2(2/16)-500円のファンタジー-
###2(2/16)-500円のファンタジー-
* * * * *
木漏れ日のそそぐ異世界の森は、青色の陰りの帯びが日向の陽光の影絵となっていた。
そんな青みがかった木々の影絵の中で、銀と金のきらめきが尽きることなく眩いていた…
…が、このさなかに、先日の異世界っ娘は一人現れていたのだ。
そんな直中で何分がたっただろうか……
「………」「………」
二回目の遭遇である。
『!…ぁっ』
俺と目があったままの貴族っ娘。
そいつは丘地の縁の上でしばらく留まっていたが、最初の一瞬は……顔を輝かせたかなにやらの後、はっ!っとなって、
『………、』
なにやら思いまどう様子を、去来無い挙動でしばらく見せている。
それから、ひやり、と汗を垂れさせたのち、
「………!」
そのまま強く目を瞑って、自分のま後ろの方角へと走ろうとし……
「…あっ!!」
つるん、べちゃり、と足を枯れ葉の山に取られてすっころび、つぶれるように倒れてしまった。
そのとき積もった落ち葉の足場は崩れ、
そのまま窪地の下の俺の元へと続く丘地のなだらかな斜面を、亀のように寝そべるような体勢になってしまったまま、そいつはずさぁ……と短い距離を枯れ葉で滑って落ちた。
「………」「………、」
じぃっと目で見つめる俺に、そいつは無言のまま、枯れ葉の上でしばらく四肢をじたばたとしたのち、動きを止めた。
またそのまましばらく、歩くことを忘れたように、陸に乗り上げてしまったウミガメがヒレを泳がせるように手足を交互にじたばたさせる、貴族っ娘。
それきり黙ったまま、こいつは目に涙を貯めた。
「…あぁもう」「!」
ざっく、ざく、と歩を進ませることにした俺。
「やーだー! やだー!」「あぁぁ……」
落ち葉をさくさく踏む俺の足音を聞いて、それが近づいてくるからなのか、
なにやら目から涙の粒を跳ばして……抵抗のつもりなのかさらに手足をじたばたさせる貴族っ娘。そんなもんで斜面を滑るスライディングがさらに進む進む。
まあそんな感じの無駄な抵抗はしばらく続いたのだが、
「はぁ、……ほれ、」「あっ……」
もう遅い、距離0だ。まあやることはたいして無いがな…。
両手を捕って、そのまま引き起こしてやる。
ずらぁ……という音とともに、こいつの平たい胸元に張り付いた枯れ葉と土飛沫が直降下して取れ落ちるのを見送りつつ、涙目のこの貴族っ娘にハンカチを手渡してやる。
「へぅっ」
しばらくしても涙目のまま不思議そうに両手の指でハンカチをもみもみしていたので、
ハンカチを奪い返した後、そのままハンカチを持った指でこいつの小さな鼻を摘んでやった。
ちーん、という音が返事であった。