幕間:アリエスタの追憶(3/4)
外で遊ぶのをやめたわたしたちは、
ふたたび館の広間にもどって、
目前の“それ”を、ふたりで見入っていました。
「これは、おじいさまのよろい!」
「いままでね?
どんなにおねがいしても、触らせてくれなかったんだー!
ボクも、こんなヨロイが、ほしいなぁ……
あのね? ボク、騎士さまになるのが夢なんだ! それで、すっごい冒険を、たくさんするの!
それで、いろんな、いろんな、困ってる人達を助けていってね、
勇者って呼ばれたいの! お祖父様とおなじくらい、とっても偉大な勇者さま、って!
そうして、勇者の騎士様になったらね?
ボクにも、守りたい人ができるといいなっ
たいせつな……一生をかけてでも、守り通したい人が……」
「 るーさま?
……
わたくしが、その候補に立候補いたしますわ。」
「 えっ?」
わたし、改め、わたくしは、その日、あの時、決心しました。
「 るーさまは素敵な方。
今のわたくしは、体も弱くて、その寵愛を一身に受けるには、たしかにあまりにも虚弱で、儚い……
けど、人は努力と成長で、進歩できますの。
いま、ここで、誓いますわ。
生涯を掛けてでも、良い。
その後の一生を共にするために、
わたしは、るーさまにふさわしいひとに、なってみせますわ!」
わたしが、生涯を捧げるべき人だと……その時、純然にそう思ったのです。
「うーん、なんだか、むずかしいよぅ、
どういうことなの?」
「 え、えっと、ぉぉ……
こふん、こふ、
わたしは! る、るーさまの、たいせつなひとに、な……なりたいのです!」
「え?
えーと、? つまり、
ボクの、お友達に、なってくれる、って、こと?
ボクのともだちに、なってくれるの?」
はい。
「 やったあ ! 」
“ボクの、はじめてのともだち!”
「あ……」
「 うれしいよっ、アリエスタちゃんっ!」
ルー様の、その時の笑顔……
「 るーさま!
るーさまが、祝福の義を受けられる年になったら、
その儀式の日に……
……だ……だから……
……誓いの、口吻を……」「ふぇっ?」
ちゅ、っ。
「ふ、ふぇっ?!」「///////」
……その時、わたくしはしてしまいました……
(……しちゃった、しちゃった! ルーテフィアさまとの、キスをっ!!!
わたくしったら、なんて大胆なことをっ?!
でも、でもでも、やった!!!! ヤッフーーーーーーー!!!!!! ヤッホーーイ!!!!)
その時のわたくしの内心は、見るも無残なほどに、はちゃめちゃになっちゃってたけれど……
「わ、わたし、は、……愛しております! ルーテフィアさま!!!
だから、また、祝福の儀の日までに、また、お会いいたしたく想います……!!!
かならず、わたくしは、貴方様に相応しい淑女となって、お会いいたします!!!!」
わたしは己の熱の強さというのを、ルー様に投げ込むように伝えた。
「あ、ありが……」「ルーテフィア様、、だ、だから……」
けれど、
……けれど、その時、
「 ルー様?」
時が凍りついていました。
展示されていた、その鎧に触れた、触れてしまっていた、その姿勢だったと、わたくしは記憶しています。
「あ、ぁ、……」
おそろしい幻視が、ルーさまの脳を焼き切ったのでしょうか。
恐ろしい幻視が、ルーさまの脳裏にちらついた……のでしょう。
そのまま……血の気が失せ、ふらついたルーさまが、
「あ、あ、あ、」「る、るーさ、ま…」
ヨロイの持つ剣にへと崩れ込んだ。
「 ~~~~~~~~~~~~!!!!~~~~~~~~~~~~~」
剣に触れた途端、ルーさまの頭中は、戦火の炎のまぼろしに燃やされたかのように。
血の幻視が、ルーさまの脳裏を焼き切った、かのように。
「 なにがあった?!
ルーや!」
「 ムスメよ!」
もしかして、剣の刃で?!
「 刃は、随分前に鈍らせてある。展示用にするから、と……
ルー、ルーや、ルーや、しっかりしておくれ!」
「~~~~~~~~~~~~!!!!~~~~~~~~~~~~~」
ルー様は、発狂なされてしまった……