6(6/16)-500円のファンタジー-
###6(6/16)-500円のファンタジー-
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…──…その日の夜である。
時間は深夜の一時を過ぎた、そのあたりだった。
「 はぁ、弁当いっこ余っちまった。」
電灯の光がゆらゆらと中身入りのレジ袋に揺れる……
なんだかんだあって、俺の分の弁当は食いそびれてしまったまま、持ち帰ってしまったのだ。
今日は夕飯がうまかったこともあって、余った弁当は野ざらしのまま、俺の自室の机の上で包装にくるまったままだった。
あー……あのメイドにドロップキックを浴びさせられたらしい背中が軋む。
一応湿布は張ったがな。
そんなこともあり、さあぼちぼち寝ようかと、就寝前の水分補給に
自宅一階のキッチンに浄水器の水を汲みにいった時、
…──… …──…
かつーん、かつーん、
「……ん?」
うぅっ、…うぅうぅっ……
かつーんかつーんかつーん、
くぎ(釘)がたりない……さきがささらない……どうしよう……
うぅっ、うぅううぅっ………
さよなら……ボクのおいしいごはん……おいしいしあわせ……はじめてのともだちのきずな……はじめてのともだち……へんなかおのたびしょうにんさん………
うぅうっ、うぇえぇぇえぇえぇぇ………
………
「………」
このうめき声は、あの、あれだな。……
扉の向こうからきこえてくる。
むろん勝手口の扉の向こうからだ。声の主は、ここ二日間で親よりも多く会話しているかもしれない相手だと、容易に判断する事が出来た。
漏れ聞こえてくるのは、か細い、泣きじゃくった声である。
「…………、」
ちょうど今、父親は自室で持ち帰った仕事の処理を進めていて、母親は風呂に入っている所だった。
母親が風呂に入っているのを見計らって、俺は扉へと近づき、
「………」
ドアノブに手をかけて……
がちゃり、と扉を開ける。
「! ふわぁあっ!?」
時刻は深夜、異世界もそうだったようで、扉の向こうは真っ暗の夜の森であった。
そんな中、キッチンの照明に照らされて、
べたり、と尻餅を着く人影が一つ。
「……はぁ、」「! あのっ、そのっ、これは……うぅっ」
本日二回目の異世界っ娘だ。それにしてもよく泣くなあこいつ。
なにしてんの、という話であるのだが、釘とトンカチをもって、なにやらをしていた最中だったらしい。
「………、」「えと、えっと、うぇぇ~ん!!」
今、俺は鏡で己の顔を見れば、怪訝を通り越した微妙な表情になっているに違いがなかろう。
新手の怪談かよ! と突っ込んでいる場合では、ないのかどうなのか…