鏡の地平 (6/9)
……時間は多少巻き戻って、
「オイ、コンパスはこれで合ってるのか?」
「見せてみろ、……ああ、方位盤には問題がないはずだ……が……」
「待ってみろ、ワタシの魔導のセンスで、追跡をしてみる。……、、、。。、、」
森林の中を、隊の僚機たちとともに、捜索していた。
そのシミターの内、
後席のリレンスは、コクピットの装甲殻ハッチを多少だけ、開けて…
大気中の魔力の流れ、“脈”を、簡易にであるが、丁寧に診て見た。
……「……、。」……
「こっち、かもしれん。」「わかった、」
“オイ、302-5,お前たちは隊列から離れて……”
「小隊長、自分たちはこっちの経路で見てみます。見つけられなかったら、すぐに合流しますので、」
“……マーァッタク! わかったよ、リレンス。”
“ナヴァル少尉どのはあの娘におネツなんですってね?”
“はっはー、これなら、ワタシのベットした掛け金はもっと上がりそうだ……”
“これじゃあ、リレンス少尉も気が気じゃありませんな!”
「るせーっ!! 帰ったらテメエラ、覚えてやがれよ!?」「あはは……」
“覚えておきますよ、「フィアンセ」どのぉ?”
“こいつぁ傑作だ! アッハッハ……”
“ハネムーンの日が今から楽しみだぁっ…”
………、、、。。。
「散々な言われようだな? ナヴァル?」
「リレンス、あいつらを、いま、いますぐ成敗する方法って、なんかないか……?」
「ないだろうな、」
「……そうか、」
「慌てなさんなよ。みんな、緊張しているのさっ、」
「……、、、。、、、 オレたちも初めての実戦、ってことか…」
……小隊の隊列から離れていく、リレンスとナヴァルの、シミター。
その機内で、二人は言葉をこぼしあった。
…………この部隊に配置された我々も、シミターを用いた実戦は、そう経験できているわけじゃあない。
ワタシもそうだ。この、ワタシもそうだし、ナヴァル、お前だってそうだろう?
………………ああ、
…………だから、みんな肩に力が入るわけよ。
緊張した時、ジョークか何かで、紛らわせたかったのさ。
そうしてみた時、あの嬢ちゃんらに、なんだかんだで一番近かったのが、お前ってわけさ。
ワタシら〈平民階級〉出身のモノからしてみれば、特にね。
………………リレンス?それはないだろう。……おまえの出身階層は……
一応オレも、知っているぞ。
…………なるほど、馴染めなかったのはワタシの方かな?
………………待った! あんたと、めんどくさい話がしたいわけじゃあない、
つまるところ、……なんだ? 上司と上官、というものがあるとするなら、だな……
…………軍役をともにする、同窓の、戦友。
………………まあ、そんな言い回しに、させてくれ。……
「……そうか。」
「ああ、……」
「……そうかそうか、
……嬉しいこと言ってくれるじゃないのー!」
「なんだよ?!」
吹き出したように笑い出した……心から、ほんとうに嬉しい様に……リレンスに、
ナヴァルは再度、困惑の声を上げた。
「まあその、なんだ、今、ワタシらがやっているのは……曲がりなりにも、同じ軍に所属する……」
「おなじ、戦友の、」
「そうだ、その……」
「レスキューってわけだな。」
「……ああ、」
今度は、ナヴァルが殊勝げにする番であった。
「任しておけって、伊達にご近所の芝刈り(パトロール任務)ばかりやってきたわけじゃないさ。
…やってやる!」
…… 逃げて、みんな! ……
「おおっと、?! 嬢ちゃんの声か、」「ああ、そうだな……」
悲鳴混じりの混線しきった通信が聞こえた瞬間、二人ははっ、となった。
そして機上聴音機で捜索を行い……
「……見つけたっ。」「ああっ、」
リレンスとナヴァルの表情は、共にモニター上の一点を見据えていた。
……最大望遠の機体視察装置の画像で、その姿たちを捉えることに成功していたのである。
ナヴァルと、ラキア。
二人の時間軸が、再び交わったのは、今、このときのことであった……
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