10(10/16)-500円のファンタジー-
###10(10/16)-500円のファンタジー-
「ぐっ、ぐぉぉぉぉ……」「へ、ははは、……はぁ」
とにかくも、オチは着いた。
じいさんの自爆オチだ……と取っくくろうとして、
「お、おじいさまぁ!」「主人様!」
孫の貴族っ娘もメイドたちも、やられたジジイへと駆け寄っている。
逃げるのは今の内だ!
「ふ、えすけーぷ……って、わ、ガッ!?」
爆風で地べたに四つん這いになって進んでいた俺に、どしゃり、と背後から、の一撃!
そのまま、身動きを取れなくされてしまった。
「ぐ、ぐぅぅぬぬぬ……だ、誰だっ!?」
「甘いですね、ガーンズヴァル様に仕えるメイドの一人、この私が、みすみす逃すとお思いですか……、まったくイリアーナは頼りになりませんが。」
顔を反って見ると、そこには、あのイリアーナと呼ばれた小柄なメイドより、多少は長身でほっそりとしているような、もう一人の銀髪のメイドが俺を制圧していた瞬間だった。
ぼ、暴力メイドの二人めがいたとは……
「イリアーナ、なにを遊んでいるのでしょうか?……──ん?」
このメイドが目線を向けた先、俺もさらに顔を反って見てみると、
例の一人目の暴力メイド──イリアーナ──が、なにやら、俺の見慣れた白いスチロール容器をふがふがと暗食している最中であった。
「イリアーナ!」
「ふがふが、ふが……た、タチアナ! これ、すっごいごちそうですよ! 油で料理した雌鳥の肉です!! こ、こんな贅沢な物、この世に宿ってからはじめてたべましたぁぁうふふふふふぅっって、ふがぁっ?!」
「はぁぁ……そんなすごいものが、女神の道理が通るこの世のここの片隅に、都合よくあるわけはないじゃないですかっ……って、。。。。。。、 …………」
手慣れた様子で……履いていた靴の片方を脱ぐと、イリアーナに投擲!
みごと後頭部に直撃させたこのタチアナとやらが俺の背中から退き、
崩れ落ちた暴力メイド1の手元の、これだけは転倒しても死守したとらしき、くいさしになってしまった弁当から、
カラアゲをひとつ、怪訝そうに見ながら口へと運び……
「…………もぐ、!」
ち、ちくしょうめ、この世に神はいないのか。
すっかりぶんどり品の戦果分配の、どろぼう市になってしまったじゃあないか。
断じて、怜悧な横顔の暴力メイドその2の表情が、
ふわ……っと浮かぶような驚きに光った瞬間が、かわいらしかったとかそんなのでは、ない、筈。
「こ、このぉぉぉぉ、俺の買った弁当だぞぉっ、」
それでも主張するべくは主張せねば、とはいえ情けない声しかでないのだが。
そんなのでも、ジジイの傍らであわててる孫の貴族っ娘は、俺の悲鳴に気づいたようであって、
「……ぇっ、えっ! だだ大丈夫ですかっ!?」
「貴族っ娘、おめーの家臣なんだから、なんとかいってやれぇ!」
血相を変えた貴族っ娘が、飛んでくるように駆け寄ってきたのはこの時だった。
「む……ルーテフィア様、この食べ物と、この男との関係の、説明を……」
「そ、その前にっ、タチアナ、回復魔法を、その方にっ!」
「……むぅ…はい……」「いててっ、痛ぇ!!」
身動きがとれん!
今日でさんざん痛めつけられた身体なので、もう動かすのに多大な疲労が蓄積していたのと、大分痛めているのもあった。
な、なにをする。
回復魔法? おい、それって安全なんだろうな!?
とわめきつづける、俺。
「………、ごほん、ルーテフィアさま、その、………、」
なんか、一瞬申し訳なさそうに言いとどまった、タチアナとかいうメイド。
それでも顔を振った後、直後に回復魔法とやらを始めたらしいのだが、
「…!? 魔法力の残余量がっ」
おいどうなってるんだよ! となおも喚き続ける俺だったが、おい、おい、おい……と制止も出来ない状態で、メイドの両の掌が俺に合わせられた、次の直後、
「……〈回復魔法〉……」
「ぐえっ、あっ!」
バンっ、とはじかれるような、打撃のような威力が一瞬肉体に来たか、と思うと、
「あっ、………あっ?」
次の瞬間には痛みは消し飛んでいた…
そんな、魔法ってあるのかよ。
…試しに立ち上がって、身体を動かしてみる
「くぅぉおぉおおおお…………!……」
猛烈にバキゴキと身体じゅうの関節が鳴りまくった。
それと、足の古傷が多少よくなった感覚も……あった。
いやあ、全くすげーな、おい。
さて、もう一方のジジイの方。
「イリアーナも、おじいさまの手当をっ、」「グヌッ、い、イリアーナの手当は……自力で立ち上がれる……って、あててっ」
「ガーンズヴァル様ぁ、お手当をっ」「! ぬ、ぬぉぉっ」
がふぅっ! というジジイの呻き声が、ほとばしったのが今だった。
粗暴な暴力メイドだけに、魔法の威力も暴力同然なのだろう………
とこの時はおもっていた。