5(5/8)-パンケーキ・クライシス!-
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針にさされるように、無音が痛い……
「ハァ、っ」「ぁ、ぁぅ、」
その沈黙を割って、エリルリアは口を開き、
「わたしだって、なにも策がないわけではないわ?」
「は、はひ、「アンタ、いつものくせねぇ、はい、って言えないの」は、は、はぃ、……」
……相変わらず、当たりが強い……
であるはずのエリルリアであったが、
「……ええ…そうよ……こんな願ってもないチャンス、使わずに居られないわけがないじゃない……!」
(どういうことなのだろう)
修羅そのものたる叔母のその譫言に
ルーがそう不思議を思ったその時…
「…ね、」「は、はいっ」
……
「帝都の古い友人と今やり取りしててね…
オンラインの送金で少々手間が掛かるから、
そうね、……決済までには、時間をちょうだい。
ちゃんと、あんたの分の支払い、あたしが忘れるわけないじゃない。」
「は、はひ……」
ルーは怯えかしこまりつつ……
(なによ…あたしだって、姪にやさしい叔母さんっての、
やろうと思えばこなせるじゃない……)
「ぱんけーき、焼き上がりましたぁ!」
二人前、まいどぉっ!!!…そうギクシャクとおどけながら、…イリアーナが戻ってきた。
片手それぞれの手のひらで浮かべるように持つ皿には、
見事な焼色のパンケーキが盛られている。
「さて、」「は、はぃ……」
「おいしいわね、」「そ、そうです、ね、おば、さま……」
(味なんてわからないよぅっ……おふとんみたいにしっとりふかふかやわらかなのに、味が砂を噛んでいるかのように、わからないです……)
ルーは内心で、涙を流した……
そんな時、
「……エリルリアお嬢様、
帝都のご友人のトゥエルさまから、電信が。」
「! いまいくわ」
熱心な売り込み営業の、その釣果はあったらしい。
待っていたのだ、という上機嫌で、
エリルリアは応接間までとんぼ返りし、
電信でやり取り……
……
……テストテイクだから、それしかカネを出せない、って、
そしたらアタシのところからの出発の、
輸送費が割りに合わないじゃない…!
……
……なら、いらない?! …あっ、そう!!
がちゃん! と受話器が乱暴に置かれる音。
「ハーッ!!!!」
戻ってきて……
一転して不機嫌になった、エリルリア。
「あ、あわわ……ゆ、ユウタ、たすけて……」
すがるように…、
ルーがその言葉でその名前を呼んだ時、
がちゃり、…と扉が開かれ、
「オウ、ルー、目ぇさめたか?」
「! ユウタぁっ!」
そんな折に、ユウタが現れた。
(やっぱり、ユウタはボクの守護天使だぁっ…////
心でも目でも、ボクは両方、今、涙を流していますっ……!!! ぐす、ぐしゅっ……/////)
「言論的スパーリングなら、おれが相手するぜ、」
ユウタは、
ルーを守るように、それとの間に入って立ちはだかり……
真正面を切って、エリルリアへと啖呵を放った!
「なによ、……」
「おう、」「 ☆ 」
「なにも話すことなんて、ないわよ。」
「ああ、そんで?」
「…ッ、」
苛立ちが我慢しきれない…
…とエリルリアはこめかみを引きつらせて、
「ええ、えぇ、そうね、そうよ、そうだったわね…!」
そんなわけもない叫びを、
挑発とともに、自暴自棄でエリルリアは放とうとして、
「あんたは、そうやって、愚姪の贔屓ばっかり!!!
アンタ! どっちの味方をやって…~…」
「 きまってますわ。 ルー様の味方です!! 」
がたぁん!!
……部屋の扉が開け放たれ……
その少女の凛とした声が響いたのは、その時のことだった。