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幕間過去話:アリエスタの追憶(1/4)

お久しぶりです、アリエスタ視点での過去回想話ですが、なんとかこの章を書くことができあました…

全4話組です。本日から日刊として一話ずつ投稿していきます。

どうぞごゆるりと…

****






 しとしとしと、しとしとしと……



 烟るような霧雨に行き先を遮られて……

 まだ水泥になりきっていない土の道の上。

 ぱらつく小雨の中を、一台の馬車が進んでいる……



 しろしとしと、……、………………。。。。




「 雨があがりましたわね? おとうさま……けほ、けほっ!」



 こほんっ、こほんっ、… 



「ダイジョウブか? ムスメよ……」



 その時、わたしは五つの頃。

 テュポンお父様は、いつだって良く接してくれる、私の自慢のパパだ。



「帝都の大気汚染が原因じゃないのかと目星をつけてみたのだけど、

 半分あたりで半分は違うみたいネ。

 ムスメたちの具合はたしかに軽くはなったけど、

 住む場所を変えただけじゃ、そうかんたんには治らないみたいネ……」



 お父様は、体がよわいわたしたち姉妹のために、

 華やかな帝都から、このけっこう離れた田舎の…


…「アヴトリッヒ領、だよ?」


 おねえさま! そうそう、そのアヴトリッヒ領?、という辺境のところまで、引っ越しまでしてくれたのだ。

 かれこれ引っ越してきたのが、一ヶ月まえ。


 なんだけど……しょうじき、多少は楽になったけど、でも、まだまだな状態だ。




 がたん、がたん、がたん、……




 がこっ、




「「「きゃあっ!!!?」」」


「!!ッ ……全くオオイナカも良いところなノネ。

 うちの商会からも大金召し上げて使わせたはずなのに、

 街道路一本、満足に整備も出来てないなんて……ノーネ……

 皆は、だいじょうぶカ?」


「大丈夫ですよ、テュポンさま。

 娘たちのほうは……ノワリアとアリエスタは?」


「僕は大丈夫だよ。お母様。」


「そう、そうしたら……アリエッタ?」




( たいくつだな……)



 手元の魔導ブローチを起動して確かめてみると……その時は正午ごろだった。

 きょうは、その領主さまの主催で、昼すぎからパーティが開かれるということでした。

 なにせ、私のお父様は、このアヴトリッヒの領主様の、そのごようしょうにん? ということで、とってもえらいのだ!


……まあ、わたしは、まだなんにも。

 期待も、高望みも、していません。


 

 どうせ、わたしみたいな、半分だけ人間の……魔族との“間の子”なんかには、なんにも良いことはないんだ。


 この弱くて頼りない体も、

 魔族としての異能も……


 こんなわたしの人生が変わるかも知れない、ステキな出会いなんてのも、当然のこと。



……このときまでは、そうおもっていたのです。




…………




……賑わいが聞こえてくる……

 たどり着いた領都の館の、その玄関。





 ふーん、というのが最初に思ったことでした。




( あれが、がーんずゔぁるさま、……

 人類最高の勇者……



 わたしも半分は魔族だから、

 せんそーをやってた昔だったら、ころされちゃってたのかな?


 まあ、半分だけ。だけど。)




「ガンズヴァルさま、只今参上いたした、ハーレンヴィルのテュポンでありマス、

 こちらが我が細君・リヴェラ、そして上のムスメのノワリアに、下の娘の、アリエスタにございマス。」


「フム! よくぞ、我の末孫の生誕祝いに来てくれた……さあさあ、こちらへ」



 おかーさま、いっちゃ、だめ……



……なにを心配しているのやら、

 大丈夫ですよ?

 ガーンズヴァルさまは、私みたいな魔族の血のモノにも、すごく快い方なのですよ。……

 

 

 でも……



「マアマア、アリエッタも……「エッタって、よばない! っ、ぁ、けほん、けほっ……」……アアア、

 いやはや、下のムスメは、なんだか最近、年の頃のイヤイヤ期? という奴デシテ……」

 

「フム……」



 お父様もお母様も、エッタ、えった、って、わたしのことを呼んできます。

 正直、わたしのことをひとりの淑女レディーとして見ているのではなく、子供扱いされている、ということでしょう。

 それはそれで、可愛がられてるのかなあ?

 でも、その点、ノワリアお姉さまは違います。

 私のこと、ちゃぁんと、アリエスタ、って呼んでくれるもの!



……ねえ、おねえさま、わたしはどうしたらいい?



「フム、まあ僕は、さっそく林檎酒を一杯やりたいところかな?

 領主さまのパーティということだから、美味しいのがあるはずだろうから。

 アリエスタは、そうしたら……」



 そんな時のことでした。



( あれは? )



 がーんずゔぁるさまの後ろに、

 とってもかわいい!……おんなのこみたいにかわいい……おとこのこ?がいる。



 もじもじしながら、ガーンズヴァルさまの腰の後ろで、影に隠れているみたいに。



 わたしよりも、ちょっと年がちいさいのかしら?



(ひらめいたっ)

 


 ふふんっ♪

 年長さんらしいところを、みせてあげなくちゃ!

 



「ねえっ、貴方。」



「ぇぅ? キミは……だれ?」



「はじめまして、ですっ。

 アリエスタと申しますわ!

 早速ですが、一緒に遊びましょうっ!」 



「ふぇっ!?」



……おお、我の可愛いルーやに、あそびの誘いをしてくれるとは!

 アリエスタ嬢とやら、祖父である我からも、ぜひとも御願いさせてもらいたい。

 頼めるかな? 小さな淑女さん。



「はじめまして、ガーンズヴァルさま!

 ぜひとも承ります。

 ありがとうございますわ!」



 ガーンズヴァルさまは、お母様の言っていたとおり、さすがの方でした。

 その快諾を得た私は、ルーテフィアさまに己の正面を向き合わせて……



「おじいさま、ボ、ボク……」



……不安を恐れるものではないぞ、ルーや……ルーやも、永く同じ齢ごろの友人を作れてこなかっただろう。

 そのことは我に責任がある。

 だから、たまの機会だ。いってきなさい。ルーや……



「う、うん……わかったよっ、お祖父様っ。

 うんっ、いいよっ「じゃあ、さっそく!」うわあっ?!」



 うふふっ、いってきますわ、お父様、お母様っ、おねえさまっ!



「 ムスメよ! あまり元気をだしたら!」



……いっちゃったノーネ……


 

「いいと思うよ? お父様。

 妹がすっごく元気で、僕もうれしくなっちゃうな。」


「……たしかに。

 ムスメがあんなに元気なのは、初めてみたかもしれないノネ……」





****


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