?!始めにクライマックス?! 4/6’(全6話)
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今度のは強力だ……
機転の利く、目聡い術者であった。
陣地内の自軍の補給物資コンテナを破壊し、その中にあった汎用コンデンサ魔石、それを己のゴーレムに取り込まさせることで、出力を向上。
そのままの一撃で、一気にシミターの破壊、これを狙わんとした。
今度の彼は、猛勇の言葉を具現化したような、パワフルな兵士であった。
されど、知をないがしろにはせず、むしろ狡猾……
わざわざ自軍物資の緊急避難的接収徴発までして、
自機のゴーレムの性能を万端としてから、二撃目を挑んだのだ。
だが、
「ルー!」「っ! わかったよっ!!」
後席のルーは、前席のユウタからの気配せを、“受け取った”。
そしてその行動は、次の刹那までには完了させていた。
……コクピット内操縦コンソール脇に配置がある手動点火スイッチを跳ね上げて、
スモークディスチャージャーを作動。
シミター機の肩部装甲末端部位に片側ずつ装備された、三連装・煙幕弾発射機。これを使用したのだ。
すると、……同時の瞬間には、そのスモークディスチャージャーから、煙幕弾の弾体が吐出され、
直後には、それが点火して作用が開始……
一瞬のうちに、煙幕による暗幕が、シミターからゴーレムとの間に、形成が為された。
「なにっ!?」
先瞬まで、ゴーレムは格闘に持ち込む寸算であった。
が、これでは彼我の相互の距離が見計らえない!……
それでも破れかぶれに、シミターがさっきまで居た間合いまで筐体を滑らせてそのまま泥で呑もうとしたが、そこにはシミターは、既に……“居ない”。
「……あっ」
ブォォオオオオオオオオンム!!!!!!
そして、煙幕の暗幕を突き破るカタチで、煙の中から出てしまったそのゴーレムにへと、
煙幕弾を吐出した先の一瞬の内に、
脚部ローラーダッシュ機構、“キャニスター・スピナー”の機能能力で、機体の前方方位はそのままに後退進だけをした結果後方に待避し相手との距離を作れていたシミター機による、バルカン砲の銃撃が見舞われた。
「あっ、グゥウゥゥウゥ、あああああっ!?」
あめあられと殺到する殺人弾火により、もはやこのゴーレムは戦闘能力を根こそぎ奪われたも同然であった。
……しかし……
「ま、まだだっ、まだ、メインのコンデンサー魔石が、やられた、だ・け・だ……」
ゴーレムは、ゴーレム乗りの最後の執念で、
標準では、ゴリラのナックルウォークのように普段は歩いているその筐体の胸部を、大きく上方に反らした……
「……指揮官殿ぉ、オサラバであります!
貴方の指揮下であったことは、自分の軍歴での、最高の経験でした! ありがとう!!
……スタティック・ショットなら、ヤツの装甲を、なんとしてでも……!」
破れかぶれであるが、しかし、最早、本望ではあった。
今はもう崩れかけのゴーレムであったが、
同じく満身創痍であったこのゴーレムのゴーレム遣いは、しかし……勝利の目算を脳裏に描いていた。
スタティック・ショット……コンデンサ魔石に過充圧させ極度に威力耐荷させた筐体の両腕を、まるでどこぞのロケットパンチのように魔導射出し、
上級品の高威力ブラストログのように、威力チャージド弾頭として作用させる、いわば捨て身の切り札、といえる術である。
自ら切り離すとはいえ、一時的にも、四肢を失ったゴーレムがどうなるか……
つまるところの、“自殺攻撃”、こうと揶揄されることが多い。
そしてその片腕分の一発が、ルーとユウタのシミターへと、射出された!
「まじかよっ!!?」「対被弾姿勢、モード4。こ、これなら……っ」
ボガァッ!!!!!!
……一撃分、マトモに喰らうしか無かったシミターである。
「……装甲を……打破できていない!?
ク、クク、だが、このままもう一撃を与えれば、中の乗員は、ただでは済まないはず!!!!」
……そのゴーレム遣いの見立ては、ある種、間違いでは無かった。
「な、なんとか生きているが……」
「ユウタ、大丈夫っ!? ……装甲の耐久度のバイタルチェックを……
あれっ? な、なんか、なんか設計じゃあ、こうなりようの筈が、ない……はずなんだけど……」
「……っておい、もう一発噛ましてくるみたいだぞ!?!」「えっ……えぅぅっ!?」
斯くして、もう二発目。
「うぉおお!! 俺はやる! 俺はやってやるぞ!」
……照準を目測で取り、
最後に、誘導集束光でガイドをセット。
さあ、最後は、撃つだけだ!
「てぇあああああああああ、」
が……、
その術は最後まで果たすことは出来なかった。
「あ。あ。あ。あ。あ。あ、あ? あ・ぁ、a」
バス、バス、バスンッ、……
何やらポリエステル・パテのような独特の黄色みをした、粥の如きペーストのようなものが、
ゴーレムのこちらへの一方向に指向されたシミターの機体の両腕の前端ノズル吐出口から、噴出・吐出投射されていたからだ。
これとは?
即ち、「ポリマージェットスプレー機構」。
この作品内に於いて、シミターの機体は、実は特殊な錬金式樹脂ポリマー製の構造物によって形成がなされている。
その素材のペースト状態段階としたモノを、
シミター機は両腕内のインテグラルタンクに貯蔵しているのだ。
そして、メインの使用想定例としてはその両腕の前端部に設けられた吐出ノズルからポリマーの噴射吐出を行い、
機体各所に作用のための送波デバイスの埋め込まれたシミターの機体末端から、
硬化などのための錬金作用場の集束ビーム照射を行い、
ある程度の射程が開いたとしても、
射出されたポリマーペーストの作用や形態を、
錬金場の照射により変化させることが可能という仕組みのギミックである。
今回は、そのポリマーペーストを相手に命中させて塗布し、硬化させ、
そのまま、身動きを取れ無くさせた、ということであった。
(硬化時に硬化物の内部はフラクタル構造の超多孔質発泡体として密度調整が可能なため、使用樹脂量が少量であっても、より大きなモノを作れるし、作用と規模をもたらす事が可能である……)
そして……このポリマーペーストは、ただ任意の形に固めるだけではない。
「ユウタ、」「ようし、」
「いっくよー、“点火”っ、えぃっ」「ウッス」
…………!!!!!!!!!!!!!…………
……そうなのである、
このポリマーペーストは、
シミターの構造材の原料を転用したモノであるために、工兵建設材料としてもシミター機の野戦補修用材料にも、あるいは臨機応変に吐出したポリマージェットペーストに指定の形状を与えて即席の武器や防具/増加装甲類などを作る以外にも……
“極めて高威力の錬金爆薬”としても、転用することが出来る。
(ただ、これというのは、この作品内のシミターの魔導機関の高出力と特殊な錬金術により、
無理矢理に、安定物質のポリマーペーストを爆薬化させているというだけなので、
通常時においてこのポリマーペースト単体が危険である、などというわけでは、ない。……)
もともとはこの世界の錬金術の失敗時にありがちな爆発現象を、原理を応用して人為的な故意かつ自在に引き起こせるようにしたものだ。
……炸裂の連続の最中に、ゴーレムが沈んでいく。
ぼがあん、ぼがぁああん、……と全身に塗れた、爆薬化したポリマーペーストが弾けていき、
「あ、あ、あ、あ、ああ、お、おかあさ……」
その爆発の余波が、元々のゴーレムの、過量に取り込み加充圧をしていたコンデンサ魔石に到来。
これらのコンボが重なったことで、
目前に居たゴーレムは、炸裂と共に!
火遁の渦の中にへと、消え……
…… !!!!!!!!!!!! ……
大音響と共に、……跡形もなくなった。
「……南無、」「あはっ、ボクってすごいなぁ。生身だけなら剣のこと以外へっぽこなボクなのに、シミターのおかげで、とっても強いことができてる……あはは、あは。」
「それで終わったつもりかぁ!!!!!」