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?!始めにクライマックス?! 5/6’(全6話)


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「……なにぃ!?」「えっ……」





 最後の一体が居た……ハムスサウゼンの土ゴーレムである。




「やるならば、やらせてもらう……

 私にはわかるぞ。

 狙うは、ここのみだ!!!!!!!」



 その、ハムスサウゼンの筐体の土ゴーレムは……



「?! ゴーレムの手に、魔導銃砲?!!」


「なっ?!」



 高級部品及び資材の多用と、ハムスサウゼンの魔導のセンスの本気の全力の投入により、彼のゴーレムは華麗な素早さで、たった一瞬でシミターへと肉薄していた。

 そして、その一般より大柄なゴーレムの腕の手の中には、

 まるで人間の兵隊が魔導小銃ライフルを持つかのような比率対比で、陣地に据えられていた大型・対空魔導機砲、その一艇が握り込まれていたのだ。



「……フフフッ……!」



 千載一遇のチャンス、笑んで嗤うハムスサウゼンだ。


「あっ、わっ!?」「わああっ?!!!」



 一瞬の油断の隙を突かれたルーとユウタは、

 そのまま、己らの駆る、自機・シミターの胸懐に、

 陣地の魔導対空機砲を携行してインファイトに持ち込んだハムスサウゼンに、間合いを入り篭められてしまったのだ!



 そして……



「部下の遺した勝ち目には乗らせて頂く……

 くたばれェ! この、カビ色のヤツ!!!!」




…… TAWNMMM!!! …………




 同時に多数が過充圧されていた、スタティック・ショットの、先の一撃。

 それによって、シミターの機体の、魔導エネルギー転換による構造強化・及び装甲強化のための仕組み……構造部品に特殊な魔導圧を常時(多重重ね掛けや周波数ホッピングなども噛ませながら)掛けておき、それにより、反応装甲や反応材質としての機能能力を持たせ、耐久度の飛躍的な向上をもたらさせる、というモノ……


 されど、実はこのシミター機は、万端な準備とはかけ離れた経緯で、やむなくルーとユウタは操縦を転がしている、という事情があった。

 制式量産版ならともかく、今回は本当に! その場凌ぎでなんとか間に合わせた、急造品の省力生産機の個体故に、……どこかの調整が甘かったのかも知れない。

 故に……それに、ほころびが生じた。

……命中のその瞬間、先のスタティックショットの一撃の直撃をまともに受けた、シミター機・コクピット装甲ハッチ防護殻、ここに、添加されている魔導圧に、設計上意図していない“ゆらぎ”が、生じてしまっていた。


 そのことは、ハムスサウゼンの卓越した魔導のセンスなら、“勘”と言うべきか……あるいは、生理代謝的なその感覚で、にわかに感づけるところではあった。


 そして…………そこに、魔導対空高射砲の強力な一撃が、至近距離で、叩き込まれたのだ。




…… ーーー ……



 その瞬間、……シミターのコクピット装甲は、“貫通された”。



 ダァンム!


……


 がかんっ、……ごこん。



「~~~!!? ゆ、ユウタ!!?」


「……む、無射程射撃……とは……ぐはぁっ」



 貫通した弾丸は、

……とっさに、ユウタが可動式のそれを遮蔽状態に閉塞させていた……

 コクピット内の防護遮蔽装甲隔壁の構造により、

 後席のルーテフィアまでには、威力は届かなかった。

 だが、前席のユウタに対してのみであれば、その威力は、十分致命的であった。……




「やった!! ヤツの無敵の装甲にも、いや、ヤツの装甲は、完全に無敵という訳では無いのだな。

 おそらくは、ヤツは不死身じゃない!

 今度は、俺が直に、装甲部位から魔力を吸い取った隙に、もう一撃を入れれば……あるいは……!!」



 この模様に嬉々としているのは、ハムスサウゼンである。……彼にとっては、錬金房での触媒実験か、或いは目新しいレアモンスターの標本の解体解剖作業のようなつもりに、すでになっていたのだ。

 まるで、童子のような、よろこび、そしてはしゃぎようだった。



(いまの私は狂ってるって?

 部下の犠牲を、己の実力をもって弔う。

 ならばいいじゃないか。

 どのみち、死んだ部下達を蘇らせるためには……

 エルトールの、これほどまでの新兵器だ。

 この戦いで勝利したならば、議会恩賞で“クレネンク公通貨”が下賜されたなら、死んだ部下達の、軍役における不名誉ペナルティなしでの、その全員の蘇生だって……!!!)



 ハムスサウゼンは深く、嗤った。

 目の前のこの“やられかけ”のカビ色の~というのがもうあと一押しで、なんとかやれてしまえそうなのだ。

……士官学校の頃に何度も夢にみたような、斃れそうになっているところに己の手がまさに今届きかけている、あの砂上の棒倒しのように……感じられた。

 ただ、その嗤いというのは、どこまでも、己の持ちうる信義と、己の実力と、なにより、己の正義に乗っ取り、即したモノとしてのものだった。


 即ち、センタリア軍人の、そのゴーレム遣いとしての、勝利。そして、その達成。

 誇りもあろう、威風もあろう、

 ただそれ以上に、ハムスサウゼンは、己がいま、この未知のカビ色の~という“怪物”を退治せんとする、センタリアの、正義と道義のその戦士としての“最良のゴーレム遣い”たられている、という脳内麻薬の奔流の快感の直中にあった。

 嗚呼、故にして、ゴーレム・クレイジー。

 己が認めた、“すばらしい”このカビ色の~機械ゴーレム、

 それを、己の繰り出す渾身にして最上かつ最良の土ゴーレムにて、撃破し、破壊する。

 それが、叶う。あと、もう少しで。


……故にこそ、手負いのシミターに、情け容赦はしない。



「は、はああっ、ほああ!! はあっ、はあっ……」



 ゴーレム・クレイジーという渾名は伊達では無い……彼は今、絶頂の瞬間だった。

 興奮で操縦操作の手がもつれかけそうになりながらも、

 ハムスサウゼンは、的確に……

 シミターのコクピット装甲殻に空いた唯一カ所の貫通痕に、次なる高射砲の一撃も貫かせようとする。




「ね、ねえ、? ユウタ? しっかり、しっかりしてっ!! ……、……。え、?

 ぇぅ、? …………。、?!……

……うそ、だよ、ね?……。。、

……、…………、、、ゆ、ユウタがいなかったら……

……ぐすっ、ぐしゅっ、ぐず、っ……ぁ、ぁう、ぁぅ、

 ボク、ボク、なにもできないよ。えっくっ、えくっ、なにも、なんにもできないよぉ……っ

 だから、返事してええぇっ、ねええええええっ」



 コクピットのタンデム座席の、間を遮る装甲防護壁越しに明暗が分かれたシミターのコクピットの中で……


「そん、な…。…………、、、…………

……ボクがつくったんだ、ボクが造ったシミターなのに、 ユウタによろこんでもらえたのに、ボクとユウタとでがんばったのにっ、それが、それなのにっ……。 

 ボクの戦いに、まきこんじゃって、ユウタを……、それで、それでぇっ…………

 あぅ、ぁう、ぁぅ、わぁああああああああん」



 惨憺たる、という感情のまま、

 とうとう張り詰めていた何もかもが決壊して、

 年齢以下に近い、ただの子供となって怯えすくむのみのルーに……



「ばか、いうな…………ルー、る、お、おま、おま……ぇ……」



 魔導対空砲弾の至近直撃を直に己の身体で喰らったために、最早今のそれが、しにかけの己の譫言なのか、 それが肉体の口から漏れているのか、

 それともあげすげに破かれて裂かれた五臓六腑の断面や断裂から零しているのか、

 或いはそれすらままならずに今は脳裏だけですらも怪しいその思念の声となってしまっているか……のユウタ。



 ゲポゲポ、ゴポォ、……体液の流出が泡立つような音を奏でさせたのが、それが、最後だった。





……三者は斯様に、もつれ込んだ。



 そして、




「 これで、どうだ?!



……



~~~~あっ」





 カチン、ガチン、




“魔力欠乏”




「 く、くそぉおおおおおおおおおおおおお」



 最後にトドメを刺そうとしたハムスサウゼンの一撃は、……しかし、不発に終わってしまった。


 原因はいくつかあるが……液質化後の、此処までのゴーレムの高速機動などは、

 ゴーレムのコンデンサ魔石、及び術者の魔力を如実に消耗してしまうモノであることはたしかだった。



「クソッ! ならば……」ハムスサウゼンは、すぐ次の手を思案している。



「ヌゥ」……が……“策が無い”。




「……クソォ!」



 ハムスサウゼンは、己のゴーレムの手に持たせていた魔導対空砲を、動きを止めたまま直立不動のシミターの機体へと、叩き付けるくらいしか取れる行動は遺されていなかった。




“……ー”



…………えっ、



“……ルー”



……えっ? ほぇ、ふえっ?



“ルー!! こんなやつ、キレたオマエの一発で、なんとかしてやれ!!!”


「! ぁっ……」



 はたして、一方のルー。



「う、うん、ぅん、ぅんっ! そうだ、そうだよ、そうだよねっ!? ユウタは、いつもボクのみかたで、いつもいつでもボクのことをだいじにしてくれて、ぼくのことまもってくれて……ぼくのちから、ぼくのせいぎの、ゆうじょうの、そのみなもとだから!!! っユウタぁっ、ゆうたー!」



……注釈するならば、この時点で、すでにユウタの肉体は、事切れている。

 なので幻聴として聞こえたかも知れぬ、先ほどの己へのよぎりに……

 もはや、今のルーは、廃人か、錯乱同然の状態ではあった。



「あいしてる、! あいしてるよ! あいしてるからね! ユウタ!!!!! だから、だから……ーー」



 それが“うれしさ”という感情ならば……

 ありのままの胸の丈の絶叫を発しながら、

 目の瞳孔が洞鉢のように目一杯広がったその顔の表情で、

 今は涙を流しながら、失禁しながらの、ルー。

 とはいえ、振り切れたルーに、もはや枷なんてものは、ない。



「……。

……ここで、下がれば……

 撤退……撤収??? ……こ、これだけの戦果を得れかけているのだぞ。

 私は、私は! 既存に無かったこの素晴らしい機械ゴーレムを、いくらゼイタク品は使ったとはいえ、土ゴーレムの、そう、既存の概念の土ゴーレムでここまでやったのだぞ!!?

 な、ならば、ならば……ならば、最後のトドメまでもを……!!!!!」



 ガチャ、ン。 …… !!!! ……



「え、? …………!!!!?」



 さっきのお返しに、……と言わんばかりに……

 残る車長一名が健在であったシミター機は、

 機体右腕・携行火器である90ミラ・コッカリル砲を、発砲した。



 ハムスサウゼンのゴーレムは、この一撃で、撃破が為された。



………………




…………





……






「こ、降伏しまーす!

 だ、だから、わたしだけはころさないでくれーー!!?」



 マヌケなセンタリアの士官はそう叫びながら……




「“不死身の”ドウジバシのやつ、死にかけてんだって?」


「さあな。まあ、俺たちと同じように、“死んでも戦って”貰おうじゃ無いか。

 なんにせよ、名誉傷痍勲章モンの活躍ではあるよ。また“不死身の”っていう渾名にハクが付くねえ……

 そのための機材は、ルーテフィアさまが全部まとめていてくれて、あのカビ色の……」



「シミター、さ」



「シミ?」



「そう、シミター。」



「……。

 ともかく、アレに、……まとめて下さっている」



「ハン、滅多なこと言うなよ……」「ハハハっ」



 ヘリボーンならぬドラゴンボーンというべきか。

 戦闘の終了後にシミターのルーからの連絡を受け、

 飛龍による空挺輸送でやってきたエルトール国軍・空挺部隊の歴々はそう口々に言い合う……



 意味としていることとしては、

 それは、この戦いの開戦劈頭に、エルトール軍・味方内の指揮系統の混乱の結果、

 己らたちは何も出来ないまま、戦場の骸へとなってしまっていた、そのことにある。


 そして……

 この世界では、ペナルティやデメリットが、まるで無い形での治癒や復活、蘇生というのが、

“クレネンク公通貨”という、一種の基軸通貨・国際貨幣として流通がされる、強大な魔力の濃縮凝縮凝固がされた、結晶体の成形物タブレット。

 ある種の特殊な魔力燃料とも言うべきこのモノをつかえば……このクレネンクは他にも多種多様、多岐にわたる利用方法があるのだが……、ほぼほぼ失敗なしで、用いることが出来ているのも、理由としてある。


……だが、そのクレネンク公通貨というのは基本的に、この陸上界の人間らの主に信仰する主神たちの住まう天界からの“さずけもの”……独占供給物であり、

 今までの永き歴史に於いて散々に悪癖の限りを晒してきた地上の下界人に天界の神々たちは呆れ果ててか、

 その輸入の元栓が絞られる形で、地上界では流通が、かなり永い以前から、だんだんと枯渇に近づいてきていた。

 そして……挙げ句の果てにはこんな人死にしかない国家間戦争というのをやらかしてしまって、

 本来なら、金子と徳さえ積めば、かつてならこの西大陸世界の人類の誰もが、病気も死も恐れなくてよいとなっていたところのその無限の生を実現するアーティファクトは、

 戦争の開戦による大量消費によりついに払底し、

 少なくともこのエルトール……聞くところによるとセンタリアに於いても……では取引システムが機能麻痺・崩壊したも同然だったのである。


 つまるところ、今やってるこの戦争は、最初からポスト・アポカリプス! の、その上サドンデス・マッチ状態な、大変にうーんこちゃん♡ な、そういうあらましなのだった、ということだ。


…………だが……


 俺ちゃんのご主人様は、まぢで凄い。

 詰まるところの、ルーのやつ……ルーテフィアが生み出した、この、シミターというやつ。

 ルー自身が、秘められし自身の“異能”を発現し覚醒させてしまったことから、

 力の使い方を探求するべくそれを用い、これまでに生み出してきた様々なモノ・コト。


 その一つ目、

 シミター機・搭載魔導エンジンの魔導力の、その桁外れの出力。


 その二つ目、

 ルーが“読めて”しまった、旧魔王帝国の、未完成だった諸文献類の、それの未完・遺棄魔法術類・錬金術類。

 そのひとつであるところの、旧魔王国式・治癒復活蘇生魔法術。



 これらを組み合わせてやることにより、

 なんと!

 旧来の人類の常識であった、“クレネンクを消費して蘇生や難病などの治療を実現する”といったプロセスを踏まずに……


 「シミター」や、或いはルーの生み出した「機力魔導器」といった諸発明品類。

 これらを稼働させて使用するだけで、なんとペナルティなし・クレネンク消費ナシでの復活蘇生の無制限回数化というのが、実現してしまった……。



 そう、先ほどの空挺部隊員さんたちも、

 この丘地の連なりばかりのだだっ広い野っ原のど真ん中で空挺竜や空挺巨鳥ごと敵・センタリアの対空迎撃の砲火で黒焦げになりくたばっていたところを、

(物は試し、とはいわないが……まあ試し撃ち?的に)

 ルーの施術で、見事に蘇らせて、そしていたく感動し感謝してくれた彼ら彼女らは、今の俺たちの強力なバックアップを担当してくれているのだ!


 ウンウン、なんてマーヴェラス。

 この調子で、俺も“憧れのあの人”を、早くガリウス砦から救い出したいもんだね……

 って話がぶれたな。



 え? チートが過ぎる?

 それだと人が死ぬことの価値が軽くなる?

 それでは戦争は終わらなくなる?


 半分当たりで、半分外れ☆

 なぜならば、このアリスティリゥでは食料生産と物資の供給及び物流が長らくすでに危機的な状態となっていて、

 この世界の人類の……けして少なくない人々は、

 ただ誰かに殺されるよりも惨いほどに、飢えと渇きで苦しんで死んで、

 その挙げ句、クレネンクは最早手に入れるための縁もゆかりも無く、

 故に、飢餓で死んだ人間たちの屍ばかりが、うずたかく積もり積み上がっていく……

 それだけばかりが、長らくのこの世界・地上界でのベースペースとなっていたからだ……。



 え? 最初からオワッテルなら、もうそんな世界の戦争のあらましも放置しておけばよろしいでしょ、って?


 それがねえ……ルーのやつも四方八方から狙われちまってるし、このままで行くと、俺の知り合った方々は、みんなそれぞれに、やばいことになってしまう。

 なので、シミター・ドライバーとしてのこの戦いへ絵の参加は、俺なりの、その“大きな流れ”というものへの、抵抗でもある……のだ。

……やれることをやり果たしたくなった、というのも、あるけどね。



 どのみち、真綿で首を絞められるかのように、このアリスティリウ・西大陸の人々の暮らしは、混迷を極めていた。

 なんだったらば、この度の戦争なんてのも、そこからの派生ですらあった。

 そもそもは、自領が中間に挟まっている前提で、ある産出国とある市場国群があり、自領の僻地を開発してしまって、それらの間を最短経路でつなげればウチらも儲かってイーンジャネ? という善意しかないイージーなプランニングというのが、

 よりにもよって、産出国たるセンタリアの逆上を買い……

 市場国らからも、けしかけられている気配があり……

 とまあ、ダブルパンチ!

 とにっかく、一筋縄には……行ってない!

 早う。そう、早うだれか、なんとかしちくり……あっ、それは俺とルーの仕事なのね……



 まあ、それはともかく……



 だが、状況は急を切迫している。



 ルーの祖父であるかつての勇者英雄:ガーンズヴァル。

 開戦時には最前線でアヴトリッヒの土地を守るべく指揮をとるはずだった人物が、

 よりにもよって開戦寸前の土壇場で、本国本土からの不条理な指令で、アヴトリッヒ領東端・ガリウス市の城塞にて拘束・幽閉。


 そのことが、この度の国土防衛戦争が、ひずみとなって都度よろしくない効果ばかりを生んでしまっている、その原因……


 いま、そのガリウス城塞は戦場となっている……

 おじいちゃんっ子として誰よりもガーンズヴァルを敬愛していたルーテフィアが戦う目的も、主の一つとしては、そのガーンズヴァルを助け出す、そのことにあったのだから。



 あと、俺ちゃんがこの世界にとっての異世界人である、というのも、事態をややこしくして……納得しがたいけども! まあ、そのようなことらしい。

 だってさー? 聞いてよ。

 俺ちゃんが、色々あってこの異世界に持ち込んだ、

「茜はるばる」という品種のサツマイモ。

 これを流通させたり加工したり、などをすることによって……

 なんと、この異世界に、「緑の革命」と「工業革命」などがまとめて!もたらせた、そのような塩梅なんでありんす……

(品種開発者さん及びジャポン国へ、この異世界での栽培や利用などによるライセンス料は、ジャポォン……現実国内側の専用口座に全部の利用代金分を異世界での収益から換金して定額通りキープしているので、いざとなったら支払わせてくださいいいい……)


 まあそのおかげで、ルーのお爺ちゃんの治める「アヴトリッヒ領」では、今年の栄養失調者はもう出ない! という所まで、状況を好転させることが出来た。

 国一つ、地域一つ、大陸一つという巨視観からしたら、確かにちっぽけな成功体験ではあったろう。

 だが……どのみち、俺やルーたちの「やりたいこと」をやるには、それまでのこの異世界の現状は正直、サイテーだったのだ。

 だから、夢持っちゃったワケよ。

 この異世界を、サツマイモちゃんの力で、復活させる!

 少なくともアヴトリッヒの土地がなんとかなったってコトなら、

 この西大陸世界っていうのも、どうにかできちゃいそう! って、特に俺ちゃんは思った訳です。

 


 と こ ろ が、それがこの異世界の……

 なんていったらいいかな? そう、なーんか、裏でうごめく、よくわかんないヤツら。

 とにかく、名状しがたい不穏な気配……

 そいつらに、俺やルーたち、というのが目の敵にされてしまって、さあ大変!


 なぜなら……文字通りの殿様商売(この場合は領主の孫がやってるがネ)なこのサツマイモ商売が、

 かなりの効果を秘めているから……らしい。


 魔法の異世界パワーもあって、

 それらも活用しながら、

 サツマイモを大規模に栽培して供給して加工してそれを流通させて売る! ってやってるだけで、

 ただそれだけで、この異世界の何もかもの問題が、片付きそうな感じなんですよ……今現在、進行形で。

 なのにも関わらず、俺たちはこんな、辺境からさらに離れた、原野のど真ん中みたいな場所で、戦争なんぞやっておる。

 ふと思う……このままここで死体になったら、だれも骨とか拾えないだろーなー……



「ユウタ、ユウタ! しっかり、しっかり、ねっ?」



 お、ぉう、ぃぇーす、しーはーしーはー……



「! 意識が戻ってきたみたい! やった……!!

 そ、そうしたら……ええと、

 えと、行くよ……“復活蘇生復元魔法・ルーテフィア式・三乗の型”!」



 ばつん、



「ぐあっ?!! ……、……」



「ユウタ! やったぁ、声が、声が出せるようにまでなれたのですね?!

 あと、あと、もうすうかい、もう数回、やらせて!」




……ここまでの戦いの経過は、さらなる混迷へと突き進むだけだった。


 だが、この先に、ルーにとっての完全ハッピーな未来が、あるというのか???





……今思えば、難儀をさせちまった三ヶ月だった、ぜ、な。

 は、ははは……、、、。。。。。





「ぐ、ぐあああああああ~~~~~!!!??」



「痛いかも知れないけど、苦しいかも知れないけど……! ユウタ……。

 ごめんなさい……ごめんなさい……」



 ただ、先ほど、

・ペナルティなーし。

 と称されていた所の、この治癒蘇生復活回復の魔法。

 ひとつ欠点があるんですよ……それは、


・作動するときにめっちゃ激痛が迸る。


 というもの☆

 あーっはっはっは、世の中旨い話なんてのは、そうそうないもんですなあ、てウン、……

……死ぬほどいてえっす……



 などというモノローグを、繰り言倒しているのが、

 本作の……なんだろう、まあ、いわゆる主人公の片割れ? という具合の、ワタクシ、道寺橋 祐太でございます……

 え? おまーさんのしゃべりはなんでこうなんだって?

 だって痛えんだよ! 物理的に。

 復活蘇生の呪文言うけど、車に撥ねられるとまでは行かなくても、ムチでひっぺたたかれるくらいの痛さがあるとおもうのこれ。

 頭の中くらい、饒舌にしゃべくってオランと、心がもたんわいっ!!!!?




「だから、だからね? だから、ユウタ、ユウタ……だから、生きて…………生きて……帰ろうね……お願い………………」





 ああ、ルーのやつが泣いている……


 そのちんまい御姿は、肉塊と化した俺ちゃんの蘇生を急いでやろうとした結果、全身が俺の血まみれになって、血化粧というやつになってしもうておられる……。

 足下には、その小さいあんよで履きこなしているブーツにて、なんかタンポポ? ぽい野花を踏んでしまっていた……

(のだが、俺へと施術した蘇生治癒魔法の範囲内だったようで、俺へと術が掛けられる度に、今に瑞々しくタンポポちゃんは蘇っていた……つまり、ルーのこの蘇生治癒術は、ウソでも何でも無いってことだ…)

…ただし、ついでに言えば、そのタンポポちゃんも、ルーの身体から落ちぼそった血やら肉片やら(俺の!)で、血まみれだぁ。


 本当は蚊も殺せそうに無い、優しくて甘ちゃんな内気っ娘なのに、なんの因果か、こんな戦争なんてやらされてよぉ。

 

 でも、まだだ、まだ俺は諦めないぞ。


 この戦いまみれのがなんとか片付いたら、

 こんどこそ、オマエの好きなこと、なにもかも、一緒にやってやろうからな!!!!



 あと、俺たんは、「あの人」との俺のアバンチュールに、ちゃんと責任を付けたい、とおもっていたからというのも動機にある。

 ガリウス砦で、待っててくれよ……!



 だから、俺も、俺も……まだ、まだ持ってくれよ……



 ん?

 前のめりに斃れるだけが、人生じゃ無い???

 あっ……そーね。うん。








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