーとかルーテフィアさまとかと家族と臣下には呼ばれていた、件のやつ。


 領主の孫だから故に、縮こまっている。



「おい、」「え、えぇ、」


「どー責任をとってもらおうか。つうかな、お前もこのくいさしになった弁当を見れば、分かるだろ?? まず家臣にたいする教育がなっちゃいないんじゃあないか。そういうことだろ、」



「えと、えと、ぇぅ、ぇう~っ…」



 俺の“SEKKYOU”に、まんまるに開いたおおきな瞳をうるうると潤ませる貴族っ娘…領主の孫。

 ずい、っと、

 ちょいとクソコテのように語気を荒らげた俺だが……



「孫には掛かってくれるな! 黄肌人よ」



 ガーンズヴァルジジイの一喝で、俺は改めてそっちの方へと目線をやる。目だけをな。



「そもそもうぬは、その〈扉〉から現れた者だろう。…我はこの土地の領主で、その扉の鎮守を任せられた者である。」



 ジジイはすごんだ目でこちらを睨み、



「名をガーンズヴァルと言う。…して、お主」



 ガーンズヴァル爺は剣呑な気配を放ちながらそう言った……が、


 身の着が爆発でずたぼろになったパジャマ風の寝間着のはだけた半丁なのだから、恐ろしさ、という物は、すでに、無い。

 フン、とそれに対して俺は鼻息で返答を返しつつ、相手は厳かな目でこちらを射抜かんとしながら、



「窓の向こうの異形……とは言うものであるが、」


「はあ、」



「幻影では無かろう…な。だが、おまえは悪魔か悪霊のたぐいか。もっと忌むべき、外界か、深淵の者なのか……」



「はぁ、」



 爺は殺気を込め、


「こたえられるのか、そうでなからば、その扉はなんなのだ。なにもかもの正体を……言い明かせよ、黄肌人」



「とはいわれてもですねぇ、」「あ、あの」


 

 孫の貴族っ娘は涙目になっていた。

 もっとも、片手間も手間の内である、という具合に俺はダレながらだったが。

 あーもー、見たかった深夜アニメ、もう終わったかもじゃあぁん……




「はぁ」「うぅむ……」「お、おじいさまぁ……」




── ……… ──




「……ひもじいのぅ」「あ、あぅっ」




 ?

 なんどめかの腹の虫の音。

 孫と同時に、爺も腹をならしたのがこの時だった。




「ぬぅ……メイドよ、夕餉の残りはまだあったよのう?」「はい領主様、黒麦の塩粥でしたらば……」


「えう゛っ、」


 黒麦の塩粥? そんな結滞なモン喰ってるのか異世界人は……

 と思いかけた所で、急に思い出した顔になった後、吐きそうにえづいた、貴族っ娘。


 そういえば、オートミールなんてものもあったよな、とも想いつつ。

 でも、それにしたって白い麦を加工したものだし、食べたことはないが、黒い麦は酸味があると聞く。

 そうすると、味はお察し、といった所なのだろうか。



 大丈夫かーきぞくっこー?



「あぁあ、はい………今日も、あの粥を食べたんだって思い出したら、ボクってば、乗っている馬に暴れられた時みたいに、ふらふらってなっちゃって……うぷっ」


“今日も”、と来たか。と俺ははたと考えた。


 言葉の粗を見つけるようなそれもあったし、それよりも、まるでトラウマを思い出したかのような、のように深刻に具合を崩した様子の貴族っ娘に、現代日本の食生活で生きている俺は、些かの憐憫の情が沸いた、というのもあった。


 もしかして、ろくなモン食えてねえのか?と思い当たる、俺。



「……はぁ………」



……貴族っ娘は盛大なため息を、ゆっくりと吐いた。

 自分のおなかをさすりながら。




「………おなか、すいた………」


「これ、ルーや、屋敷に戻れば、塩粥の残りがまだあるじゃろう……にしても昨日の晩は何時にも増して、やけに不味そうに食っておったが」


「ごめんなさい、おじいさま。そ、それ…はわざとじゃなくて……あっ」



 ややあって、




「あ、あの」 



 星を輝かしてひらめいた顔になった貴族っ娘が、扉と俺と、俺の手元のスチロール容器を順番に見てから、



「この、オベントウ…というのは、いくらで買えるものなのでしょうか?」



 貴族っ娘の、いまさらな質問。

 まあ、今から…教えてやろうか……









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