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8(8/16)-500円のファンタジー-

###8(8/16)-500円のファンタジー-




 ところで一つ毒づいていいかい?

俺はこいつらを、さながらダンジョンのモンスターみたいだと思っていたのだが、




「言葉は通じるか……」



 コイツラからしたら、俺の方がモンスターであるらしい様で。



(というか、)



 というか……

 とにかく、睨まれっぱなしの俺。

 そこでじいさんはグレー色の髭に手をかけると、



「ならば、相応に談判せよ」


 


 要望があるのはそちらのほうじゃありませんでしたっけ???




「は、ははは、要するに後ろにもさがるなってことかい……」


「あ、あの、……」



 俺はだいぶテンパっていて、ここまでの状況の急激な変化に、正直、辟易としていた……

 


 ま、まぁ、いいさ。談判状なら自前で刷って配ってやりたいくらいだったさ。

 だからな……だったらな………



 この場に時計はなかったであろうが、

 見たいアニメがあともうしばらくで始まりそうだったのもあって、俺は一刻いち秒よりも早く、

 この巻き起こるクソ状況☆を終了させるつもりになっていた。つもり、だったのだ……



 こうなりゃゲームのボス戦みたいなもんだろうか……──



 

 スリッパ履きの足で、ぺたぺた、とじいさんのところまで……歩いていく。




 …そして、誰何したいことがあった。

 ここまででもうなんとな~く? 符号はついていて、

 その答えは、まあ予想の予期らしきことはできていたけども。




「……貴族っ娘の分のぷくぷくたい、どうした?」



「 ヌシがルーやにわたしたという、あの妙なシロモノについてか?」



(“ルー”、ていうのが、男の娘…貴族っ娘の名前、なのか?)

 というのは置いとき……

 そうだ、そのことだ。



「ムゥ…! …やはり異界人なのだな…オヌシは。

 海魔たるサカナを象ったものは、この陸の上の人間世界の主流一般では、不吉なモノとされている…

…そんなことも知らぬとは。」



 俺の前で、そう仰々しい弁舌を振るう、ガーンズヴァルとかいうジイサン。

 そいつの顔面を睨むように注目している、そんな俺の視界の端で、

 その時、貴族っ娘は、うる、うるる、……と、涙をおおきな目いっぱいに貯めつつあった。


 ここまでで、俺には推測が出来た。

 貴族っ娘の、まるで自身に起きたショッキングな出来事を思い出したかのような、その様子を。

 


……まさか……





「 あれか?

  

  屋敷の暖炉で、火にくべて、燃やしたわい。」





 ぷっつん、☆



……おれちゃん、ブチギレた……




「……まあ、そうだったら、

 そうだったとしたなら、おれにはオレ流の直談判、というのがありましてねぇ、は、はははは」


 

 ケ、ケケ、けけけ……☆

 直談判するだけ、と言ったが、ごめんな、そりゃ嘘だ。

 

 

 窮鼠猫を噛む、のことわざ通りだ。

 一撃を見舞った後、速やかに家に戻る……そこから先はどうすればいいかわからんが。

 

 

 着替えてなかったので、昼間に準備したままの状態だったのが幸を奏す…のだろうか。

 俺は今、ふともものポケットの中に、折り畳み式の登山用杖を隠している。

 ワンクイックで伸縮し、完成したあとは、しなることもないほどの剛性を誇る高級品、

 特殊警棒みたいな構造で伸縮する形式で、材質も強度の高い特殊アルミ製。先端はスパイクになっているし、クマは倒せないかもしれないが、老いぼれたジジイひとりならば、




「そちらが、このお孫さんのじいさんで?」




「黄肌人……やはり異邦の者、うぬの名前は何と言うかっ。」




「☆」




 きちゃった☆ 何が? カッチィーン、と来た、とな。

 この……このジジイも孫も、それからメイド。

 自分で状況にこっちを巻き込んでおいて、作っておいて……そのくせに、このいいぐさか!!


質問に質問で返すんじゃねぇ!…

…あ、あー、それだと、俺の普段の生活の対人コミュニケーションでも刺さるところはあるのだが…ってか、そうじゃなくて!


 ……完全に冷静さを欠いたおれちゃんである。

 ついでに言えば、そんなことをどこか遠くから俯瞰している、俺の心がどこかにあった。




「……ふ、ふは、……欠食児童の孫の愛で方くらい学習しやがれ!……恐怖家庭(※推定)の首領に名乗る名前なんか無いなッ」



 構え……



「見・敵・必・殺!!」



 すちゃ、という音と共に、ポッケの中からステッキを出す。

 収納状態のそれが、ちゃきん、と鳴った直後には、一メートル弱の長大な展開状態へと変形を遂げた。


 地を蹴って、俺の身体が飛び出す。

 俺の足が二歩でダッシュに入る、三歩目でステッキの先をぶち当てる計算だ。



 射程ふところまでは短距離、いくぞおらぁ!



「やっ、やめてっ──」「そおりゃぁ!」「!」



 ヴォン! という音が……空を切った。


「な、」「!」「あっ!」



 フォン、── …!



 ガッ!



 その俺の一撃への返事が……俺の顔面の頬っ面に、ジジイが腰懐から出した、木剣の先の横の腹をはたきこまれた瞬間だった。



「ぐぇあァっ!」「! え、ぇと、お、おじいさまっ!」



「ふむ。見たか、孫よ!」



 へ、へへ……


 頬からはっ倒された俺は、夜の森の湿気を吸った地面へと叩き込まれて沈んでいた。

 見事なホームラン。

 俺はそれを打球同然に決められ、

 キメた方のジイサンの方は、孫とメイド相手に、己の快打とその勇姿を勝ち誇っている。


……この至近距離で避けた上で、しかも反撃を、即座に叩き込んできた! だと?!

 たしかに俺というのは何の武術にも疎いただのトーシローだ。

 だが、ここでまず冷静に考えれば、もうこのときの時点で、相手は只者ではないと判断をして、そのままジャンピング土下座でも華麗に決めていれば良かったのかなー俺ちゃんは。

 でも、でもね、でもね……

 倒れ伏せる俺の見た間際のものとして、どういうわけか?

 先程の一撃をやってのけたジジイの方は、やけに、自慢ありげ?な様子だったので……



「はっぐっ、がはっく」

 


 わ、わはははははははは……

(↑どういうわけか追い込まれると笑い声を出してしまうのであるのよ俺ちゃんは……)



 く、くく、く……


 土の味なんざ、随分ぶりに食わされたぜ……、




 こ の や ろ う !








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