幕間過去話:アリエスタの追憶(1/4)
お久しぶりです、アリエスタ視点での過去回想話ですが、なんとかこの章を書くことができあました…
全4話組です。本日から日刊として一話ずつ投稿していきます。
どうぞごゆるりと…
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しとしとしと、しとしとしと……
烟るような霧雨に行き先を遮られて……
まだ水泥になりきっていない土の道の上。
ぱらつく小雨の中を、一台の馬車が進んでいる……
しろしとしと、……、………………。。。。
「 雨があがりましたわね? おとうさま……けほ、けほっ!」
こほんっ、こほんっ、…
「ダイジョウブか? ムスメよ……」
その時、わたしは五つの頃。
テュポンお父様は、いつだって良く接してくれる、私の自慢のパパだ。
「帝都の大気汚染が原因じゃないのかと目星をつけてみたのだけど、
半分あたりで半分は違うみたいネ。
ムスメたちの具合はたしかに軽くはなったけど、
住む場所を変えただけじゃ、そうかんたんには治らないみたいネ……」
お父様は、体がよわいわたしたち姉妹のために、
華やかな帝都から、このけっこう離れた田舎の…
…「アヴトリッヒ領、だよ?」
おねえさま! そうそう、そのアヴトリッヒ領?、という辺境のところまで、引っ越しまでしてくれたのだ。
かれこれ引っ越してきたのが、一ヶ月まえ。
なんだけど……しょうじき、多少は楽になったけど、でも、まだまだな状態だ。
がたん、がたん、がたん、……
がこっ、
「「「きゃあっ!!!?」」」
「!!ッ ……全くオオイナカも良いところなノネ。
うちの商会からも大金召し上げて使わせたはずなのに、
街道路一本、満足に整備も出来てないなんて……ノーネ……
皆は、だいじょうぶカ?」
「大丈夫ですよ、テュポンさま。
娘たちのほうは……ノワリアとアリエスタは?」
「僕は大丈夫だよ。お母様。」
「そう、そうしたら……アリエッタ?」
( たいくつだな……)
手元の魔導ブローチを起動して確かめてみると……その時は正午ごろだった。
きょうは、その領主さまの主催で、昼すぎからパーティが開かれるということでした。
なにせ、私のお父様は、このアヴトリッヒの領主様の、そのごようしょうにん? ということで、とってもえらいのだ!
……まあ、わたしは、まだなんにも。
期待も、高望みも、していません。
どうせ、わたしみたいな、半分だけ人間の……魔族との“間の子”なんかには、なんにも良いことはないんだ。
この弱くて頼りない体も、
魔族としての異能も……
こんなわたしの人生が変わるかも知れない、ステキな出会いなんてのも、当然のこと。
……このときまでは、そうおもっていたのです。
…………
……賑わいが聞こえてくる……
たどり着いた領都の館の、その玄関。
ふーん、というのが最初に思ったことでした。
( あれが、がーんずゔぁるさま、……
人類最高の勇者……
わたしも半分は魔族だから、
せんそーをやってた昔だったら、ころされちゃってたのかな?
まあ、半分だけ。だけど。)
「ガンズヴァルさま、只今参上いたした、ハーレンヴィルのテュポンでありマス、
こちらが我が細君・リヴェラ、そして上のムスメのノワリアに、下の娘の、アリエスタにございマス。」
「フム! よくぞ、我の末孫の生誕祝いに来てくれた……さあさあ、こちらへ」
おかーさま、いっちゃ、だめ……
……なにを心配しているのやら、
大丈夫ですよ?
ガーンズヴァルさまは、私みたいな魔族の血のモノにも、すごく快い方なのですよ。……
でも……
「マアマア、アリエッタも……「エッタって、よばない! っ、ぁ、けほん、けほっ……」……アアア、
いやはや、下のムスメは、なんだか最近、年の頃のイヤイヤ期? という奴デシテ……」
「フム……」
お父様もお母様も、エッタ、えった、って、わたしのことを呼んできます。
正直、わたしのことをひとりの淑女として見ているのではなく、子供扱いされている、ということでしょう。
それはそれで、可愛がられてるのかなあ?
でも、その点、ノワリアお姉さまは違います。
私のこと、ちゃぁんと、アリエスタ、って呼んでくれるもの!
……ねえ、おねえさま、わたしはどうしたらいい?
「フム、まあ僕は、さっそく林檎酒を一杯やりたいところかな?
領主さまのパーティということだから、美味しいのがあるはずだろうから。
アリエスタは、そうしたら……」
そんな時のことでした。
( あれは? )
がーんずゔぁるさまの後ろに、
とってもかわいい!……おんなのこみたいにかわいい……おとこのこ?がいる。
もじもじしながら、ガーンズヴァルさまの腰の後ろで、影に隠れているみたいに。
わたしよりも、ちょっと年がちいさいのかしら?
(ひらめいたっ)
ふふんっ♪
年長さんらしいところを、みせてあげなくちゃ!
「ねえっ、貴方。」
「ぇぅ? キミは……だれ?」
「はじめまして、ですっ。
アリエスタと申しますわ!
早速ですが、一緒に遊びましょうっ!」
「ふぇっ!?」
……おお、我の可愛いルーやに、あそびの誘いをしてくれるとは!
アリエスタ嬢とやら、祖父である我からも、ぜひとも御願いさせてもらいたい。
頼めるかな? 小さな淑女さん。
「はじめまして、ガーンズヴァルさま!
ぜひとも承ります。
ありがとうございますわ!」
ガーンズヴァルさまは、お母様の言っていたとおり、さすがの方でした。
その快諾を得た私は、ルーテフィアさまに己の正面を向き合わせて……
「おじいさま、ボ、ボク……」
……不安を恐れるものではないぞ、ルーや……ルーやも、永く同じ齢ごろの友人を作れてこなかっただろう。
そのことは我に責任がある。
だから、たまの機会だ。いってきなさい。ルーや……
「う、うん……わかったよっ、お祖父様っ。
うんっ、いいよっ「じゃあ、さっそく!」うわあっ?!」
うふふっ、いってきますわ、お父様、お母様っ、おねえさまっ!
「 ムスメよ! あまり元気をだしたら!」
……いっちゃったノーネ……
「いいと思うよ? お父様。
妹がすっごく元気で、僕もうれしくなっちゃうな。」
「……たしかに。
ムスメがあんなに元気なのは、初めてみたかもしれないノネ……」
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